#5 どーせ暇だしトランプで遊ぼう!

 トランプのマジックってオモシれーよなー!

 まあオレは練習する気ねーけど!ハハハ!


————


 ある日。


「そういえば、ヒカルの趣味ってなにー?」

 レナに聞かれた。


 うーん、大した趣味はないのだが……


「トランプとかは、学校の休み時間にやってたかな」

「えー、なにそれ」

「ちょっと出してみるね」


 トランプの召喚くらいなら大丈夫だろう。


 ドカン!バァーン!


 神殿のあちらこちらが音を立てて崩れてしまった。


「えー、この音、またやらかした?」

 走ってきたイオに聞かれた。


「アハハ!ヒカル、魔法の才能、ないんじゃなーい?『絶対神』なのにね!」

 レナのことはいつか見返してやろう。


「また、やらかしたのですね」

「ヒカル……魔法の才能ない……」

 アイにまでそう言われると、さすがに落ち込むな……


「仕方ないわね、ヘスペリデスの林檎世界よ、安息に戻れで直しとくわよ」

 コトミ、いつもありがとう。


「あー、コレ知ってる!テレビで見たよ!」

 え、この世界、テレビあるの?

 基準が全然わからん。


「こうするんだよね!」

 レナは、53枚のトランプのデッキを手に取ると、それの表面をバラバラと全員に見せて、シャッフルした。

 そして、一番上にあった「ハートのエース」を皆に見せて、デッキの中央に入れた。

 それをテーブルの上に置くと、レナはトランプを不思議そうに見つめるアイに言った。


「じゃあ、アイ、一番上のこれ、めくってみて!」

「なんだか緊張します……」


 アイがおそるおそる一番上のカードをめくる。


 なんと、それはデッキの中央に入れたはずの「ハートのエース」だった。

 アンビシャス・カードという、あのマジックか。


「えー!レナすごい!」

「びっくりしました……」


 レナ、やっぱり物覚えいいのかなあ。


「どうせ、デネブの輝き変換魔法でも使ったのでしょう」

 エリーはそういって、デッキのトランプを表向きにひっくり返すと、さーっとそれをテーブルに並べた。


 全部、「ハートのエース」だった。


「えー、そういうものじゃないの!?」

「中央のカードだけ一番上に持ってくるんですよ」

「そんなの無理じゃん!」

「あはは、このトランプ、もう使えないね!」

「びっくりしました……」


「とりあえず、このトランプを元に戻そうか……」


 まあ、目の前の53枚のトランプくらいなら、流石に魔法を使っても大丈夫だろう。


 ドカン!バァーン!


 思わず、ヘスペリデスの林檎世界よ、安息に戻れを唱えている、コトミのほうを見た。

 あの目は、ちょっと怒っていたな……


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