第14話 英雄の目覚め Ⅳ










「ーーー!!??」


どうしてーーー『キルラビット』の牙が貫通してないんだっ!!??


牙は僕の腕の直前でーーー停止していた。

ーーーまるで、僕の腕が『見えない鎧』に守られているみたいに。


『グルルルルッ!!!』


腕に噛みついているキルラビットが唸ったッ。

身体を捻って牙にさらなる力を込めたみたいだ。

それでもーーー牙は腕に届かない。


「ーーーどけっ!!!」


腕を思い切り振り、キルラビットを腕から離す!

吹き飛ぶ『キルラビット』を横目に僕は自分の腕を見つめる。


ーーー不可視の鎧。


こんな現象…知らない。

不可視の存在として思い当たるのはーーー『魔力』。

魔力は…透明だ。

魔力は魔法によって『スラッシュ』青色『ヒール』緑色のように色がついて発光することもあるが、魔力の本来の色は透明だ。


僕は今、怪物共の注意を引くために魔力を纏っている。

それも『これまで纏ったことがないほどの量』の魔力を……。



圧縮された膨大な魔力がーーー鎧となった…?



「ーーーそんな話聞いたことない…」


僕は立ち上がって、迫りくる狂乱状態の怪物モンスター共に盾を構える。


魔力は触れない。それが一般常識だ。

ーーーどれだけ圧縮しても物資化しない。

ーーー鎧にはならない。


ーーーなのにどうして……?


「ーーークッ!」


僕は『ホブゴブリン』と『ハニーベア』の突進を避ける。

続く『コボルト』の棍棒の突きも盾で受け流す。


魔力は本来物質化しない。

でも現に僕の濃縮された魔力はーーー『鎧』となった。


魔力に関する現象でーーー特定の個人だけが成し得る現象。


ーーー『魔法』。



魔力の鎧これ』はーーー僕の・・魔法なのか!?


僕はーーー『無魔法』じゃなかったっ!?



「ーーー『男』は度胸っ!!!」



飛びかかってきた『ウルフ』のかみつきに腕を合わせる。

『ウルフ』は腕に噛みついた。


ーーーその牙は『魔力の鎧』に阻まれたッ!

ーーー防げた!?


「ーーー『ウルフ』のかみつきも防げるのか!?」


ウルフのかみつきは凶悪だ。

人間の腕なんて容易に噛み千切るはずだ。

それすら防ぐ防御力。


「ーーーこれなら!!!」



ーーー怪物の大群パレードを倒せる!!!



僕は一歩前進する。

腕に食らいつき続ける『ウルフ』の頭を思い切り地面に叩きつける。


『キャインッ!』

断末魔を残して『ウルフ』の頭が割れた。

痙攣を起こして事切れた。

血の池をが生まれた。


さらに一歩前進する。

僕は『ホブゴブリン』の一撃と『ハニーベア』の突進にだけ注意してーーー被弾覚悟で攻勢に出る。


『狂乱状態』の怪物は他の怪物の死など目もくれない。

ただ貪欲に目前の敵を屠ることだけを考える。

『コボルト』と『ゴブリン』が迫った。


『コボルト』が骨の棍棒で突きを放ってきた。

これまでの僕なら盾で受け流しただろう。

でも、今の僕はーーーこれまでの僕じゃない。


ーーー僕の、『魔法』を信じる!


棍棒は一直線に僕の胸に迫り、接触した!


ーーー痛みはない!


「ーーーここだ!!!」


剣を振り上げ、『コボルト』の首を撫で斬る。

吹き出す返り血を浴びる。

続く『ゴブリン』。

振りあげられた棍棒を盾で受け流し、同じく無防備な喉を裂く。

全身が血で染まる。



僕はーーー『剣』を手に入れた。


怪物共が叫声を上げて僕に迫ってくる。


でもーーー今の僕なら!




「ーーーおぉぉぉぉ!!!」



僕は興奮に身体を震わせて剣と盾を振り続けた。


ーーー気づけば僕を囲う怪物モンスターの数は減っていて残り8体になっていた。







「……神の癒やしを、どうかアレンに…『ヒール』ッ…」


ーーー後ろから声が聞こえた。

すぐに視界の隅に『緑色の球体』が映り、それは楕円を描いて僕の元にまで届いた。

暖かな温もりを感じる。

疲れが僅かに晴れた。


僕は回復した身体を鼓舞し、『コボルト』に剣を振るう。

盾で『キルラビット』の突進を防ぐ。


「ーーーおいおい!?こりゃどういうことだ!?なんでアレンがこんな怪物モンスターれてんだよっ!!??」


タケルの驚嘆が僕の背中を打った。


「タケルっ!早く残りの怪物モンスターを倒してください!残り魔力が少なくなってきました!!!」


僕は『ホブゴブリン』の振り下ろしを盾で受け流しながら叫ぶ。


………さっきから虚脱感を感じている。

ひどいものではないが、早く戦闘を終わらせてしまいたい。

休みたい。この虚脱感は、『魔力切れ』が近い証拠だ。


「ーーーお、おう…!あとで全部教えろよ!?」


タケルが『ホブゴブリン』の一体に斬りかかりながら吠えた。


「ーーーうぉぉぉ!全力全霊のっ!『スラッシュ』からの!!!『スラッシュ』!!!」


タケルの剣が『青く』光り、隙をさらした『ホブゴブリン』を瞬きのうちに一刀両断した。


「次だ!次ぃぃぃ!!!」


タケルが隣の『コボルト』に斬りかかった。


僕は『ハニーベア』の突進を躱しながら、剣を振るい目を潰す。

視界を奪われた『ハニーベア』が吠えた。

横から『キルラビット』が迫るがーーー気にしない。

狼狽する『ハニーベア』の喉に剣を突き刺し、トドメを刺す。

そして足に噛みついている『キルラビット』の脳天にも剣を突き刺す。


当然『魔力の鎧』によってーーー傷はない。


「ーーーって、いてぇ!やっちまった!ユリア!『ヒール』頼む!!!」


突然タケルが叫んだ。

見ると『キルラビット』に反撃されたようで二の腕から血を流していた。


「……神の癒しを…どうかアレンに…『ヒール』……」


それもすぐにユリアの『ヒール』で回復した。


「あんがとよ!!!うぉぉぉ!!!アレンだけじゃなく、俺の方も向いてみろや!!!」


「……それではタンクの意味が無いでしょう」


僕は『ゴブリン』の棍棒を盾で受け止めながらつい、タケルにツッコんでしまった。








「ーーーラストぉぉぉ『スラッシュ』!!!」


タケルが最後の1体『ハニーベア』にトドメを刺した。

2つに割れた体躯が落ちた。


ーーー僕は押し寄せる虚脱感に膝を折る。

すぐに『魔力の鎧』を発散した。


「……ぎりぎりでした」


……もう魔力は空に近い。

肥大した脱力感に息を零す。

なんとか荒れる呼吸を整える……。


「ーーーーーっ!?」


背中に衝撃を感じた。

振り返るとーーーユリアに抱きつかれていた。



「……よかった…。アレンが…無事で……」



顔は僕の背中に埋もれていて窺えない。

ユリアのピンクの髪が揺れた。

……暖かい気持ちになる。


……生きている。

……僕は死ななかった。

……こうして…まだユリアの温もりを感じられている…。


……ユリアの頭を撫でる。


「ーーーおいアレン!」


僕が安心しているとタケルが駆け寄ってきた。


「てめぇどうやってあんなに怪物モンスター倒したっ!?まさかLV上がりやがったか!?まさか俺より早くLV上がったんじゃねぇだろうな!?」


タケルが語気を強め尋ねてきた。

僕はユリアに抱きつかれたまま答える。


「……違います。LVが上がっていたならもっと簡単に怪物モンスター倒せていましたよ…」


「はぁ!?じゃあ元からお前あんなに強かったのかよ!?」


「僕も確証はないですが……『魔法』が目覚めたんだと思います」


「ーーー『魔法』ぅぅ!?アレンが『魔法』ぅぅぅ!!!???」


タケルが目を見開き驚愕した。……頭を抱え慟哭し始めた…。


「……アレン、おめでとう…」


ユリアが埋めていた顔を上げ、赤く腫れた目で祝ってくれた。


「ありがとうございます。ユリア」


僕はユリアに微笑みかける。


「ーーーおいおいおいおい!どうなってんだ神様よぉ!?アレンは『無魔法』じゃなかったのかよ!!!なんでだよぉぉぉ!?」


「僕が魔法に目覚めて悲しそうですね……」


僕はタケルの嘆きについ苦言を漏らす。


「ーーーあたりめぇだ!俺様がアレンを馬鹿にできる数少ない欠点の1つが無くなったんだぞっ!!!どうして喜べる!!??」


「……むしろなぜ素直に喜べないんですか…?」


「クソぉぉ!!!なんでこんなことにぃぃぃ!!!」


タケルが頭を抱え、嘆き始めた。

迷宮内であることもお構いなしに叫び続けている。

僕は近くに怪物がいないことを心の中で願いながら、溜息をつく。


「……どういう、魔法…?」


「ーーーおお!そうだ!たいしたことねぇ魔法だったらまだ馬鹿にできる!俺様の『スラッシュ』よりつえぇ魔法なんてそうそうねぇからな!」


タケルが陰の差していた顔に喜色を浮かべた。

……そんなに僕の魔法が弱くあってほしいんですか。…勘弁してくださいよ。

僕は先の戦闘を思い返し口を開く。


「……たぶん、ガルム兄さんの『鉄壁』のような『防御魔法』だと思います。鎧を着込む様に魔力を纏って、敵からの攻撃を防ぐような感じの……」



そこまで口にして……僕は口を閉ざす。

頭にふと違和感が生じた。


ーーー本当にそうなのか?


ピキリッ。違和感。


僕の魔法はーーー本当に、『この程度』なのか……?


そしてさらに思う。

ーーーどうして僕はあんな強かった『魔力の鎧』を、『この程度』なんて思うんだ……?




「クソぉぉぉ!やっぱりつえぇ魔法じゃねぇか!なんでだぁぁぁ!!!」


ーーータケルの叫びに熟考から引き戻された。

タケルは雄叫びを上げてのたうち回っている。


「……アレン、この後どうする…?」


ユリアが僕の顔を間近から覗き込みながら、尋ねてきた。


「……とりあえず、タケルを落ち着かせましょう。いまの状態で連戦は無理ですから」


タケルをあのまま騒がせ続けると……音に気付いた怪物共が集まってくるだろう。

ゴロゴロと、頭を抱えながら地面を転がるタケルを眺めながら頭を掻く…。


「……できる…?」


「……強引にでも落ち着かせます」





タケルを捕らえ『説教』して落ち着かせた後、怪物の解体を始めた。


「クソォ…!アレンのくせに……!」


タケルがぼやきながら『ゴブリン』にナイフを突き刺し、魔石を回収している。

僕も『ホブゴブリン』にナイフを突き立てる。

そして体躯から魔石を取り出した。

魔石が取り出された瞬間『ホブゴブリン』は砂に変わった。


砂の山から『ホブゴブリンの素材』、『ホブゴブリンの眼球』が顔を覗かせていた。

『ホブゴブリンの眼球』は滋養強壮薬の素材として取引されている。

シルフィーさんから聞いた買取り金額は銅貨7700円

僕は魔石と眼球を麻袋に収める。


「……アレン、これ…」


ユリアが怪物から取り出した魔石6個を差し出した。

どうやら素材アイテムは落ちなかったようだ。


「はい。ありがとうございます」


ユリアから魔石を受け取って、麻袋に収める。


「……あと…あの人、どうする……?」


ユリアが視線を向ける先には……おじいさんの遺体が横たわっていた。



おじいさんは……孤児によって人生を狂わされ…死の間際まで孤児を恨んでいた。

……孤児ぼくたちを否定しながら死んだ。

それに怒りは覚えたけど……。


おじいさんもーーーーこの不条理の被害者なんだ。

……見過ごすことはできない。


「……探索者ギルドに死亡報告をします。探索者証だけ預かっていきましょう」


「……わかった…」


僕はそっと呟きながらおじいさんに近づく。

ユリアも後ろを着いてきた。

おじいさんの遺体の前に立つ。


「……………………」


僕は腰に下がる袋から麻布を取り出す。

腰を下ろして……ホブゴブリンに潰されたおじいさんの顔を麻布で隠す。


「……はい…」


ユリアがおじいさんの首に下がる探索者証を取り外し、僕に差し出してきた。

僕は受け取った探索者証を胸ポケットに収めて、立ち上がる。


「……これから、どうする…?」


「……このまま5階層攻略を続けます」


こんな非常事態に遭遇したら、本来は即帰還すべきだ。

でも……今回の探索において、僕たちにはどうしても5階層を攻略しなきゃいけない理由がある。


「兄さんたちが安心して『門番』に挑めるように……僕たちは余裕で5階層を攻略した風を装わなきゃいけませんから」


「……うん、わかった…」


「それに、こんなひどい状況を乗り越えられたことは、僕たちの実力が十分5階層で通用するということも意味します。このまま進みましょう」


「……うん…」


ユリアが頷いた。


「ーーーおい!アレンっ!ほらよっ!!!


視線の先のタケルが何かを投げてきた。

顔めがけて飛び込んでくるそれをキャッチする。


「ーーー!?魔石を投げないでください。安いといっても1つ銅貨1100円で売れるんですから」


「銅貨1枚で俺様の気分が晴れるんなら安いもんだろ!魔石も感謝しながら砕け散るさ!」


ニヤリッ。

タケルは奥歯を煌めかせながらいつもの調子で叫んだ。

さっきまで僕の『魔法』に落ち込んでいたのが嘘のみたいだ。


「調子戻ったみたいですね?」


「おう!考えてもみればお前が兄貴のみてぇな良い魔法を持ったところで俺様の優秀さが変わるわけじゃ無いからな。お前の実力が1から10に変わったところで俺様の10000が変わるわけじゃない!そういうことだぁ!!!はははは!!!」


タケルが腰に手を添えて大きく高笑いした。


「……そうですか。…まぁ、とりあえずこのまま5階層攻略を続けることになったので先に進みますよ」


「俺様の『スラッシュ』が今宵の獲物を求めてるっ!……今日の俺様はいつにもまして凶暴だぜぇ…」


僕は調子の戻ったタケルの様子に苦笑いする。






僕たちはおじいさんの遺体を残して先に進み始めた。







ーーーこのとき。

リーダーだから冷静を装っていたが、僕は内心大興奮していた。

半ば諦めていた『魔法』を使えるようになった。



それもーーーガルム兄さんに似た魔法を・・・・・・。



僕はそれからの戦闘で目覚めた魔法を多用した。

圧倒的な防御力を発揮し、全ての怪物の攻撃を寄せ付けない。

自分の魔法だけどーーー本当に強いと思う。






僕たちは遭遇する怪物を呆気なく倒し続け、予想の半分の時間で6階層へ向かう階段を見つけ、5階層を踏破した。

















ーーーーーアレンが『魔法』に目覚めた瞬間まで、時刻は遡る。




場所はーーー|マリア迷宮35階層・・・・、『円環の闘技場』。



万里の長城の如く長大に伸びる土壁から成る巨大コロッセウムに囲まれた、迷宮の造り上げた大闘技場。

あまりにも巨大な闘技場は、内部に広大な砂漠を有しており、1日中歩いても闘技場の壁に辿り着くことはできない。

時折舞い上がる強烈な砂塵が闘技場全体の極度の乾燥度を表し、生物の生存不可能さを示している。生存可能な生命は、この大砂漠に適応した強靭な怪物モンスターのみ。

乾燥を強いる過酷な環境に加えて、最高位階層の濃密な魔力によって、瞬きの間にゴポゴポと産まれ落ちる凶悪な怪物モンスターの数々が探索者の迷宮攻略を防ぐ。

世界の迷宮攻略最前線(36階層)の1階層手前の『円環の闘技場』は、人類未開の地といっても相違ない新境地であり、同時に人類の迷宮攻略を阻む大きな障壁でもあった。




滅多に探索者が訪れない最高難易度階層(35階層)の一面黄土色の大砂漠を、フードを目深に被る2人の男が歩んでいた。

2人の踏みしめた足跡は吹き荒れる砂塵によって一瞬で消え、砂漠の乾燥が着実に2人の体を蝕んでいる。

時折轟く怪物モンスターの狂声は、一般人が聞くと発狂死しそうなほど醜悪で凶悪なものばかりだ。

そんな劣悪な環境の中をーーー2人はまるで堪えた様子もなく、自宅の庭を進むかのように軽々と進んでいる。


怪物モンスターが出現すれば、2人も流石に足を止めるはずだが……2人の周りには、不思議と怪物モンスターが出現しなかった。




「---ん、これは……」


「……どうしたんだ、【霊王】?」


突然先行する1人が立ち止まり、釣られて後方の男も立ち止まった。


目深に麻色の分厚いローブを被りながら、【霊王】と呼ばれた男は数秒天を見上げた後、ポツリと呟く。



「……なつかし・・・・い気配・・・を感じた気がしてね。……いや、気のせいだ。この気配の主は既に間違いなく死んでいるからね。ただの勘違いさ」



「?…まあ、自己完結できたならいいが、余所見なんかしないでくれよ。そろそろ…『猛毒王蛇バジリスク』の生息域に入るからな」


可笑おかしな様子の【霊王】に、ローブから濃い無精ひげだけを覗かせる男は訝し気な視線を送りながら、注意を促した。

暴風によって大砂塵が舞う『円環の闘技場』を、再び歩き始める2人。


猛毒王蛇バジリスクか…。……ユフィー王も厄介な依頼をよこしてきたものだ。自国の探索者に依頼すればいいものを」


「ユフィー王国に35階層を攻略できるSランク・・・・探索者・・・がいないのは、お前も知っているだろう?そうなれば『ユフィー王国』が、親交の深い我が国、『ノーゼンバルト皇国』に協力を申し立ててくるのは当然のこと。そして心優しき皇王様がユフィー王に敬意を称して、ノーゼンバルト唯一のSランク探索者、【霊王・・】に強制依頼・・・・を出すのも当然のことだ」


「【霊王ぼく】は皇王あいつの便利な駒じゃないんだけどね。依頼を断る権利くらいあると思うんだけど」


軽口を叩くようにノーゼンバルト皇国じこくの皇王を非難する【霊王】。

飄々と空気に浮かぶような【霊王】の軽口を、これまでの付き合いから慣れている男は真剣に取り合わない。


「ふむ…。世界に7人しかいないSランク探索者が正式に断ると公言すれば、皇王様の強制依頼といえど断れるだろう。ーーーただ、今回の依頼は報酬も十分だ。猛毒王蛇バジリスクを倒すだけで金板606億だぞ?」


猛毒王蛇バジリスクを倒すだけって…。実際に倒すのは【霊王ぼく】なんだけどね」



猛毒王蛇バジリスクは35階層にのみ生息する固定怪物モンスターだ。

20mにも及ぶ大蛇で、不治の猛毒と強靭な顎を用いて獲物を殺し捕食する。

lv6相当・・・・・怪物モンスターであり、Sランク探索者が足止めしなければ相手すらできない。



「細かいことは気にするな。俺だってlv5のAランク探索者だ。少しはサポートするさ」


「少しは期待しておくよ」


ニヤリと互いに笑いあい、マリア迷宮の『円環の闘技場』をさらに奥へ進む。

砂漠の砂山を乗り越え、猛毒王蛇バジリスクが住むという大砂漠の唯一のオアシスへ。



足を止めず、着実に猛毒王蛇えものへ近づく【霊王つわもの】は……さきほど感じた気配について考えていた。




(それにしても……さっき感じた気配…。まさか…な……)




「……【戦神・・】が実は生きていた…?……そんなわけないよな…」




【霊王】は、10年前に死んだはずの史上最強の探索者【戦神】の気配を思い出しながら、一人小さく呟いた。











世界最強の一角、Sランク探索者【霊王】は同じマリア迷宮の奥深くでーーー覚醒し始めたアレンの気配を、確実に感じ取っていた。











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