自殺志願者の主人公が「安楽死用」の「薬」を手に入れたところから物語はスタートします。歓喜する主人公は自死するため幾つかの行為を行うが……。私にはそれが彼の自発的な生というエネルギーに見えてなりません。このパラドックスを主人公は、どう解決するのか。深い論題を秘めた小説です。
安楽死自体に対して、過小評価や過大評価になる表現をするのではなく、登場人物を通した心理描写で読み手に考えさせてくれる点が個人的に良いと感じました。
この自殺志願者青年の語りがそれを証明してしまっているように思えます。