第70話(上) お風呂の結末


 どう? と玲衣さんに聞かれたけれど……異常な状況としか言えない。

 二人の同級生の美少女に、風呂場で体を洗われているなんて。


 しかも、俺も玲衣さんも夏帆も、みんなタオル一枚着ていない。

 そのうえ、玲衣さんは正面から、夏帆は背中に胸を押し当てていて、ボディソープでぬるぬるになっている。


「こ、こんなのおかしいよ。玲衣さんも夏帆もそろそろやめたほうが……」


「そんなこと言って……嬉しいくせに。あっ、んっ」


 と夏帆は荒い息遣いでささやき、胸を上下に動かして俺の背中を洗い続けた。

 玲衣さんもうなずき、その大きな胸を俺の胸板にこすりつけている。


 どちらの胸の方が大きいんだろう? としょうもないことを俺は考える。

 そして、二人の胸の感触を思わず比べてしまった。


 その拍子に、下半身にどくんと熱が走る

 まずい…………いろいろと!


 俺は二人から逃れようと思ったけれど、ほぼ同じ瞬間に、玲衣さんは胸を俺に押し当てたまま、俺の唇に自分の唇を重ねた。


「あっ、んっ、ちゅぷっ、んんっ」


 一方の夏帆も俺の耳を軽く甘噛していた。

 このままだと本当にどうにかなりそうなので、俺は立ち上がり、二人を振り払って、逃げようとした。

 ところが夏帆はすぐに俺の後を追ってきて、俺の腕を掴んだ。

 夏帆は不満そうに俺を睨む。

 

「逃げるの、晴人?」

 

「当然だよ!」


 俺は夏帆の腕を振りほどいた。ところがそのはずみに、洗剤のせいで夏帆がつるっとすべってしまった。


「あっ……きゃあああっ」


 悲鳴を上げる夏帆を俺はなんとか夏帆を背後から抱きとめた。

 だけど……。


「は、晴人……」


 夏帆はとても恥ずかしそうに、消え入るような声で、俺の名前をつぶやいた。

 俺はちょうど夏帆の胸を……両手でつかんで、なんとか支える形になっていた。


 つまり、俺は夏帆の胸を背後から揉みしだいているように見えなくもない。

 夏帆の体はとても温かくて……柔らかかった。


「あ、あの……晴人のあそこがあたって……」


 俺も夏帆も素っ裸で、密着したらどうなるかというと……当然、そういう事故も起こるわけで。


「ご、ごめん……」


 俺は慌てて夏帆から離れようとしたが、その弾みに少し手に力を淹れてしまった。大きく柔らかい感触が、俺の指を押し返し、逆に夏帆は「ひゃうんっ」と悲鳴を挙げた。


「そ、そこっ……だめ」

 

 もし玲衣さんが目の前にいなければ、俺は理性が吹き飛んで夏帆の胸を揉みしだいていたかもしれない。


 けど、そうはならなかった。

 俺はなんとか夏帆から離れる。夏帆は荒い息遣いで、でも、こちらを振り向いた。

 胸と下半身を手で隠して、俺と向き合う。

 そして、赤い顔でにやりと笑う。


「晴人の変態」


「あれはわざとじゃなくて……」


「晴人がしたければ……もっと触ってもいいんだよ?」


 と夏帆が言う。

 俺が答える前に夏帆は俺に正面から抱きついた。


 さっきまで手のなかにあった膨らみが、俺の身体に今度は正面から押し当てられる。


 玲衣さんとはまた違った感触で、俺はどうしようもない熱の奔流のような感情に飲まれ、夏帆に手を伸ばしそうになり……。


 そこで、不思議な感覚に襲われた。

 そして、自分がふらつき、視界がゆがむのを感じた。

 姿勢を戻そうとするが、俺はそのまま浴場の床に倒れこんでしまった。

 

 視界が暗転する。


「は、晴人くんっ!?」「晴人っ!?」


 玲衣さんと夏帆の二人の悲鳴を聞きながら、俺は理解した。

 要するに、強すぎる刺激のせいで、俺はのぼせたような状態になったのだ。


 気づいたときには俺は自室の布団に運ばれていた。


 俺の体調には大きな問題はなさそうだったけれど、隣では事情を聞いた雨音姉さんがくすくす笑っていて、玲衣さんと夏帆の二人は仲良く同じように縮こまりながら、「ごめんなさい」と謝っていた。

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