第101話 ハレンチ!
俺は遠見家の屋敷で玲衣さんと一緒に暮らすことになった。夏帆や雨音姉さんも一緒な上に、誘拐事件を解決してからは琴音にまで好意を持たれるようになっている。
今も、玲衣さん、夏帆、琴音と一緒に登校中で道を歩いていた。
両隣に夏帆と琴音がくっついている。
そんな状況で一番、会いたくない女の子に会ってしまった。
「ゆ、ユキ……」
俺の目の前には、とても小柄で大人しそうな女の子が立っていた。
彼女はショックを受けたように、赤いアンダーリムのメガネの奥の瞳で、俺たちを見つめていた。
桜井悠希乃は、俺や夏帆の中学時代以来の友人だ。「ユキ」「アキくん」と呼び合うぐらいには俺とも仲が良い。
夏帆と俺の仲を応援してくれていて、そして、ユキは俺のことが好きなのだった。
「あ、アキくん……夏帆……どうして……?」
ユキが呆然とした様子でつぶやく。夏帆が実は俺のことが好き、と学校で言ったとき、ユキは喜んでいた。
自分の気持ちとは無関係に、ユキは俺と夏帆をくっつけることにこだわりがある。
でも、目の前のユキはショックを受けていた。
今の俺は夏帆と腕を組んでいる。
ユキの思いを知っているのは、俺と玲衣さんだけ。友達の夏帆も気づいていない。
夏帆は首をかしげて、微笑む。
「おはよう、ユキ」
「お、おはよう……夏帆。えっと、夏帆はその……アキくんと付き合っているの?」
「えっと、それは違うの。残念だけど、晴人が優柔不断だから」
夏帆がふふっと笑う。そして、俺の耳元で「でも、最後は幼なじみのあたしを選んでくれるよね?」なんてささやく。
夏帆の甘い吐息と、腕に当たる大きな胸の感触にくらりとする。
でも、ユキは不満そうだった。
「どうして二人は両思いなのに、付き合っていないの? それに、そ、その子は……誰?」
ユキが琴音の方を見る。琴音は俺の腕を組んだまま、ふわりと黒いロングヘアをかき上げ、楽しそうに笑う。
「はじめまして。私は遠見琴音。遠見家の娘、といえばおわかりになるでしょうか」
この街で一番の大企業である遠見グループのことは、誰もが知っている。ユキも息を呑んだ。
そういえば、ユキのお父さんは遠見グループの関連企業に勤めていると聞いたことがある。
「えっと……遠見のお嬢様がなんでアキくんと一緒にいるんですか……?」
「それは、私が晴人先輩の婚約者だからです」
「え!?」
ユキが目を白黒させる。夏帆は頬を膨らませていた。
「まだ琴音ちゃんが晴人の婚約者って認めたわけじゃないんだから! 晴人と結婚するのは、あたしだもの!」
「私が一番、晴人先輩を幸せにできます!」
そんなふうに夏帆と琴音が騒ぎ出す。
玲衣さんも俺の正面に近寄ってきて、真剣な表情で俺を見つめた。
それから、俺の腰に手を回し、ぎゅっと俺に抱きつく。
「れ、玲衣さん……?」
「晴人くんはわたしのものだもの!」
玲衣さんは俺にすがるように、俺の胸元に顔をうずめていた。
美少女三人が、俺と密着した状態になる。しかも、俺を奪おうと揉み合う形になっている。
彼女たちの身体の柔らかい部分が当たって、俺は冷静ではいられなくなった。
この混乱状況を打ち破ったのは、ユキだった。
「こ、こんなハレンチなのは……ダメなんだからっ!」
ユキが涙目で叫び、俺たちはぴたりと動きを止めた。
<あとがき>
新作ラブコメファンタジーもよろしくです!
タイトル:落ちこぼれ魔剣士の調教無双 ~クラスメイトの聖女様たちを奴隷にして、学院最強の英雄へと成り上がる~
URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330654523840846
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