第9話 再び4層へ

「お母さん。お兄ちゃんのパソコン触った?」

「えっ? 私はパソコンなんか触らないわよ使い方知らないし」


「だよねぇ? おかしいな」

「どうしたの?」


「あのね、知らない間に充電用のコードとか出してあったの。私が使おうと思ったんだけどパスワードがかけてあって解らなかったから、そのままにしてたんだけどね」

「おかしいわね? 泥棒さんだったら持って行くでしょうし」


「だよねぇ」


 朝から穂南とお袋が会話してるのを聞いてヤバイと思ってる俺が居た。

 

「でも進が設定するパスワードなら母さん解るわよ」

「え、本当教えて! お兄ちゃんのパソコンまだ新しいし私のより全然いいから、使えるなら使いたいんだよね」


「honami0303だよ、だいぶ前に危険な作戦に従事する事多いから、なんかあった時は俺のパスワード全部それだって言ってたからね」

「えー、私の名前と誕生日なんだ……」


 あーそう言えば俺確かにお袋に教えてたな……

 ヤバイ画像とか見られる前で良かった……


「ずっと穂南の心配ばっかりしてたからねぇ」

「そうなんだ、お兄ちゃん私の事思ってくれてたんだね」


 少ししんみりした雰囲気になったから「ニャア」って言いながら穂南の足にまとわりついて遊んで欲しいオーラを出して誤魔化した。


「TB。もう学校に行く時間だから時間が無いの。帰って来てから遊んであげるからね。あんまりお外に出たらダメだよ? 車とか多いんだから」

「解ってるよ」と返事したけど当然「ニャニャン」としか聞こえないけどな。


穂南がトーストとベーコンエッグの簡単な朝食を取って、学校に行くと朝ご飯の片づけをしていたお袋の所に行って、足元に体をこすりつけてみた。


 お袋は俺を抱っこしてくれて呟いた。

「TB。あんたはなんだか不思議な子だねぇ。穂南を守ってあげてね」


 俺は二十年ぶりくらいでお袋に抱っこされて、なんとなく嬉しかったので穂南のそれより更に立派な胸の谷間に顔をうずめながら、「ニャァン」って鳴いみた。


 さて、咲ちゃんが帰って来るまでは暇だな。

 キャットハウスの中でダンジョンの事でも考えるかと思って、丸まってたらいつの間にか寝込んでしまってた。


 やっぱり体は子猫だから睡眠欲求が強いな!


 目が醒めると午後三時になってたので、俺は咲ちゃんの家に向かって出かけた。

 咲ちゃんのマンションの前にある植え込みに隠れて待っていると、四時前に約束通り咲ちゃんが現れた。

「ニャン」と鳴きながら咲ちゃんの前に姿を現す。

「TBただいま」と言って抱きかかえてくれた。


 そのまま一緒に部屋まで行くと、咲ちゃんが着替えて準備をする間にパソコンを使わせて貰う事にした。

 ダンジョンスレッドを眺めていると、五百日目まであと一週間に迫った事による新たな現象の予想で盛り上がっていた。


 なになに?


 ◇◆◇◆ 


【ステータス】ダンジョンスレ288【見えないの?】


1.この探索者が凄い


このスレは20XX年8月13日この世界に現れたダンジョンについて語り合うスレです。


荒らしお断り


ダンジョン活動で得た情報など積極的にカキコよろしく!

前スレ https://xxxxxxxxxxxxxxxxxx


次スレは自動で立ち上がります。


326.この探索者が凄い

来週6層出ると思うけど、どんなこと起るか予測してみた


5層で毒使う敵出たから、次は他の特殊攻撃使う敵が出ると予想



327.この探索者が凄い

ポーションとか、上のランクのが出そう


328.この探索者が凄い

違う特殊攻撃の敵が出るなら、その特殊攻撃の効果を無効に出来るアイテムが出そう


329.この探索者が凄い

よくあるパターンだと、5層から6層に降りるなら、中ボスとか出て来そうな感じしないか?


330.この探索者が凄い

>>329それありそう


 そして、倒すと宝箱ゲト


331.この探索者が凄い

宝箱欲しいなダンジョン産武器とか


332.この探索者が凄い

>>326 現状でも5層の敵って、自衛隊の攻略班のM4の弾殆ど通用しないって言って無かった? 6層からは、既存武器ほぼ効かないんじゃない?


333.この探索者が凄い

ゾロ目ゲト

きっとついてるからパチンコいて来る


334.この探索者が凄い

>>333 待ち構えて狙ってただけだろ?

マケロ


335.この探索者が凄い

>>332 USダンジョン板で出てたけど、5層のダンジョン産金属で武器開発中らしい


336.この探索者が凄い

>>335 ダンジョン産金属ってミスリル? オリハルコン?


337.この探索者が凄い

 まだ、ダンジョン鋼って言われてる鉄みたいだけど鉄じゃないような金属だけって話だぞ

 夜5層に潜る奴は日本でも結構手に入れてる。

 1ドロップ100gのバーみたいな感じで、現状銀と同じ価格で取引されてるぞ


338.この探索者が凄い

 銀と同じっていくら?


339.この探索者が凄い

 ググレ


340.この探索者が凄い

 >>338 g83円くらいの買取。100gなら8300円台だな

マジレススマソ


341.この探索者が凄い

パラジウムと同じくらいまで上がらないかな?


342.この探索者が凄い

今パラジウムとか金より高いし……



 ◇◆◇◆ 


 それなりに盛り上がってるけど、実際どうなんだろうな。

 5層から自衛隊が居なくなると、一般探索者が増えそうだけど、今の一般探索者って、5層で銃も無しで戦えてるのか?


 咲ちゃんの準備が出来たようで、声を掛けて来た。


「TBそろそろ行くよ」

「ニャン」


 咲ちゃんのリュックの中に入って、代々木公園に向かった。

 到着すると咲ちゃんが入ダン手続きを済ませて、ダンジョン内に入る。

 そこで、俺はリュックから出て、咲ちゃんは刀のカバーを折りたたんで、リュックの中に仕舞う。


 リュックの中は他にはスマホと水筒と財布しか入って無い。


「TB、少しだけ四層行って見ようか? 草むらの少しひらけた場所があれば、TBが釣って来てくれるなら何とかなると思うし」

 咲ちゃんが提案してくれたので、俺は頷いた。


 魔物を順調に倒しながら四層に到着すると、丁度自衛隊の『地下特殊構造体攻略班』が今日の任務を終えて、出て来るところだった。


 常に六人一班で四班二十四人が探索する形だが、攻略班自体は六班あるので、基本は二勤一休の体制だ。

 九時から五時までしか探索はしないし、意外にホワイトな環境だ。

 でも、命かけてるけどね……


 自衛隊としては今までの半年少しの活動期間で、俺以外にも三人程二階級特進をしているから、他の任務に比べれば全然危険なのは事実だ。


 すれ違いざまに、斑鳩彩二尉の姿を見かけた。

 ちょっと懐かしいと思ったけど、姿を見られても困るから、草むらに隠れてた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る