Ⅱ 待ち時間には別のお仕事を
この数日というもの、俺は妙にツいていた……時を置かずして、またもや仕事の依頼が舞い込んだのだ。
あの後、ホナソンという依頼人にもっと詳しく話を聞いたところ、ワラキュリアだかから越して来る
一方、当のご本人と
それに、よっぽど重要な荷物なのか? ご丁寧にも高い運賃
せっかくのご依頼だ。んなわけで船が着く頃合いになるまでの間、俺はその二番目の仕事も引き受けることにした。
その仕事というのは、このサント・ミゲルの歓楽街にある娼館〝ウィット・ビィー〟で、夜な夜な娼婦を襲う魔物を退治してほしいというものだった。
その〝ウィット・ビー〟は、高級とまではいかねえが中の上くれえのランクの店で、薄ピンク色をした瀟洒なコロニアルスタイルの、わりと綺麗な店構えだ。
そんなシャレオツな娼館で、なんでも深夜、自室で眠っていた娼婦が何者かに襲われ、翌朝、全身の血を失った青っ白い遺体となって発見されるんだとか……しかも、首筋には鋭い牙で噛まれたような刺し傷が二つ残ってるんで、きっと魔物に血を吸い取られたんだろうという話に巷ではなっている。
そんな犠牲者がつい二日前のものを含め、今月に入ってからもう三人も出ているんだそうな……。
「――
その娼館の女主人、依頼主であるミーナマリーが開口一番、話を聞きに行った俺に店の応接室でそう答えた。
「ぶ、ぶぁむぴる?」
「人間の血を吸うバケモノさ。ほら、吸血コウモリみたいにね。うちにポーラニア公国にルーツを持つ
聞き慣れえ言葉に俺が小首を傾げると、その酸いも甘いも知り尽くしたという貫禄を滲ませた妖艶な美熟女は、そう言って簡単な説明をつけ加える。
「吸血コウモリみてえなバケモノねえ……東エウロパか。最近、なんかよく聞くな……」
「こういう
因縁めいた偶然の一致をそこはかとなく俺が感じていると、ミーナマリーは艶めかしい眼差しをこちらに向けて、甘えるような声色でそう懇願してくる。
「よく見りゃあ、あんた、なかなかイイ男じゃあないか……なんなら、報酬に加えてあたいが特別に、この体でじっくり
「ま、まあ、任せときな。とりあえず、そのポーラニア人だかの
さらに舌舐めずりまでして見つめてくるミーナマリーに、このままでは娼婦よりも先に俺の方が彼女に
それから、そのルーツィエというポーラニア系の娼婦に話を聞いてみたが、なかなか有意義な情報を手に入れることができた。
その話の通りなら、ほぼ不死身の恐ろしい怪物みてえだが、弱点があるんなら充分に勝ち目はある。
また、娼婦全員に聞き込みをしたことで、この事件の全体像がだいたいわかってきた。
まず、犠牲者は一月ほど前から約一週間置きに一人出ており、いずれもまだ若いピチピチした娘ばかりが狙われていた。
加えて全員、スラブ系に近い金髪色白のタイプだったようだ。どうやらそれが魔物の好みらしい……。
さらに、事件の起きた日の前後の状況を詳細に分析した結果、ある法則性が浮かび上がってきた。
そこまでわかりゃあ、次に魔物の現れる時をだいたい予測することができる……ここはいっちょ、罠でも張ってみるか……。
そこに思い至ると俺はミーナマリーに協力を要請し、その日は彼女に
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