第18話 異次元ボックス

 次の日からは相変わらず過疎ってる一層のスライムが分裂する時に剥き出しに転がる核を飲み込んでみた。


 最初の一個を飲み込んんだ後は、この階層で一個、二層目で一個、六層目で一個の三度は飲み込んだので今ので四個目か。


 ステータスカードを確認すると、微妙にステータスの数字が動いた気がする。

 これは……もしかしたら倒す場合とコアの摂取をした場合いで、ステータスの上昇にも差があるのか? その辺りは一層のスライムじゃあんまり参考にならないから、五層とかの方が検証しやすいかな? ここの階層でとりあえず、魔核百個を飲み込む検証を済ませてから向かおう。


 そう言えば……

 小便を排泄する際に溶解液は使い分けは出来なかったよ。

 俺が小便をする時は必ず溶解液が出ちゃう。


 でも、俺の場合は排泄自体をダンジョンでしかしないし、ダンジョンオブジェクトは破壊できない様で問題は無い。

 正確には破壊できないのじゃ無くて、破壊しても五分程で修復されるんだよね。

 ドロップとオブジェに明確なルールが存在している様だね。


 ただし、この溶解液の小便は最初に掛けた物質を溶かすと、それに混ざり、溶解の効果は無くなる。

 例えば、川に直接小便したりすると、大した問題は無いって事だね。

 トイレでは便器を溶かしちゃうから無理。


 ちょっと人では扱いにくいかな?

 アフリカの大地で暮らす人とかなら気にしないかもね……


 そんな事を考えながらコアを飲み込み続けた。

 十個目となるコアでは何も起きなかった。

 やっぱり最初の一回だけかな?


 でも百個までは試すって決めたから頑張ろう。

 因みにコアは、いくら飲み込んでも腹が一杯になるとか言う事は無い。

 恐らく倒した時と同じように光の粒子にでも還元されるんだろうけどね。


 そして頑張って飲み込み続けた百個目に当たる九十六個目でスキルは……覚えた。


【異次元ボックスLV1】

 何か凄そうな名前だな。

 アイテムボックスと同じで物を入れれるだけで十分だと思うけど、この名前って事は別なのか?


 取り敢えず俺は、お袋に作って貰ったバッグに入れてるスマホとダガーを入れてみた。

 風魔法覚えたからダガーほとんど使って無いしな。

 でも、DEXの数字は武器を使わないと伸びにくい感じはしてるから、武器戦闘と魔法戦闘はバランスよくやらないと駄目なのかな?


 対象物に触れながらイメージするだけで収納は可能だった。

 現時点では、ただ収納できるだけなのかな?


 十分有用だから良いけどね。

 って事はだ。

 他の魔物達も百個づつコアを飲み込めば、次のスキル覚えれるんだろうな。

 他のスキルがLV1からLV2に上がったのは、ほぼ間違いなく取得してからの戦闘経験か使用回数で上がっていると思うから、これもそのうち上がるだろう。


 増えるのは容量なのか、それとも別の機能なのか興味深いぜ!


 って事で今度は二層のゴブだな。


 ◇◆◇◆ 


「え? 上田二佐それは真実ですか?」

「間違いない。USの攻略班が確認している」


「パーティ機能とか凄いですね。具体的にはどんな感じなのですか?」

「ステータスカードの所持者が、お互いのカードを重ね合わせて、【パーティクリエイト】と念じるそうだ」


「増々ゲームの世界っぽくなってきましたね。そのパーティ機能で共有されるのは? 経験値的な物ですか?」

「そうだな。今までは直接止めを刺さないとステータスカードの数値は変化しなかったが、パーティを組むとパーティ全体の経験値の様に判断されるそうだ。当然人数分の数で割り振られる様だが」


「それでも、役割分担をはっきりしながら、同じように成長できるのは有意義ですね」

「そうだな。問題はステータスカードの所持者が圧倒的に少ない事だが」


「それは、ダンジョン内の活動を積極的に行っていくしか答えは在りませんね」

「そう言えば、大阪ダンジョンで民間探索者がスキルオーブを出したらしいぞ。スキル名は剣術LV1だそうだ」


「それは凄いですね。攻略班にスカウトは出来ないでしょうか?」

「斑鳩二尉が直接声を掛けてみるのはどうだ? ほら、北原三尉が殉職した際に庇った、麻宮咲さんだ」


「あーあの子ですか、何故大阪に?」

「スタンピードの際に学校と住居がダンジョンシティ内に入ってしまって、拠点を移した様だ」


「そうなんですね。早速大阪ダンジョンに顔を出してみます」

「こちらは六層登場までにまだ時間があるから、攻略に力を入れて少しでもスキル獲得者が増える様に頑張るよ」


 ◇◆◇◆ 


 この日も百匹程の魔物を狩ってそろそろ帰ろうとしてた時に、それは現れた。

 明らかに通常百二十㎝程度の身長のゴブリンよりも大きく、百五十㎝程度の身長で剣を持ったゴブリン。


「麗奈、気を付けて。多分ユニークモンスターだよ」

「ユニークって面白いってこと?」


「そう言う意味でユニークが使われるのは日本だけだよ……ユニークは『独特な』とか『類がない』って言う意味だね。って言うか目の前の魔物に集中して」

 

 このユニークモンスターのゴブリンは通常であれば三層程度で狩をする人間であれば、結構な被害が出たはずの魔物であったが、全日本の合宿に参加する程の剣士二人にとっては、そこまでの問題も無く倒された。

 そして倒れたその場に宝箱が現れた。


「咲。これって……」

「多分……ネットで話題になってるスキルかもしれないわね。開けても良い?」


「うん。咲が倒したんだから当然だよ」

「ありがとう」


 そう言いながら、宝箱を開け放つとスキルオーブが現れた。

 触れてみると『【剣術LV1】を取得しました』と声が聞こえた。


「剣術だって。これって私無敵になっちゃう?」

「凄いね。正に咲の為にある様なスキルだよ。私、咲に寄生して生きて行こうかな? きっと世界的に有名な探索者に成りそうだし」


「麗奈だって、この先絶対凄いスキル手に入れる事が出来るよ」

「どうだろうね? それよりあれ見せてよステータスカード」


「あ、ちょっと待ってね。『ステータスオープン』」


STR 25

VIT 15

AGI 20

DEX 20

INT 20

LUK 15


スキル 剣術LV1

MP 25/25

Rank 250/315


「微妙だね……今三百十五人いるって言う事だけは間違いなさそうだけど、後ろから数えたほうが全然早いランキングだし……」

「でも、殆どが各国の軍隊の人達だから、そんな銃撃で倒してる人たちより強いとかありえないし、恐らくそれでも民間ではトップなんじゃ無いの?」


「そうかな? でも銃撃は六層から殆ど効果ないみたいだよ。自衛隊の攻略班もダンジョン鋼の武器の数が揃うまで、攻略は五層までがメインだって言うし」

「ダンジョン鋼の銃弾なんて。一発一万円とかするらしいから、自動小銃なんかで使われたら、税金ヤバい事なりそうだしね」


「ねぇ、剣術レベル一で何が出来るの?」

「ステータスカードの剣術LV1の所を触ると【強撃】って言うのがイメージできるから、それでしょうね。丁度ウルフ出て来てるから使ってみるね」


 何気に振り抜いた剣は。グレーウルフを真っ二つに切り裂き勢い余って地面まで切り裂いた。

 だがそんな攻撃に刀が耐えれずに、ぽっきりと折れてしまう。

「あああ、せっかく修理したばかりなのに……どうしよう」

「これじゃぁ。武器がもたないね……ダンジョン鋼の武器手に入れないとヤバいよ。それか打撃武器で五層でドロップを集めるかだね」


「刀以外で狩りを続けるのは危険だと思うから、ダンジョン鋼の武器買えるまでバイト生活でもしないと駄目かな?」


 とりあえずその日は帰還してD.Aにスキル獲得の報告を上げた。

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