第8話 咲ちゃんにバレちゃった
グレーウルフが現れた。
俺は脳内シュミレーション通りに近づき素早く背中に飛びつく。
そこで溶解液を尾の付け根に向けてかけた。
素早く離れて距離を取る。
グレーウルフは俺を捉えようと駆け出して来たが、溶解液がコアを溶かしてくれたようで俺まで辿り着く事なく倒れ、光の粒子になって消えて行った。
やった! 作戦成功だ。
この調子で倒して行けばウルフは何とかなりそうだな。
でもこの方法だとコアを残さないからアルミラージやポイズンマウスは別の方法で倒さないとスキル獲得できないんだよね。
武器が使えればいいんだけど、口に咥えて使うような武器かぁ……
誰か協力者でも居なくちゃ、俺が武器を手に入れるのは難しいよな。
そうなると、やっぱり咲ちゃんかな?
それとも穂南にカミングアウトするか?
どちらにしても、まだ今は止めておいた方が良さそうだな。
スキルの獲得方法とか世に出すと、なんか駄目な気がするし。
でも少しは俺の身体能力は上がってるんだし、この小さな爪でも目とかの急所を付けば何とかなるかも知れないよな。
よし、四層に行って見るか。
俺は四層に降りて行くとアルミラージを探した。
三層と四層は基本草原ステージだから俺の小さな体は他の探索者からはほぼ視認される事は無いと思う。
居た。
アルミラージだ。
あいつの角が厄介なんだよねぇ。
遠距離で攻撃する手段が無いと、倒せるビジョンが見えないよ。
きっと、咲ちゃんもそれを警戒して三層までにしてるんだろうね。
俺の敏捷性で結構高いジャンプは出来るけど、向こうはウサギだからジャンプで比べたら勝負にならないしなぁ。
待てよ……
誰もコアでスキル獲得できる事なんて知らないんだし……
この階層ではドロップが出ない事も解ってるんだから。
人が倒したアルミラージのコアを、素早く奪う方が良いかもしれないな。
そう思った俺は、四層で狩をしている人たちの気配を探り、様子を見る事にした。
自衛隊以外の人達の狩りは咲ちゃんみたいな刀で狩をする人はほぼ居なくて、弓、槍、スコップが人気武器だな。
スコップは手ごろな値段で手に入るし確かに便利は良いよね。
でもアルミラージのコアってどの辺りにあるんだろ?
倒してから十秒程度しか取り出せる時間が無いから、露出してない限りは自力で取り出すのは難しいなぁ。
結局、俺は無駄に姿をさらす危険を冒すのも嫌だったので、今日は諦める事にした。
帰ってパソコンでデータを調べればコアの位置くらいなら情報が出ているはずだしね。
三層に上ると昨日と同じ見通しのいい場所で咲ちゃんが一人で狩をしているのを見つけた。
咲ちゃんの周りに誰も居ない事を確認した俺は近くまで寄って「ニャァ」って鳴いた。
「あ、チビちゃん。また一人で来てたんだぁ。君の事がネットで話題になってたらしくて、いろんな人から聞かれて大変だったよー」と言われた。
なんだか……俺が言葉を理解出来る事が前程みたいな語り掛けだな……
俺は「ミャ?」とだけ返事して誤魔化しておいた。
「そろそろ帰るとこだったけど、またこの中入る?」ってリュックを指さしたから、コクンと頷いて足元に近づいた。
「君、やっぱり言葉理解してるよね」ってジト目で見られた。
墓穴だった……
「まぁ良いわ取り敢えずこの中に入りなさい」
俺はリュックの中に入って咲ちゃんの家に連れて行かれた。
咲ちゃんの家につくとリュックから出された俺は、また下着散らかって無いかな? と思ってキョロキョロしたけど今日は既に洗濯機の中に入れられていたようだった。
残念……
「ちょっとシャワー浴びて来るから待っててね」と言って咲ちゃんは俺の目の前で裸になって風呂場に行った。
ワンルームマンションだから脱衣場なんて無いし、結局今脱いだ下着は部屋の中に置きっぱなしだった。
俺は咲ちゃんがシャワーを浴びている間中下着と戯れてたぜ!
幸せだ!
シャワーから上がった咲ちゃんが身体を拭いてる所を、じっくりと堪能させて貰った。
三年連続剣道日本一の咲ちゃんの身体は、鍛え上げられている感じがして凄く綺麗だった。
部屋着のスエット姿になると、おもむろに俺に聞いて来た。
「ねぇ? もう一度聞くけどさ、君って絶対言葉理解してるよね?」
俺は、これどうせバレちゃうな……と思ったから頷いた。
「君と話す方法はあるの?」
そう聞かれた俺は咲ちゃんの部屋の机に置かれたパソコンを見つけ、肉球でポンポンと叩いた。
咲ちゃんが電源を入れてパソコンが立ち上がると、俺はテキストエディタのアイコンを手で指し示した。
「なる程ねぇ。って言うかさ。君文字も理解できるの?」と言いながらテキストエディタを開いてくれた。
キーボードを肉球で押さえ『うん。読めるよ』って打ちこんだ。
「ええええええええええっ!!! 自分で疑って置いて今更だけど、超凄くない?」
『他の人には内緒でお願い』と打つと「そうだねぇ、絶対捕まって色々な実験とかされそうだよね。ちょっと色々聞かせてよ。君の名前は」
『TB』
「へーどこかで飼われてるのかな?」
『うん』
「帰らなくていいの?」
『あんまり遅くなったら心配されるから適当な時間に帰るよ』
「そっかぁ……私と一緒に暮らしてくれてもいいんだよ?」
『それは……今はまだ家の事が心配だから』
「解ったよ。無理は言わない。でもダンジョンで何してたの?」
『強くなりたい』
「なんで?」
『理由は無いけど今は誰よりも強くなりたい』
「そっか。私も似たようなもんだよ。剣の道を究めたいと思ってるから」
『咲ちゃんは、きっと出来るよ』
「えっ? 名前言ったっけ?」
『聞いたはず……』
「えー怪しいよ? 言ってないよ絶対。表札もかけて無いし」
『咲ちゃん有名人だから知ってた』
「ふーん。まぁいっか」
『ダンジョン明日も連れて行って欲しい』
「それはいいよ。三層でいいの?」
『出来れば四層。咲ちゃんってアルミラージのコア何処にあるか知ってる?』
「心臓の所にあるよ。四層はアルミラージの突進が危険だからあんまり行きたくないかな」
『そっか。解った。ねぇお願いしてもいいかな?』
「何?」
『あのね、おいらが口に咥えて使えるような武器が欲しいの』
「ふーん、君小さいけど大丈夫なの?」
『何とかなると思う』
「そっか、武器はすぐには無理だけど、なんか考えて用意するね」
『ありがとう。じゃぁ今日はそろそろ帰るね。明日は何時から行くの?』
「いつも学校終ってから行ってるから、明日は四時頃にここに帰って来て、それからだね」
『じゃぁ四時くらいにここに来てるね』
「了解」
家に帰ると穂南に「こんな時間までどこ行ってたの? 心配したじゃない」って怒られた。
「ゴメンね」って言ったが「ニャアン」としか聞こえなかったよ。
その日は穂南のベッドで一緒に寝た。
けしからん程に大きな胸に挟まれて、ちょっと幸せだった。
良い夢見れそうだ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます