#13 雨やまねーし、出前を頼もう!

 あ、お前なに頼む?

 タピオカ? おっけー了解!

 

————


 ある日の夕方。


「冷蔵庫の食材が少ないけど、今日は天気悪いし、買い物にも行けないわね、困ったわ」

「アタシはなんでもいいよ!」

「あたしも!」

「いや、新しい料理はやめましょう」


 まあ、僕とかは味音痴だからいいけど、エリーとアイはかわいそうだな……


「出前を頼もう」


「え、出前? なにそれ?」

「スマホのアプリで、食べたいものを選んで買うと、食事を届けてくれるんだよ」

「えー! スゴい!」

「それなら、毎日それ使えばいいじゃないですか」

「いや、まあ、ちょっと高いし……」

「そうね、仕方ないし、たまには、そうしましょうか」



 こうして出前を頼むことになった。



「アタシはスイーツがいい!」

「あたしも!」

「いや、夕食を頼むんだから……僕はカレーとかかな」

「アイも……スイーツがいい……」

「私はパエリアですね」


 ヤバい。スイーツが有利だ。


「えっと、あ、そうだ、コトミは何にする?」

「そうね、わたしも、パエリアにしようかしら」

「ああ、じゃあ僕もパエリアにしようかな」

「えーっ! スイーツがいい!」

「あたしも!」


 意見はまとまらなかった。


「仕方ないし、スイーツとパエリア、別の店で両方頼む?」

「オッケーオッケー!」


 カードとかはこの世界だとたぶん使えないから、現金払いでいいか。


 えっ……


 手数料、高すぎ……


「配達手数料が高いんだけど、どうしようかな……」

「そうですね、この世界の出前は魔法で無人配達らしいので、『触媒』代で結構取られるみたいですね」

「そうね、両方頼むのは、ちょっとやめたほうがいいかもしれないわね」

「アタシはスイーツがいい!」

「あたしも!」


 意見はまとまらなかった。


 結局、じゃんけんで決めることになった。



「最初はグー! じゃんけんぽん!」



 ——そして、レナと僕の勝負になった。


「この前ブラックジャックで負けたから、今日は負けなーい!」


 僕も負けるわけにはいかない。

 僕とエリ―、そしてコトミのパエリアがかかっているんだ。


 でも、ただの運ゲーで強運のレナに勝てる気がしない。


 どうしようか。


 そうだ、アレをしよう。



「『僕はグーを出す』」



「えっ……」

「あ、ヒカル、なんか悪い顔してる!」

「何か企んでますね」

「ヒカル、怖い……」


「グーを出す」と宣言されたとき、チョキが出しにくくなる。

 とくに、レナみたいなタイプはそうだろう。


 だから、僕がパーを出せば、勝率があがる。

 しかも、レナは疑いにかかってる。この前、ブラックジャックで騙されたから。

 レナは「僕がグーを出さずに、チョキを出す」と思っている。そうに違いない。

 つまり、「レナはグーを出す」。


 ——勝てる。


 そう思ったときだった。


「うーん、なんかアタシ、じゃんけん苦手かも。イオ、やってみる?」

「お、いいよ!」


 えっ……


「いや、ルール違反じゃない?」

「まあ、同じ陣営から出ているんだし、問題ないでしょう」

「そうね」

「イオ、あとよろしく!」

「おっけー!」



「グーを出す」と言ってしまった。

 イオは何を出すだろうか?

 でも、そもそもイオの場合、さっきの僕の言葉を気にしていない気がする。

 うーん、運ゲーになるけど、まあ強運のレナよりはマシか……とりあえず、グーを出すか。


 そう思ったときだった。



「あたしは、パーをだすね!」


 なにッ!


 ——困った。


 グーが出しにくい。


 しかし、チョキも出しにくい。個人的に、チョキで勝てた試しがない。


 まあ、いったんパーを出して様子を見るか。


「じゃんけん、ぽん!」


 パーだった。


 ひとまず難を逃れた。



「次も、パーを出すね!」


 なにッ!


 どうしようか。


 グーは出せない。イオの場合は、嘘をついているという感じがまったくしない。


 そうすると、やっぱりパーを出すのかな。


 出しにくいが、チョキで攻めるしかないか。



「あ、でも、なんかヒカルはチョキ出しそうだから、やっぱりグーにしようかな!」


 マジか……


 てか、普通、自分の出す手、言う?


 いや、自分で最初に言ったわけだから、自業自得ではあるのだが……


 でも、グーって言ったから、まっすぐなイオは、グーを出すだろう。たぶん。


 パーで攻めるしかない。



「じゃんけん、ぽん!」


 イオはグーを出した。やっぱり、そういう性格なんだな……


 とにかく勝ったから、パエリアにはありつける。


 コトミ、パエリアは守ったぞ。アイ、すまない。



「えー、アタシはスイーツ食べたかったけど、じゃあこの店かあ。あっ! でもこの店、ケーキも売ってるし、ここのケーキでもいいよ!」



 ——結局、全員無事にお望みのものにありつけたのだった。




————

 日曜日のあのアニメのジャンケン、オレあんま勝てねーんだよな!

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