第19話 悪人たちの会談
田中がウィリアムの下に通うようになってから一週間が経過した。
千司は引き続きリニュとの戦闘訓練を行いつつ、下級勇者に詰まらない訓練を押し付けストレスを与えていた。
以前と違う点があるとすれば、これまで戦闘訓練をしていたのが千司、猫屋敷、二階堂、斎藤の四人だけだったのに対し、昨日から辻本と村雨の二人を加えたこと。
理由は単純で、二人が実力を伸ばしてきたからである。
成長したものには『上』に行く資格を与え、やる気を引き出すため——などではなく、王宮に残された下級勇者の中にも『上』と『下』が存在すると無意識に刷り込むためである。
成長したものに期待と好待遇を与え、それ以外の者との間に軋轢を生じさせる。
加えて、辻本と村雨をスケープゴートとし、千司は不満を抱く下級勇者の相談役に回ることで、悪意を生み出しつつ自身の信用を勝ち取るという両立を成功させていた。
「……ひゃんっ!」
太陽が照り付ける日中訓練の最中にそんなことを考えていると、不意に可愛らしい悲鳴が聞こえて来た。
誰だと視線を向けると、リニュの攻撃を受け尻餅を着いた猫屋敷の姿が。
彼女は自らの口から飛び出た声を恥じるように口元を手で押さえる。
「大丈夫でござるか、猫屋敷殿」
そんな彼女にいち早く駆け寄ったのは、以前より元気を取り戻した辻本である。
「うん、ありがと。……今の聞いた?」
「もちろん。大変可愛らしいお声でしたな!」
「……っ、わ、忘れて! それとそこのニヤ付いてるハーレムくそ野郎も今すぐ記憶から消して! てかニヤつくな!」
「俺のことは気にしないでください」
適当に青春が加速するように煽りつつ、千司は踵を返し——休憩中にもかかわらず身体を動かしている斎藤に声を掛けた。
「暇なら模擬戦でもしないか?」
「ん、いいよー。今日は素手の気分だからそれでいい?」
「もちろん構わない」
「あとは審判だけど……凛、やってー」
「なんで私が……汗を拭きたいのだけど」
「いいじゃんいいじゃーん」
ヘラヘラと笑いながら二階堂に抱き着く斎藤。
「もう、わかった、わかったから! 汗でべたべたしてるのにくっつかないで!」
わちゃわちゃする二人を横目に、千司はレーナが教える勇者たちに視線をやった。
そこには数名の勇者の姿。
つまらない素振りよりはましと判断したのか、魔法に適正を持つ勇者はこぞって彼女から魔法を教わるようになっていた。
増えた生徒に疲れ半分、嬉しさ半分で教えるレーナ。
その中でも顕著な成長を見せているのは文香と松原の二人。
文香は回復魔法の成功率がかなり高くなっているし、松原も多種多様な魔法をそつなく使いこなしていた。
(まぁ、二人とも上級勇者だし、当然と言えば当然か)
他にもせつなもかなり魔法を使えるようになっていた。
他の勇者たちよりは発生も早く、威力も高そうに見える。
それだけ真剣にレーナから教わっているという証拠だろう。
(レーナが来たのは正直想定外だったが、うまく作用しているようで何より。特に文香の回復魔法を育ててくれるのはありがたいことこの上ないな)
などと考えていると「そろそろいくよー」と斎藤から声がかかり、拳が飛んで来た。
現状勇者内で一番レベルの高い千司であるが、それでもステータスだけ見れば上級勇者の斎藤の方がまだわずかに上。
しかし千司は気後れすることなく、胸を借りる覚悟で正面から迎え撃つのだった。
§
その日の夜、千司は再度王都にやって来ていた。
ドミトリーの姿に『偽装』し、向かった先は何度か来たことのある高級宿。
宿の前に見覚えのある人間がそれとなく佇んでいるのを確認してから、受付を抜けてスイートルームへ。
部屋の前にも男がおり、彼は千司の姿を確認すると小さく会釈してから部屋をノック。
「どうぞ」
返ってきた渋い声に導かれて入室すると、そこには白髪をオールバックになでつけた初老の男がゆったりとソファーに腰掛けていた。
「お久しぶりですね、エルドリッチ大尉」
「ははは、少しばかり待ちくたびれましたよ。ドミトリー殿」
室内には魔族にして千司のお友達候補であるジョン・エルドリッチと、彼の部下が数名。全員姿勢を正し、まるでロボットの様な統一感を見せる中、ただ一人——彼の正面のソファーに座っていた少女が飛び起きた。
「ドミトリー!」
「アリアも、久し振りだな」
白と紫の入り混じった髪を揺らし、ギザギザの歯を見せ笑う彼女はアリア・スタンフィールド。血染めのアリアの異名で知られる殺人鬼にして、殺すこと自体に性的興奮を覚えあへあへしている頭のおかしい変態である。
抱き着いて来るアリアを適当にいなしていると、エルドリッチが「どうぞおかけください」と対面のソファーを示したのでゆったりと腰掛ける。
「何か飲みますか?」
「では珈琲を。アリアは?」
「紅茶」
「……わかりました、珈琲二つと紅茶を持って来なさい」
アリアをちらりと睥睨してから部下に指示を飛ばすエルドリッチ。
千司は待っている時間を潰すように他愛もない話を切り出した。
「まずは、無事作戦が成功したようでなによりです」
「あそこまで周到に準備を成されていたのですから当然です。失敗しようものなら面目が立たない所の話ではありません」
「簒奪したモノに関しては今どこに?」
「こちらで——いえ、私が保管しておりますのでご安心を」
分かりきっていることを改めて確かめるように言葉を交わしていると、やがて飲み物が運ばれてきて机に並べられる。並べ終わるのを待ってからエルドリッチはカップを手にし、一口嚥下。音もなくソーサーに置くと大きく息を吐いた。
「今から内々の話を始めるので、全員下がりなさい」
穏やかな口調。
しかしそこに含められた確かな命令。
彼の部下たちは何かを口にすることも無く静かに部屋を後にした。
残されたのはドミトリーに『偽装』した千司とエルドリッチ、そしてアリアの三人である。
エルドリッチはアリアに視線を向けてから、千司に問うた。
「彼女は同席させる、ということでよろしいのですね」
「えぇ、そのつもりですが……アリア」
「なに?」
「今からする話を聞けばもう戻れなくなるが……どうする?」
千司の質問に、アリアは欠片も迷うことなく気色の笑みを浮かべて答えた。
「いひ、いひひひっ♡ ドミトリーに着いて行けば、もっと、もっともっといっぱい殺せるんでしょ?」
「もちろんだ。俺たちの通った道には屍しかない」
「……っ! なら、断る理由なんかない! ……それに、どうせ話を聞かないって言っても、戻すつもりなんかないんでしょ?」
興奮しつつもどこか冷静に尋ねるアリアに、千司とエルドリッチは全く同じ醜悪な笑みを浮かべて返した。
まさにその通り。
仮に断ろうものなら今この瞬間にでもアリアを殺害するつもりだった。
彼女の力は
(やっぱり、仮にも魔法学園に通って騎士になっただけあるか。頭は悪くない。まぁ、断る可能性は万に一つもないと思っていたが)
「それでは、彼女の意思もはっきりしたところで話し合いを始めましょうか。……まずは、ご挨拶から始めるのが定石でしょうかね」
そう言ってエルドリッチはアリアと千司を睥睨した後、小さく息を吐いて——次の瞬間、その姿を変化させていく。
人が他であることは変わりないが、その額からは二本の角が生え、白目のところが黒く、黒めのところが黄金に輝く。口の間からは鋭い牙が生え揃い、鋭く伸びた爪は人の身体など容易く切り裂くだろう。
「初めまして、は少しおかしいですかね。私は魔王軍幹部が一人、ジョン・エルドリッチ改めウィーザと申します。名前を覚える必要はありませんし、外に居る彼らに聞かれても面倒なので、どうぞ今後ともエルドリッチとお呼びください」
不敵な笑みを浮かべるエルドリッチに対し、最初に反応したのはアリアだった。
「……へぇ、そういうことだったんだ」
得心したように頷くアリアに、エルドリッチは目を細めて告げる。
「そうも驚きが少ないと、こちらが落ち着きませんね」
「何かあるとは思ってたから。まさか魔族とは思わなかったけど……じゃあジョン・エルドリッチは最初から存在しないの?」
「いえ、殺して入れ替わらせていただきました」
その言葉にアリアは口元を三日月型に歪める。
「いひひっ、面白そうなことしてるね」
「まぁ、大変な部分もありますが」
楽しそうなアリアと、くつくつと喉を鳴らすエルドリッチを見て『二人とも頭おかしいだなぁ』と自分を棚に上げてコーヒーを啜る千司。
「でもそっか、魔族だからドミトリーに手を貸してたわけだ」
「おや、その口ぶりからするに彼が『裏切り者』であることは知っていたのですか?」
その問いに答えたのは千司。
「エルドリッチ殿が裏切ったダンジョン遠征の作戦の際に必要だったもので」
「ははは、これはまた痛いところを突かれましたね。……さて、私は明かしました。次は、貴方の番ですよ」
目を細め、低い声で告げるエルドリッチに、千司は「分かってる」と答え、自らに掛けた『偽装』を解除。ドミトリーの姿を取り払い、奈倉千司としての素顔を二人に晒した。
と言っても、エルドリッチには魔法学園が襲撃された際に明かしているのだが。
「やはり、貴方で間違いありませんでしたか」
「えぇ、改めまして奈倉千司と申します。以後、お見知りおきを」
「こちらこそ」
鋭い爪が煌めく凶器の様な右手を、千司は躊躇なく取る。それこそが友好の証、目的を同じくする同盟者の誠意であると伝えるために。
魔族と『裏切り者』が狂気に顔を歪めて、固い握手を交わすのだった。
「……」
ふと、アリアがじろじろと見つめて来ることに気付いた。
(そう言えば、アリアに素顔を晒すのは初めてだな)
彼女は千司の顔を見つめ、鼻先がぶつかりそうなほどに顔を寄せると、にまにまと口を歪めてギザギザの歯をのぞかせていた。
「どうした?」
「ん? やーっと顔を見せてくれたなぁって」
「あー、遅くなって悪い」
「いいよ、でも……へぇ、ドミトリーってこんな顔だったんだぁ~。アリア的には結構好きだよ♡」
好き——とは果たしてどちらの意味なのか。
じっとりとした視線を受け、千司は努めて淡々と答える。
「殺さないでくれよ」
「殺さないよ。ドミトリーは殺さない。だって、アリアの運命の人だから」
「そうか」
身を寄せ、肩に頭を乗せて来るアリアを警戒しつつも、千司は珈琲を飲む。
「そろそろよろしいでしょうか?」
「えぇ、お待たせしました」
咳払いで注意を集めたエルドリッチ。
話し合いが再開された。
§
魔族の姿をさらしたエルドリッチの対面、アリアの横に腰掛ける千司はテーブルの珈琲で唇を濡らしてから口を開いた。
「ではまず、現状の把握から始めましょうか」
「そうですね。特に貴方は異邦人。知りたいことも多いでしょう」
「答えて頂けるのですか?」
「答えられる質問に関しては。その程度の信用はございますのでご安心を」
それはつまり、
加えて、『シルフィの右腕』と『フレデリカの鉤爪』の簒奪である。
(これでまだ足りないのか)
千司は顎に手を当て、思考を巡らし——最初に子の関係の『前提』について尋ねた。
「ではまず初めに……我々の目的とするところは同じと考えて構わないのでしょうか?」
「『裏切り者』の目的が全ての勇者の殺害、ということなのであれば、同じと考えて頂いて構いません。少し違うのは、我々魔族の目的が勇者の殺害ではなく、あくまでも人類種を征服することだということです」
「なるほど」
要は、勇者殺害はあくまでも過程であり、ゴールが違うということ。
「では次の質問です。何故、魔族側は勇者が育ちきるまで待っているのでしょうか?」
「何故、と申しますと?」
「貴方や他の魔族、そして『魔王』と呼ばれる絶対的強者の力があれば、勇者が成熟しきる前に勝負をつけてしまったほうがいいのではないか、ということです」
それはずっと思っていたこと。
何故、エルドリッチ達は勇者に直接手を下さないのか。
(想像はつくが……想像通りだと面倒なんだよなぁ)
内心ため息を吐く千司に対し、エルドリッチは答える。
「単純な話。難しいからです。確かに白金級勇者ひとりに対し、私や魔王様、そして他の優秀な兵をかき集めれば葬り去ることは可能でしょう。しかし、そんな状況まず作れません」
「……」
「ここは敵地。そして勇者だけでなくその護衛に出て来るであろうライザ・アシュートなど気をつけねばならぬ相手も多い。それを回避しつつ、白金級勇者を殺すとなればそれ相応の犠牲を覚悟しなければなりません。そして、それだけ戦力を集中してしまえば……今度は魔王軍本体が瓦解してしまいます」
その言葉を受け、千司はまだ異世界に来たばかりの頃、ライザから聞いた魔王との『戦争』について思い出す。
現在、人類は魔王率いる魔王軍と戦争の真っ最中であり、アシュート王国と帝国の国教線をずっと北に進んだところで激しい戦闘が繰り広げられているとのこと。
アシュート王国からもいくつかの騎士団と、現国王、第一王子が派遣されており、ライザはあくまでも代理として国営をしているのだとか。
(王様突撃させるとか馬鹿かと思っていたが、今思えばライザが優秀だったからこそ、替えの利く王様と王子を戦地の指揮に向かわせたってところか)
閑話休題。
兎にも角にも、そんな戦地から優秀な者を集め、トップである魔王までも引き抜き勇者討伐に赴けばフロントラインが崩壊する、というのがエルドリッチの言いたい事だ。
(……おおよそ想像通りだが、正面切って叩き潰すのは難しいか)
「そう簡単にはいきませんね」
「えぇ、そもそも勇者とは魔王様を滅ぼすために召還された存在。——
そう言って千司を見つめるエルドリッチ。
すがるような視線。
期待するような言葉。
煽てて、動かしやすくするための——誘導。
(ライザより分かりやすいなぁ~)
「それはそれは、何とも責任重大な話ですね」
「もちろん我々と手すべてあなたに頼り切るつもりはありませんよ。うまく溶け込んでいる貴方の現状を踏まえ、お手伝いは欠かしません」
「でしたらさっそく今後のお話をしましょうか」
本題を切り出した千司に、エルドリッチは前のめりになって聞く姿勢をとる。
「その様子では、何かしら策があるようですね」
「えぇ、エルドリッチ殿にお願いしたいことはただ一つ。王国貴族が所有する『ロベルタの遺産』を引き続き回収していただきたいのです。もちろん、場所が分かっている物のみにはなりますが」
『シルフィの右腕』がそうであったように、ライザは大図書館に全ての情報を残しているわけでは無い。
しかし中には正しい物もある。
ヘーゲルン辺境伯が『フレデリカの鉤爪』を所有していたのが証拠だ。
「それは、王国の戦力を削ぐということでしょうか?」
(馬鹿か。戦争に持ち出してない時点で、戦力じゃねえよ)
「えぇ、半分はそうですね。もう半分に関しては……集まらないことには意味をなさないので、この場で教えるのはやめておきましょう。知る人が増える程、成功率は下がりますので」
嘯く千司に、エルドリッチは顎に手を当て首肯。
「分かりました。私どもとしても『ロベルタの遺産』収集は第一目標でしたので、今は聞かずに動きましょう。これは私から貴方への信頼の証と受け取っていただいて構いませんよ」
「感謝します」
「収集したものはこちらで保管しておけばよろしいですか?」
「いえ、出来れば『ラクシャーナ・ファミリー』として動き、烈婦ランドの屋敷で保管してください。ラクシャーナを抱き込めば色々とやりやすいでしょう?」
「……確かに」
意味ありげにうなずくエルドリッチ。
鋭い視線で千司を見つめ、その真意を読み取ろうとしているが『偽装』で心を偽っている千司にそれは不可能。しかしエルドリッチは『わかっている』と言わんばかりの演技で、珈琲を飲む。
(……この辺りの腹芸は、やはりライザの方が上か)
エルドリッチに関しても超一流であり、『偽装』が無ければ面白いように情報を搾り取られていたであろうが、それでもライザには遠く及ばないというのが千司の評価だった。
そう見せかけている可能性もないではないが、ライザの場合は何も読み取れないのでやはり彼女に軍配が上がるだろう。
「わかりました、ここは奈倉殿の判断に従いましょう。貸しですよ」
「えぇ、分かっていますとも」
返すつもりのない貸しを優しい笑みで受け取り、今後の動きと狙うべき『ロベルタの遺産』所有貴族に関して話を詰める。基本的には王都から離れた所で火種を起こし、少しでもライザの視線を外に逸らしたいところ。
「そう言えば、あのロベルタと名乗るエルフの少女はどうするのですか?」
「……と、そうでした。彼女には少し相談がありますので王都の方に連れてきていただいても構いませんか? 適当な宿屋に隔離して、こちらから話を伺いに行きますので」
「……彼女は何者なのでしょうか?」
「長寿からか、かなり物知りなエルフの様です。知恵袋ってやつですね」
「……分かりました。宿はこちらの宿を使います。数日中には連れてこられるかと」
「ありがとうございます」
感謝を述べた所で——ふと、それまで黙っていたアリアが千司の服の裾をちょいちょいと引っ張った。
「アリアはどうすればいいの? また、ドミトリーと離れるの?」
その言葉に千司は逡巡。
今後の動きとやりたい事を鑑みて、アリアを配置すべき場所は——。
「アリアは王都で待機。いつも通り姿を変えておく。冒険者ギルドで俺の合図を待っていて欲しい」
「わかった。ムラムラしたら殺していい?」
「だめ、王都に潜伏してると悟られたくない」
「えー! じゃあデートは!?」
突然の言葉に、千司は頭の上に疑問符を浮かべる。
「……何のことだ?」
「前にレストーの街でミリナちゃんにそう言われた! 殺すの我慢したらドミトリーがデートしてくれるって!」
言われて千司は記憶をたどる。
すると『北区の守護者』であるグエン君と知り合った際、彼を殺さないようミリナがそのようなことを勝手に言っていたのを思い出した。
(あったなそんなこと……別に構わんが……そうだ!)
「悪いが、もう少し時間を貰えないか?」
「もう結構待ってる!」
「すまない。でも、俺は入念に準備したいんだよ。アリアに目いっぱい楽しんでもらいたいからな。その為の
「アリアが、楽しむ準備?」
「あぁ、
その言葉にアリアはほおを紅潮させ、あへあへと口を歪める。
嬉しそうに千司に身を寄せ、首筋に荒い息を吐く。
「いひっ、いひひひっ♡ な、なら、それなら楽しみにしてるっ♡ んっ、あへぇ……しゅき、しゅきだよどみとりー♡」
「この顔の時は奈倉千司で頼むよ」
「あへへっ、わかった、ドミトリー♡」
ギザ歯を見せて何もわかっていないアリアに千司は内心ため息を吐く。
「……お二人は大変仲がよろしいようですね」
「っと、失礼しました」
「いえいえ、仲良きことは素晴らしきこと。お二人のことを私は応援しますよ」
「ありがとうございます」
心にもないエルドリッチの言葉に、千司もまた心にもない言葉を返す。
嘘つきと嘘つき。
隠し事と隠し事。
それでも目的が同じなのなら、今は面白さを目指して手を取ろう。
最後に再度今後の動きに関して確かめてから、千司はエルドリッチに別れを告げて宿を後にするのだった。
—————
あとがき
久し振りのアリアとエルドリッチ。
個人的に、変態で最低最悪の殺人鬼ですけど人生楽しんでそうなアリアが好きです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます