第5話 恋人の後悔

side.saku





京司が扉の前にまで来て、反省してるって言ってくれてる




けど、何に!?



きっと、あいつのことだからわかってない…。





わかってないんだったら

今までと同じだもん…





「はあぁ~、もう…どうないせえっていうねん…。」






京司の悲しみとも怒りともとれない

ため息混じりの声が聞こえて

ちょっと心がざわつく。





呆れられたかな?



「…っきょぅ…」



ああ、行っちゃった。






不安になって思わず出掛けた声

扉の前から離れたことに気付き口を噤んだ





ガサゴソ、ガサゴソ

ドンッ!



玄関のドアが勢いよく閉まった音…





えっ?……





もしかして、

京司、、怒って出てった?




うそ、、まずい





ほんとは喧嘩なんかしたいわけじゃないよ…

どうして、こうなっちゃうんだろう…



もう、おれあほだ…





なんか、また泣けてきた



苦しい、自分から怒ったのに

ちゃんと話し合えばよかった




一緒に暮らさなければよかった

なんて、少しも思ってないのに…

1度だって思ったことないよ。




「言わなければよかった…」




今になって口から出た言葉は、

誰の耳にも届かないのに







1時間ほどたった、ドアが開いた気配はない




リビングにいっても

やっぱり京司の姿はない。





どこまで行ってんだろ…




京司が怒って飛び出していくなんて

初めてのことだから


怒ってた気持ちもどっかいって

もう不安と心配に心が支配される





電話、かけてみようかな…



prrrrr.prrrrr.


タンタッタタンタラランラン~♪





静かだった部屋に軽快な着信音が鳴り響く


紛れもなくさっき出てった本人のもの





「あの阿呆、こんなときまで

忘れていくなよ…」






阿呆はおれか。




自分の情けなさ


こんな時でもちょっと抜けてる彼への愛しさ


その彼がいない不安が一気に込み上げてきて、

溢れる想いがまた頬を濡らした。


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