第89話 雨音姉さんにいたずら

 繰り返しになるけれど、雨音姉さんは、Tシャツ一枚しか身に着けていない。下着はブラジャーも、おそらくパンツもはいていない。

 そんな雨音姉さんと、深夜の部屋で二人きり。しかも、雨音姉さんは俺に胸を触れと言っている。


 大学生の雨音姉さんは、女子高生だったときよりも、ずっと大人びた体つきだった。胸もお尻も大きくなっていて……扇情的だった。


 俺の視線に気づいたのか、雨音姉さんが笑う。


「やっぱり、水琴さんや夏帆ちゃんたちよりも大きいでしょう? Gカップはあるんだから」


 俺は思わず、玲衣さんや夏帆のことを思い浮かべる。二人とも女子高生にしては比較的胸が大きい方だと思うけれど、当然、雨音姉さんにはかなわない。ついでに、中学生の琴音は小さい方だ。


 雨音姉さんはにやにやと笑う。


「水琴さんのも、夏帆のも触ったことがあるんだっけ?」


 たしかに……そのとおりだけれど、水琴さんは観覧車で二人きりのときに思わず胸に触れてしまったし、夏帆の胸は風呂場で事故で背後からわしづかみにしてしまったことがある。


「なら、もう慣れたものだよね? まあ、でも、晴人君のことだから、どうせ軽く触れることしかできないでしょうけど」


「どうしてそう思うの?」


「だって、晴人君は意気地なしだもの」


 雨音姉さんはふふっと笑う。俺はちょっとむっとした。自分から胸に触らないと離れないと言っておいて、そんなふうに挑発するなんて……。俺は少し、雨音姉さんを驚かせることにした。


 俺はいきなり、雨音姉さんの胸を正面からわしづかみにした。柔らかくて、張りのある感触。

 雨音姉さんは固まって「へ?」と声を上げ、顔を真っ赤にする。そして、戸惑ったように俺を見つめる。


「晴人くん……何してるの!?」



「雨音姉さんがやれって言ったんじゃないか」


「そうだけど……でも! あっ、やあっ。そんなふうに触られるなんて思ってなくて」


 雨音姉さんはうろたえて、顔を真っ赤にしている。大きな胸が、俺の手の動きにあわせて、形を変え、そのたびに「ひうっ」とか「あうっ」とか雨音姉さんが甘い声であえいでいる。


「さすがGカップ……」


 俺のつぶやきに、雨音姉さんが照れたように目を伏せる。


「晴人君……も、もういいでしょう?」


 たしかにそろそろやめないと、色々と問題がありそうだ。雨音姉さんを驚かせるという目的も達成したし。

 でも、そのとき、俺は自分の手のひらに、小さな突起のようなものがあたっているのに気づいた。シャツ越しとはいえ、胸の真ん中のそれが何なのかは明らかで、雨音姉さんは「あっ」と小さく吐息を漏らす。

 俺は慌てて手を離そうとし、そしてバランスを崩した。そのまま前のめりになる。


「きゃあああっ!」


 雨音姉さんが悲鳴を上げる。次の瞬間、俺は、布団の上の雨音姉さんに馬乗りになる形になっていた。

 事故とはいえ、押し倒したように見えるだろう。


 雨音姉さんは、耳まで真っ赤になっている。けれど、その表情に嫌悪の色はなかった。潤んだ瞳で俺を見つめ、「晴人君……」と小さくつぶやき、そして俺の頬にその唇を触れさせた。


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