第2話 首が締まる
「やあ!、私はパール・ストックボイス7歳。きれいな女の子が大好きな可愛い女の子だよ?。」
今はママの膝の上で寝てるよ!。
「パールは甘えん坊さんね。」
そう言ってパールの頭を撫でる母親のアロン。
頭ナデナデしてくれるマッマ好き!。
いや~最初からちゃんとした意識が保っていられるのは実にいいことだ。
まあ、行動が制限かつ、2歳まで移動方法がハイハイということはどうしようもないが。
今となっては歩けるようになったし、分厚い本などを持てるくらいの力までつけた。
生まれ変わり魔法が使えると思って猛勉強したが、その努力もむなしく体内に魔力が流れているのが感じるがそれを各属性にして打ち出すことが出来なかった。
だが唯一流し込めることができる道具が一つあった。
剣だ。
まださすがに持ち上げることができなかったが試しに持ってみると電気をまとわすことができた。
神様はまた私に剣を握って戦えというのか、いやだねこの人生ではハーレムを作るのだ!
そう思うと親の膝から起き上がり、「お外にお散歩してきます。」と告げて家を出てきた、この家はどうやら危険なことを除いて放任主義らしい。
しかもこの村、チエン村は人口50人も満たないクソド田舎で20歳以下の子供は・・・・・。
「ダーリアー!!。」
ダリア・マルクエド男の7歳と私の二人しかいない。
何でも農業系の職を除いて他の男共はほぼ都の兵士として駆り出されていき女は城の召使いおかげで田舎の過疎化は加速していく一方らしい。
しかもこの15年から急に始めたとか、15年前といえば私が処刑された時期とちょうど被る。
たぶん魔王と勇者の裏切りという脅威が取り除かれたからだろう、国はついにほかの国にまで手を出し始めていき独占、魔王がテリトリーという名目で守ってきた獣人を捕獲、奴隷にすることまでし始めた。
王がいなくなった魔王の国は数年間もはや無法地帯と化し魔王の体を人がひとかけらも残さず国々で分けたらしい。
勇者が持ってきた頭をのぞいて。
頭だけは勇者を殺し、いま私が住んでいる村が所属するテリトリーの所有する王国、クガン帝国が所有している。
なんだか魔王の体は色々な能力があり、その力を均等に配分するために人間の国の中でバラバラにして分けたそうだ。
実に腹立たしい。それではまるで魔人族や獣人、亜人は権利がないではないか。
その通り、魔人族や獣人、亜人は権利がない。今となっては暗黙の了解であった獣人の奴隷化、魔人族の肉を食えば魔法が使えるようになるといわれてたうわさも今はないほど狩られ、人間の性欲の捌け口にされ、最低限の残飯しか与えず金になる肉袋としか思っていないのではないかと思うくらい悲惨な状況になっていた。
父に都に連れて行ってもらったときにはもうそんな状況になっていた。
先ほど腹立たしいと言っていたが一番腹立たしいのは国王でもなく人間でもなくこの事態を招き起こした自分自身だ。
そんな自分が憎くて仕方がない。
「おい、そっちから声を掛けてきておいて無視かい。」
「あ?、ごめ………ちょっと待て、なんでそんなに離れているんだ。」
「?、だって返答しても返ってこないから。」
「だからって20メートルも離れることは無いだろ!。」
そう、このダリア・マルクエド、頭が良く、小さい頃から魔法が使えるという天才児であるが、そのかわり少し周りと価値観が違うのだ。
「というかなぜ声を掛けてきたんだ?。」
「なぜって遊ぶためだろ?。」
「そっか、じゃあ行こう。」
………こういうところだ。
「ファイヤーボール。」
ダリアがそう呟いた瞬間に杖の先端から火の玉から生成され打ち出される。
すると、目の前の大岩に触れた瞬間大爆発した。
30メートルくらい離れているのに爆風がここまで押し寄せてくる。
普通はここまで大きい爆発しないんだけどなぁ。
このファイアボールは初級魔法の中でもかなり使いやすい魔法となっている、まあその魔法も生前も今も私は使えないんだけどね。
「ウォーターショット。」
ダリアがまた呪文を言うと、杖の先から水が放出される。
この威力は高圧洗浄機の強化版である。
普通のウォーターショットは水風船くらいの水の塊を打ち出す魔法だが、あれは中級魔法ぐらいの威力だ。
しかも魔法は普通は詠唱しないと出ないものだ、だがダリアは無詠唱で出せる。
これも才能だろうか?。
「やっぱりすごいなぁダリアは、私は魔法が使えなくてすごく困っているのに。」
そうやってぼやくと、ダリアがムスッとした顔で言ってくる。
「何を言っているんだ君は、木の枝で大岩を切断しておいて絶対的に君の方が神業をなしてると思うが。」
「いや、これは剣が持てないだけでその急拵えだから……。」
パールが目を逸らして言い訳を漏らすとダリアはすかさず食い気味で言ってきた。
「魔法も無しに木の枝だけで大岩を断ち切るなんて見たことないぞ!?。」
ん?
「ん?、まるでダリアは昔から生きてたような口ぶりをするね!。」
パールが何も考えずにそう言うと普段澄まし顔をしているダリアは珍しく動揺していた。
「すまない、いい間違えた、文献を読んでただけだ。」
パールが顔を覗くとすごく目が泳いでいる、もしかして転生者かな?。
「もしかして、転生者?。」
「…………………うん。」
ダリアは長い沈黙の後にコクリと頷く。
「え!、前世はどんなだったの!?、人間!、亜人?、それとも魔族!?。」
返答したと思ったらグイグイくるパール。
「……………。」
「や、やだなぁ〜、別に魔王とかじゃない限りそんな驚かないって〜ははははははははは!!。」
「……………。」
「はははははは……………マジ?。」
パールの無理な笑いで作った口角がだんだん下がっていき、パールの「マジ?」にダリアが何とも言えない顔でコクリと頷く。
「……………、あの!、僕は前世は魔王でした、でも!もう人間だから別に人間を襲ったりしないから!。」
「必死なところ申し訳ないんだけど、私転生者で前世が勇者なんだけど………。」
パールが頬を人差し指でぽりぽり掻きながらサラッと言う。
「!?!?。」
今言われた事実と今さっきの自分の必死の弁明を知り合いに聞かれたダリアの顔は見たことないくらい真っ赤っかになっていた。
「…………ドンマイ♪。」
「ドンマイで済むかーー!!。」
パールがかかる言葉なく、とりあえず放ったドンマイを半ギレ状態で言い返すダリア。
ギャーギャー2人で言い合っていると、ふと2人とも口を止める。
だがギャーギャー声がする。
「人かな?。」
「魔物ではないだろうな。」
この村には周りに一定距離に村を囲うように魔物を寄せ付けない石、浄魔石が設置されていて設置されてから数十年魔物が入ってきた記録がない。
草むらから聞こえる声は何とも言えないぐちゃぐちゃな女性の声がする。
2人は顔を見合わせて目線で意思疎通を図る。
恐る恐る進みながらパールは木の枝を、ダリアは自前の杖を腰から抜く。
2人の間に緊張が走る。
三メートルぐらいまで近づくと、草むらから細い腕と手が出てきた。
なーんだ、心配して損した。
「怪我人だ、ダリア話は後にしてとりあえず助けよう。」
そう言って前に突き出していた木の枝を下ろしてこちらへ振り返るパール。
ああ、そうだな。
そう言おうとしたダリアの目に写ったのは一瞬で草むらから六本生えてきた手だった。
「パール離れろ!!。」
首だけで振り返っているパールの首根っこをダリアは掴み思いっきりこちら側に引き込む。
「グェーーー!!。」
一気に首が締められて変な声が出るパール。
「ゴホゴホ、何するんだ!、流石に器がでかい私でもおこ…る…………ぞ……。」
「どうやらそんな冗談を言っている暇はなさそうだ。」
段々と草むらから全体像が露わになっていく。
人の頭が二つに腕六本、後の胴体に足二本の四足歩行の魔物、いや、怪物だ。
「ダリア、見たことあるか?。」
「いや、こんな歪な魔物なんて見たことない。」
長年生きてきた魔王のダリアでさえも見たことない魔物、新種?、こんなここ最近で生まれるものなのか?いや、今は。
「じゃあ、今やることは一つだな。」
「ああ、単純明快、逃げる、だ。」
ダリアが言い終える瞬間に2人とも魔物とは反対方向に振り向いて全力疾走で逃げた。
一度世界転移したあと王様に殺され同じ世界に転生した元勇者が次は魔王の宝探しを始めます バリウム @bariumu
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