第七話 決意2

 目覚めの悪い起床だった。

 外界にはどろんとした雲の列のみが果てしなく広がり、それに押しやられるように輝度きどの低い照明が細々と室内を照らしている。

 青年はその対照をもって先の夢を思い出した。

 あの暗がりと明るみの連鎖、戦慄の光の侵入。全くの空疎な夢のようで、何かのメタファーとしての直観があった。

 しかし、この夢が何をどう表しているのか、全く見当がつかない。


 青年は刹那、死への願望が強まるのを感じた。

 向井の無理解、叔父の想起、あの悪夢、全てが彼にとって不快なもので、今後の生の暗さを一層とさせるものだった。

 しかし、彼の決意の魅力は昨日のものより薄弱となっている。

 もしこの瞬間、あの薬を飲むとして、どこか喉奥に引っかかるものを感じた。

 死を強く渇望しながら、どこか後ろ髪を引くものがある。それが何かわからなかった。


 成程、人間は困難な生き物なのかもしれない。

 一度結んだ決意も時間の行進によって押しのけられ、どこか濁ったものと化してしまう。

 青年は後悔した。決意したあの瞬間に死ぬべきだったと。

 あの内に燃える炎に身を委ねていたら、どれほど楽だったろう。今この薄汚れた決意のもとで死ぬことは本意ではない。

 けれども、あの決意を否定することは青年にとってより恐ろしいことだった。

 決意の否定は、自己の際限ない生を許すことであり、無限の苦しみの享受を意味していた。……あの淀んだ泥の海に再度肩をつけたくはない。


 青年は錆びれたジレンマの中で立ち尽くしていた。

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