第37話 幻惑蛾 Ⅵ
「ーーーな、なんだありゃ・・・」
俺様が見つめる先にはーーー右腕から【
その【蜃気楼】のあまりの
『ーーーゴルルッ!!!』
呆然としている俺様の耳にーーーホブゴブの唸り声が届いたっ!?
ーーーそうだっ!!!
ーーー突然やべぇもん出しやがったアレンに気を取られてたけど、今は戦闘中だったっ!!!
ーーーアレンに気を取られてる場合じゃ無かったっ!!!
ーーーやべぇ死ぬっ!?
「ーーーーーク、クソォォッ!!!」
こんなに長時間ボーッと呆けていたんだっ。
ーーーもうホブゴブの棍棒が目の前にあってもおかしくないっ!
せめて頭だけは守らねぇとっ!今死ぬわけにはいかねぇんだ!
ーーー『黒牛亭』の全メニュー、
ーーーあと一品ッ!『
せめて頭を守ろうと、頭の上に剣を構え、防御の姿勢をとるっ!!!
衝撃に備えて、腰を落として全身に力を込めるっ!!!
待つ。
…待つ。
……待つ。
……だけど一向に攻撃の気配がないっ!!!なんでだよクソッ!!??
3秒程経って流石に可笑しいと思い、バッと目を開けるっ!
戻った俺様の視界にーーー俺様から距離を取っているホブゴブリンが映った。
ーーーホブゴブリンは俺様に視線を向けていなかった。
ホブゴブリンが鋭い目付きで見つめる先は、遠く離れているーーー【純白の揺らぎ】を纏うアレン…。
ーーー俺様のことなんて眼中にないっ…。さもそう言いたげにホブゴブは…右腕から【純白の蒸気】を立ち上がらせるアレンを鋭い眼光で凝視している……。
腰を下ろして、最警戒体勢っ。牙を剥き出しにして低く唸り、アレンを警戒してやがる…。
……俺様よりアレンを警戒してるってことかよッ…。
でも…無事だったのは喜ぶべきことだよな。
目の前のホブゴブ
それにーーー
50にも及ぶ
……知能を持たないで、ただ貪欲な
そいつらが目の前の
……
「ーーーなんなんだよっ……ほんと
ーーー人間の俺でも分かる。
ーーー【
ーーー神々しさすら感じる、あの【純白】に自然と
停滞した戦闘に呆ける俺。
周りの
「ーーータケル!早くユリアの元へ!!!」
ーーーアレンに尻を叩かれてしまったっ!
ーーーそ、そうだっ!
ーーーウルフに
「ーーーぁ、あぁ!!!」
異様な
俺様がユリアに近づくに連れて、ユリアを狙っていたウルフが後退していったっ。
アレンを警戒しつつ、しっかり俺様も警戒しているってことか!?
正しい判断だぜ犬っころっ!てめぇは後で俺様がぶっ殺してやんよっ!
アレンを警戒し続ける
俺様は無血でユリアの元まで辿り着くことができた。
地面に伏して目を瞑るユリアを抱きかかえて、肩を揺らすっ。
「おい!大丈夫かユリア!?早く起きやがれっ!!!」
「……た、タケル…」
程なくしてユリアは目を覚ましたっ。
目の焦点が少し合ってないような気がするけど、まぁこの程度大丈夫だろっ!
「ーーーったく。寝坊だぞ、馬鹿野郎っ」
無事な様子のユリアにニヤリッと笑いかける。
「ーーータケルッ!ユリアは無事ですかっ!?傷はっ!?」
アレンは俺たちを背に、【純白】を纏う片手剣を構えて
気に食わねぇがアレンのお陰で今俺様たちは一息つけている。
「無事だぁ!!!でも、頭から血流してやがる!」
ユリアの桃色の長髪を掻き分けて患部を覗く。
大した傷じゃねぇが、頭の傷ってのが気になる。
学のねぇ俺様だが…頭の傷は簡単に致命傷になるってアレンから何度も聞かされている。
大きな傷じゃねぇが、とりあえずアレンに頭部の傷を報告する。
「ーーータケル、これを!!!」
報告に対してアレンが小瓶を放ってきた。
ナイスキャッチして中身を覗く。小瓶には緑色の液体が入っていた。
「ーーー
ゆっくりと口を開いたユリアの口に小瓶を添えてーーー
少しずつユリアの口に流れ込んでいく
ーーー回復薬を半分程飲んでユリアの目の焦点が回復したっ!
「よ、よし…!いいぞユリアッ!動けっか!?」
「……ぅ、うん…」
ユリアはまず俺様を見てからすぐに焦点をずらして、アレンを見た。
アレンを見た瞬間ーーーいや、アレンの【
「……あれは…アレン…?」
目を見開いて、ユリアは零すように呟いた。
……その気持ちは分かるぜ。……あの【純白】を纏っているアレンは、まるでアレンとは別人のーーー
まるで絵本の中の『神様の使い』ーーーいや下手すりゃ
でも…あれは確かにアレンだ。間違いねぇ。
「……おう。なんかとんでもねぇことになってるが、間違いなくアレンだ…」
ユリアの呟きに答えた後、アレンに叫ぶっ。
「ーーーおい!アレン!【
「ーーー僕の『魔法』です!たぶんっ!」
これまで堪え続けた俺様の疑問に対して、アレンは
ーーーいや、そういうことじゃねぇっっっ!!!
そうじゃなくてーーーその、とんでもねぇ気配の【純白】の
ーーーって、そんなのアレンも知らねぇか……。
「この魔法っ、長く持ちませんっ!!すぐに片付けます!2人とも援護してください!!!」
アレンが額から大量の汗を流しつつ、俺様に叫んできた。
あの尋常じゃない量の汗にキツそうな表情……。
本当に限界みてぇだな。こんなすげぇ魔法だったら、やっぱその分魔力消費するんだろう…。魔力限界が近いんだろうな…。
「分かった!
ーーー左側の
と叫ぼうとした俺様だがーーー。
ーーーーードォォォォォォンッ!!!!!
「ーーーは?」
アレンの【純白】を
「ーーーすぐに片付けますっ!2人とも援護してくださいっ!!!」
僕はタケルとユリアに合図をしてから、
駆け寄りながら、蜃気楼のように右腕から湧き出る【純白の魔力】を見つめる。
莫大な量の魔力を込めて生まれた【純白の蜃気楼】。この【純白】の力を僕は知らない。初めて発動したから当然だ。この力がどれほどの威力を発揮するか分からない。
けどーーー直感が告げている。
この【純白】を使えばーーー目前の
「ーーーはぁぁぁっっ!!!」
想像以上の高速で振り抜かれる剣線っ!
ブォンと風切り音が周囲に響き、残像と共に【純白の軌跡】が目に焼き付くっ!
ーーードォォォォォォンッ!!!
豪快な衝撃音と共にーーーホブゴブリンを上下に両断したっ!!!
さらに片手剣の剣圧によって後方にいた5体の
ドミノ倒しでさらに10体の
奥に詰めていた
一撃でーーー10体以上の
想像以上の威力に僕は目を丸くする…。
右腕で蜷局を巻く【純白の蜃気楼】を見つめて呆然としてしまう。
「ーーーす、すげぇ…なんだよ、それ……」
ーーー横で直剣を構えていたタケルがポツリと呟いた。
タケルに激しく同意だ…。
なんだこれ?これは…本当に魔法なのか?
こんな
魔法は、探索者の切り札として使われると聞く。この魔法を見て激しく納得した。
こんな強い魔法があれば…例え格上の
桁違いの強さを見せる【純白の蜃気楼】に僕は息を呑む。
同時にーーー頼もしさを感じた。
「ーーーこれが…僕の魔法…っ…!」
前列の
眼前に広がる惨劇を目の当たりにして
ーーー
『ーーーガガガガガッッッ!!!!!』
ウッドゴーレムが鈍重な体躯を揺らしながら、僕に接近してくるっ。
魔道生物特有の高音を雄叫びとして発しながら地面を蹴るっ。
両腕を振り上げて、その
対して僕はーーー片手剣を上段に構えるっ!
「ーーー吹き飛べっ!!!!!」
硬質なウッドゴーレムを袈裟斬りするっ!
抵抗感はーーーないっ!
【純白の蜃気楼】が僕の膂力を跳ね上げて、硬質なウッドゴーレムを両断したっ!
2つに分かれた人形は後方の怪物共にまで吹き飛んで、再びドミノ倒しを起こす。
2つ目の怪物共の山が生まれた。
「ーーーは、はははっ!!!さ、さすが俺のライバルだぜ!!!いいぜ!アレン!このままやっちまうぞっ!!!」
タケルが口の端をヒクヒクと痺れさせながら、態とらしく笑っていた。
僕はタケルの空元気に苦笑いしつつ、押し寄せる
「ーーーはい!ユリアは後方で待機していてください!本当に全快したか分からないので!」
「ーーーん?なんだこれ!?」
タケルの不穏な呟きと同時に通路の奥、『幻惑蛾の巣』の広間の方から
『ギャアアアアアア!!!』
煙を吸い込んだ
僕の【純白】を見てからの弱気が嘘のように消えたっ!
雄叫びを上げて目を血走らせながら突進してくるっ!
僕が怪物共をどれだけ薙ぎ倒しても、決して怯まないっ!!!
まるで生存本能を無くしたかのように無策で突撃してくるっ!!!
「
「ーーーあぁ!!!
互いに剣を止めず、励まし合うっ!
声を出し続け、互いの状況を確認し、
着実に
「ーーーーっ!?」
戦闘開始から十数分っ。
僕は急激に魔力が無くなる
もう魔力の限界は…近いっ。押し寄せる虚脱感に今すぐでも膝を折りたいっ…。
怪物共は・・・残り20体程度っ。
最初に比べれば見違えるほど減っているっ。底が見えてきた。
とはいえ、まだタケル1人に任せるには荷が重い数だ…。
今僕がリタイアすれば…タケルが怪物共の集中砲火を受けるっ。
そうなれば…タケルの未来は簡単に予想がつく。
「ーーーはぁぁぁ!!!」
【純白の蜃気楼】を纏う片手剣が3体のコボルトを一閃で屠るっ!
3体とも上下半身を割き、臓物を地にばらまく。
ーーー次の
身体の向きを変えようと重心を片足に乗せた時、全身から力が抜けて後ろに倒れそうになるっ!
ーーーま、まずいっ!
ーーーっ!?
「ーーー後ろは任せろアレン!てめぇは
ーーー後ろにはタケルがいたっ…。
ーーー仰向けに倒れそうになった所をタケルの肩に支えられるっ。
ーーー互いに背中を合わせて支え合う…。
ーーー僕が困ったときはタケルが。タケルが困ったときは僕が。お互いに助け合う。
ーーー
……一人突っ走りすぎていた。【純白の蜃気楼】に目覚めて有頂天になっていたかもしれない…。
僕は頼もしい
「ーーーはぁ、はぁ、はぁはぁ……」
広間に転がる無数の
歩く道を探すのも苦労するほどの数多の
見上げると、僕たちが通ってきた通路にも数え切れないほどの
見渡す限り全ての
数はざっと見積もって…80体程だろう。
これほどの数の
ーーーとはいえ。
……流石に、この数の
僕は地面に大の字に寝転がって深呼吸しながら…呼吸を整える。
……もう動けない。体力が本当に底を尽いた。
全身の筋肉が痙攣しているし…無理に扱った骨にダメージが溜まっている。
それになにより…魔力が限界だ…。
【魔力欠乏】…。
本当に一歩も動けない…。というか動きたくない…。
「……大丈夫、アレン…?」
少しずつ息が整ってきた所で、ユリアが水の入ったコップを持ってきてくれた。
コップを受け取るために…やっとの思いで身体を起こすっ。
……本当に全身に重石を纏っているみたいだ。身体をほんの少し動かすのですら億劫に感じる…。
コップを受け取って、ゴクリッと冷水を飲み干す。
「……はい、なんとか。…魔力を消耗しすぎたようです。身体が重くて、少し休憩したいですね。……もう一杯もらえますか?」
「……うん、待ってて…」
ユリアは桃色の髪を靡かせながらリュックサックの元まで走って『水生成の魔道具』から水を汲み、戻ってきてくれた。
「……はい…」
「……ありがとうございます…」
冷水の満ちるコップを受け取りながら、ユリアの顔を見る。
ユリアの額には……
ユリアは…今回の探索で、
スナイパータートルの不意打ちとウルフの猛撃によって…あと一歩で死ぬ寸前ところだった。
本来は僕が両方とも食い止めるべきだったのに…僕の不注意のせいでユリアは死にかけた…。
ユリアに直接謝罪したとしても……『大丈夫だよ』、と優しく許してくれる光景が目に浮かぶ。
「……ごめん、ユリア…」
もう2度とユリアをあんな危険な目に遭わせない…。
ユリアは絶対に僕が守る…。
ーーーーこの命に代えても…必ず
隣に座るユリアの、優しげな表情を眺めながら僕は誓った。
僕は5分ほどユリアの介抱を受けて体力と精神を共に癒やし、時間経過によって魔力も少し回復させた。回復した魔力によって虚脱感がやや抜けて、辛うじて動ける状態にもなった。
ユリアの肩を借りて立ち上がり、周囲を見渡してタケルを探す。
幸い初級階層の
「ーーーへへへ、今回はよくもやってくれたなぁぁぁ『
……タケルは亀を足蹴にしていじめていた…。
「てめぇのせいでたけぇぇぇポーション使っちまったじゃねぇか!!!」
……何度もスナイパータートルの甲羅を蹴りつけて、溜まりに溜まった怒りを爆発させていた。
……スナイパータートルはタケルの殺気に怯えて、甲羅の中に引っ込んでしまっている。
……スナイパータートルが感じている恐怖を示すように時折、甲羅がブルブルと震えている…。
……有名な絵本の中で、こんな光景があった気がする。確か…虐められる亀を助ける優しい漁師の物語…。
ただ、その絵本の内容と照らし合わせると…タケルは悪役側だ…。
つまり、タケルのパーティメンバーの僕たちも悪役側……。
「………………」
僕とユリアは…目を点にしてタケルに近づく…。
「てめぇには惨たらしい
タケルが瞳を怪しく輝かせて直剣を抜き放ち、剥き出しの刃を舐める素振りをする…。
《……絵本でよく見る悪役そのものじゃないですか…》
溜息をつきつつ、ユリアと一緒にさらにタケルに近づく…。
「……あれでは、タケルが悪役ですよね…」
「……う、うん…」
「ーーーとりあえずひっくり返りやがれっ!!!クソ亀野郎がっ!!!」
スナイパータートルを虐め続けるタケル…。
「………………」
ユリアの肩を借りてタケルに近づきつつ、ユリアに尋ねる。
「…ユリアはあのスナイパータートルに恨みはありますか?自分を窮地に落とした
「……ない、とは言えない…けど、そこまで強くもない、と思う…」
ユリアは困ったように眉を曲げて、呟いた。
「……分かりました。それなら…」
ユリアの肩から手を外して1人、タケルの背後からスナイパータートルに近づく。
「へへへ、屈辱かぁ!?腹丸見えになって股間さらけだしてんのはよぉぉぉ!自力で起き上がれんなら起き上がってみろや。まあ、亀は自力で起き上がれねぇもんなぁぁぁ!?はははっ!!!」
無様を晒すスナイパータートルを見て目の端に涙を滲ませて笑うタケル。
僕は、その隣を音も出さず通り抜けてーーー片手剣を振るうっ!
ーーースパッ!!!
スナイパータートルの首を切断し、息の根を止めてあげる。
「ーーーあぁ!!??おいアレン!てめぇ何してんだよ!!??」
「……タケルが見苦しかったので」
当然タケルが文句を垂れてきたので無視しつつ、パパッと話題を逸らすっ。
「ーーーそれより、あの
僕が指差す先。
広間の中央に位置する巨大な岩石の
ーーー突き出る岩盤の上で
「ーーーあ、そういやそうだったな。ここまで来た目的忘れてたぜ」
タケルが目を見開いて頭を掻きながら、ばつの悪そうな表情を浮かべた。
計画通り、スナイパータートルのことはすぐに忘れてくれた。こういう時にはタケルが単純でいてくれて本当に助かる。
「おいでぇおいでぇ~、
タケルがソロリソロリと、
でも幻惑蛾はタケルの醜悪さを感じ取ったようで、すぐにその場を飛び立った。
ーーーヒラリヒラリ。
幻惑蛾は自由に宙を舞い、やがて羽を休めるためにそっと降り立った。
「……ぁ…」
ーーーユリアの手の平に降り立った。
「ユリア……そのまま捕まえてください」
「……うん…」
ユリアはそっと幻惑蛾の羽を掴みーーー持参した捕獲用カプセルに幻惑蛾を収めた。
これでやっとーーー
カルロスが助かる…。ソルト商会を敵に回さなくて済む…。
全て丸く収まる…。
肩にのしかかっていた重荷が1つ外れたのを感じて…安堵の吐息を漏らす。
「ーーーああっ!クソッ!俺様が捕まえてやろうと思ったのによぉ!!!」
地団駄を踏み悔しがるタケル。
その姿を苦笑いして眺めるユリアと僕。
「これで
「……うん。……3人とも、無事でよかった…」
「……そうですね。それが一番嬉しいことですね」
僕は地面に無数に転がる無数の
そのときーーー突然タケルに胸倉を掴まれたっ!?
ーーーな、なんですか!?
「ーーーあっ!!!そうだアレンてめぇ!てめぇが使ってた【真っ白なヒラヒラ】について答えろ!?あれもてめぇの『魔法』って本当かぁ!?」
タケルに胸倉を掴まれたまま持ち上げられるっ!
ただでさえ戦闘の疲れが残っている身体なのにーーーこの
ーーーく、苦しいっ!本当に苦しいっ!
「ーーーく、首絞めないでくださいっ!答えますからっ!!!」
僕が必死にタケルの手を何度もタップすると、冷静さを取り戻したタケルがやっと手を離したっ…。
何度か咳き込んだ後に痛む胸を撫でてタケルを睨みながら口を開く…。
「……あれも僕の魔法だと思います。『魔装』より多い魔力を右腕に集中させることで発動しました」
「ーーーまじかよっ!?ってことはてめぇ、2つも魔法持ってんのか!?」
「……でも…lv2にならないと、魔法2つ持てない…?」
「ーーーってことはっ!てめぇぇぇっ、俺様より早くlv2になりやがったかっっっ!!??」
ーーーまた僕の胸倉を掴もうとするタケルっ!
ーーーでも二度も同じ手は食わないっ!
タケルの手を打ち払う!何度も伸びてくるけど、その度に打ち払い続けるっ!
「ーーーち、違いますっ!違いますよたぶんっ!!!ーーーたぶん、あの魔法が僕の『
最後にパシンッ!と、思い切りタケルの手を打ち払うっ!
タケルは、強く打たれて赤く染まった手の平にふぅぅぅ!と息を吹きかけた。
相当に強烈に打ったから痛いんだろう。まあ、自業自得です。
「……ふぅ~ん。……アレンがあんなつえぇ魔法持ってるのは気にくわねぇが…lvが上がってねぇなら許してやんよ」
「いや、タケルの許可なんて元からいらないでしょう……」
僕の呟きなんて無視して踵を返すタケル…。
身体の向きを変えて、僕に背を向けた。
ーーーでもそれから何かを思い出したかのようにクルリと僕に向き直った。
「そーいや、あの魔法はなんて呼ぶんだよ?魔装と区別した方がいいだろ?どー見ても違う魔法だしよ」
それもそうか……。
僕の直感からすると魔装も、あの【純白】も同じ魔法だ。だからこそ1つしか魔法を持てないはずのlv1の僕が両方の魔法を使える。
でも、あの【純白】は魔装とは比べ物にならない攻撃力を発揮する。根本的には同じでも…完全に別種の魔法と言ってもいい位の
魔装と区別するために、名前をつけた方がいいだろう…。
タケルにしては珍しく良い提案に僕は少し考える……。
魔装という魔法名は…ガルム兄さんに態々考えて貰ったものだ。
その魔装の発展系。魔装と類似する魔法名がいいだろう……。
魔装と語呂が似ていて……【純白の蜃気楼】の特徴を捉えた魔法名。
ーーーよし。決めた。
「ーーー『
ーーー新たな『
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