第88話 雨音姉さんの柔らかい胸

 雨音姉さんは、Tシャツ一枚のみを着た姿で、俺を抱きしめている。

 今は深夜で、遠見の屋敷の和室で、俺と雨音姉さんは二人きり。


「私をどうする?」


 と雨音姉さんはからかうように、けれど恥ずかしそうに俺にもう一度言った。

 近くには、布団もあって……。さっきまで俺は夏帆と琴音の二人とあそこで寝ていて、二人に抱きつかれ、キスをされていた。


「私ともそういうことをする?」


 雨音姉さんは、俺の耳元に甘い声でそうささやいた。

 風呂上がりなのか、ふわりとした良い香りがして、俺は動揺する。


「そ、そういうことを夏帆たちにさせないために、雨音姉さんがここに来たんじゃ……」


「私は従姉だからいいの」


「それはなんか違う気が……」


「それとも、従姉の私にも、いけないことを感じちゃう?」


 雨音姉さんは俺に胸を押し当てながら、そう言った。

 その柔らかさと温かさにくらりとする。

 ブラジャーつけていないんだっけ……。


 触れ合う部分に、小さな突起のようなものを感じて、俺は狼狽した。

 下半身も密着していて、しかも雨音姉さんはパンツを身に着けていない。


「こんなことして……もし俺が雨音姉さんと間違いを起こしそうになったらどうするの?


「へえ、やっぱり、晴人君、私に欲情しているんだ?」


「し、してない!」


「私の胸、水琴さんよりも夏帆よりも大きいでしょ? 触ってみる?」


 雨音姉さんは、つんつんと自分の胸をつつく。

 ……さすがにおかしい。

 雨音姉さんはいたずら好きだけど、こんなことをする人じゃない。


 そう。普段なら。

 その時初めて、俺は雨音姉さんが酒に酔っていることに気づいた。

 目がとろんとしていて、息遣いが荒い。


「め、珍しいね。雨音さんがこんなに酔うなんて」


「だって……他の子たちに晴人君をとられそうで心配で……」


 雨音さんは上目遣いで俺を見て、そんなことを言う。


「少し前までは、私だけが晴人君と一緒に住んでいて、晴人君と一緒にいるのは私の特権だったのに、今じゃ三人も美少女を侍らせているし……」


「いや、それは誤解で……」


「三人ともとキスしたのに?」


 俺はうっと詰まる。雨音姉さんは寂しそうな目で俺を見る。


「私ともキスしたい?」


「そ、それは……」


「できない?」


 雨音さんの柔らかそうな唇がささやく。相変わらず、雨音姉さんの大きな胸は俺に押し当てられている。

 このままだと本当に雨音姉さんにキスして、そして……その後、どうにかしてしまいそうだ。

 俺は誘惑に耐え、雨音姉さんをまっすぐに見つめる。


「雨音さんは俺の従姉で、姉代わりで、大事な家族だから。そんなこと、できないよ」


「……晴人君の女たらし。そう言ってくれるのは嬉しいけれどね」

 

 雨音姉さんはくすっと笑った。


「キスは諦めるけれど、代わりに胸を触らせてあげる」


「……え?」


「そうしないと離れてあげないんだから」


 雨音姉さんは俺に抱きついたまま、頬を真っ赤に染めて、そう言った。


「胸を触るって……そんなことできるわけないよ」


「本当はしたいくせに」


「そんなことない!」


 思わず言うと、雨音姉さんは傷ついたような顔をした。


「私、魅力ない?」


「いや、そういうわけじゃなくて……」


 じっと雨音姉さんに見つめられ、俺は観念した。


「少しだけなら」


「……やった」


 子供のように雨音姉さんが喜ぶ。流されてしまっていいんだろうか?とも思ったけれど、仕方ない。

 俺はそっと雨音姉さんの胸に手を伸ばし……。



【あとがき】

ラブコメ・ファンタジー『追放された万能魔法剣士は、皇女殿下の師匠となる』もカクヨムに掲載しています! 魔法剣士の青年が、明るく素直な美少女皇女の弟子に大好きと言われたり、巨乳の美人師匠に甘えられたり、幼なじみの優しい聖女に結婚を迫られたり……とラブコメ・ハーレム要素盛りだくさんなので、こちらもぜひ!


https://kakuyomu.jp/works/16816452220057771967


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