10.

 上谷の相談に乗った(と言えるほどのことはしていないけれど)日の晩、俺は自宅で悶々としていた。


「ぅ、あ、ああああああ……」


 ベッドに転がって背骨を鳴らすくらいに仰け反りながら喉を締めて肺の中身を絞り出す。何も解決しないし、思考も前に進まない。


 なんで俺は興奮してるんだ。上谷からの友情を確かめたから? それはある。嬉しい。必要とされたから? それもある。嬉しい。


 だけど喜びとともに胸に去来するのは満足感ではなく焦燥感だ。


 俺は多分、今感じている喜びがそのまま掠れて消えてしまうのを怖がっている。そうならないために必要とされ続けたいと願っている。必要であるとは他では代用が利かないものになることで、つまるところ特別でありたいという願いだった。


 友人では圧倒的に不足している。親友とて唯一じゃない。信頼が欲しいのでも、友情が欲しいのでもない。


 何かに於いて一番になりたいと心底願ったのはこれが初めてだ。

 俺は、上谷にとっての一番になりたい。上谷が必要とするもの全ての頂天に立ちたい。出した答えはシンプルで、だからこそ酷く気が滅入った。


 そんなものに、なれるはずがないのだから。

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