第10話 解決編

 夕夜が食堂を早足に抜け、大砂時計のあるエントランスの階段に足をかけた時、甲高い悲鳴が聞こえてきた。

 彼は小さく舌打ちし、さらに足を早めた。歩きながらも、何かを確かめるように彼の右手は大砂時計のガラスを軽く叩きながら階段を登っていく。そのガラスからは重い音が返ってくる。だがその反響は、三階の半ば辺りから軽い音に変化し、夕夜は眉をしかめた。

 先ほどから聞こえている甲高い悲鳴は上階から断続的に響き、更に秤のものと思われる怒声が併せて聞こえていた。夕夜は面倒だと言わんばかりにため息をつきながら、階段を上った。

「マリーアントワネットをどこに隠した! 絶対にどこかにあるはずだ!」

「そんな物は知りませんわ! 貴方こそ、原始の砂時計をどこにやったのですか! あれは貴方のような下賤の者が手にして良い物では無いのです」

「黙れこの女狐が! その怪しい宗教かぶれでどれだけ騙してきたんだ? 俺は砂時計なんぞどうでも良いんだよ! マリーアントワネットは絶対にこの館にある。宗善の奴はここのどこかに隠したんだ! 奴の部屋にも、あの忌々しい娘どもの部屋にもない、コレクションルームにも無い。お前が盗んだんだろ!」

「主の部屋だけではなく、その子女の部屋まで無断で暴いておいて、よくもまあ人を盗人呼ばわり出来るものですわね。恥を知りなさい! 貴方には無限地獄がお似合いですわ」

 夕夜が踊り場に着くと、宗善の部屋の前で、包丁を手にした秤がエティアに詰め寄っていた。エティアは護身のために持ってきたのかスタンドライトを持っており、どこかを殴りつけたのか、その傘の部分と中の電球は砕けている。二人の足下には削られた壁材やガラス片が散乱していた。

 夕夜は修羅場に歩み寄ると、手にしていたガラスのコップを力一杯壁に投げつけた。破壊的な音が響き渡り、秤とエティアは弾かれたように夕夜の方を振り向く。

「四人を殺害した犯人が分かった。ついでにお前達の探している物の在処もな。黙って俺に付いて来い」

「何! どこだ! マリーアントワネットはどこにあるんだ!」

「怪しいですわね。そうやって私たちを罠に填めるつもりじゃないのかしら?」

「知りたくないなら好きにしろ。家捜しでも殺し合いでも続けてろ。俺は別にそれでも構わない。俺は頼まれ事を片付けるだけだ」

 夕夜はそう告げると踵を返す。

「だが、この機会を逃せばお前達の求める物は永久に手には入らないかも知れないがな。十二時までに祈祷室に来い」

 その一言を残し、彼は立ち去った。残された野村とエティアは互いを睨みつつ、夕夜の姿が階段へと消えていくまで沈黙していた。

 やがて、秤が動きだし、壁に背を付けつつ、エティアに包丁を向けたまま夕夜の後を追う。エティアはそれを立ったまま見送った。彼女は唇を強く噛みしめ、そこからは一筋の血が細い顎へと赤い跡を残していった。


 夕夜は祈祷室の入り口に着くと、直ぐに『洗浄』を受け室内の扉を開けた。中から吹き込む風が彼の髪を乱し、前髪がその顔面を打つ。

 鉄の扉を押し開くと、彼は室内には踏入らず、目を細めてその場から砂漠を見渡した。彼が狩羽の体を掘り起こしたために荒れていた入口付近の砂は、扉の可動により表面が均されている。扉から離れた所では、流れるような風紋が一面に広がっていた。砂嵐のために対岸は霞んで見渡すことが出来ないが、辛うじて中央に立つクロノス像が視認できた。

 夕夜が部屋を出ると、野村と小夜が到着していた。二人は何も言わず、中から出てきた夕夜を揺れる瞳で見つめる。夕夜は腕時計に視線を落とし、焦っているのか足のつま先で小刻みに床を叩いていた。

 十一時五十分――秤が現れた。血走った目を他の者たちに向け、荒い息を吐いている。精神が壊れかけているその姿に、小夜は息をのむ。野村は彼の右手にある包丁を見ると、小夜の身体を秤から隠した。

 十一時五十三分――この館で生き残っている最後の人物、エティアが階段からゆっくりと歩いてくる。その髪は解れ、両腕をだらりと垂らしたまま身体を左右に揺らしている姿は鬼女を連想させた。

 身体が震え出しそうな程に冷え切った空気の中、夕夜はその場の視線を一身に浴びていた。恐怖と狂気に満たされた視線にも動じる様子はない。

 この館で起きた四人の殺人について、解決編の幕が上がる。

「全員揃ったな。これから時津方宗善、時津方葵、時津方奏そして狩羽氏を殺害した犯人を暴く。質問は最後にまとめて受け付ける。はじめにそれぞれの犯行における問題点の共有、次いで不可能犯罪と考えられた犯行を可能にしたトリックについて実験を行って確かめる。そして最後に結論を出す、すなわち犯人を特定するという流れて進める」

 夕夜は、学会で研究内容をプレゼンテーションするかのように語り出した。

「ちょっと待て小僧。お前、犯人が分かったってことか?」

「そうだ。繰り返すが質問は最後にまとめて受け付ける。マリーアントワネットの懐中時計の在処についてもな。とりあえず黙って聞いて貰おう」

 勢い込んで訪ねる秤を、夕夜は軽くあしらう。秤は夕夜が発した懐中時計という言葉に、とりあえず彼の話を聞くことにしたようだ。むっつりと押し黙り、夕夜の正面で腕を組んだ。

 秤の背後では、他の者達に驚愕が広がっていた。エティアをはじめ、小夜や野村も質問に口を開きかけたが、夕夜の一瞥で黙り込む。 

「まずは問題点の共有からだ。第一の殺人、時津方宗善の死体発見時の状況において、自殺であると判断した理由は何であったか」

「それは足跡が往きの分しか、しかも宗善様のものと思われる足跡だけしか無かったからです」

 小夜が控えめに手を挙げつつ答えると、夕夜は頷いた。

「そう。この部屋の入り口から死体のあったクロノス像の足下まで、足跡は一筋のみ。つまり片道分であったと考えられたことから、宗善氏は自殺と判断された。続いて、時津方葵だ。これは足跡が全く残されていなかったことが問題だった。狩羽氏が見積もった、彼女の足跡が消えるまでにかかる時間は約八時間。葵氏の死亡時刻は死体発見時から八時間以上前、すなわち二十三時以前ということになる。その時、ここにいる全員、奏氏と狩羽氏も含め、全ての人間が遊戯室で顔を合わせていたため、外部からの侵入者が疑われた」

 夕夜はそこで、狩羽の死体が握りしめていたルーペを取り出した。それを手のひらで転がしながら言葉を続ける。

「次に狩羽氏のケースだ。ここでは全員が固まって行動していたにもかかわらず、忽然と死体が砂に埋められていた。正午前には死体が無いことが確認されており、その後は全員で行動を共にしていたが、正午の『チャイム』に再度この部屋を訪れた際には、首から下が砂に埋められた死体があった。これも外部犯が疑われるが、捜索の結果、その可能性は否定されている。最後は、時津方奏の毒殺。これは衆人環視の中でどうやって毒を盛ったのかが問題だ。さて」

 夕夜は祈祷室の砂漠に足を踏み出す。他の者たちも自然とそれに習い、砂の吹き荒れる室内に入った。

「以上で問題点が整理されたが、何故これらはそもそも問題なのか。まず、宗善氏と葵氏の問題点は、足跡が消えるのに要する時間が前提とされている。もし数分で足跡が消えるのであれば、宗善氏と一緒に入室し、その足跡が消えた後に犯人だけ後ろ向きに歩いて出れば同様の状況となる。足跡がどちら向きに歩いたものであるか、素人では判断がつかないからな。また、葵氏は各自が遊戯室から引き上げた後に殺害しても良いことになる」

「それはそうですけど。でも実際には、そんな直ぐには消えないじゃないですか。実際、そこには今朝の足跡がまだ残ってますよ」

 小夜が反論すると、夕夜は頷きつつ向き直り、それをこれから実験で確かめると告げた。

 彼は身を屈め、足下の砂を手で掻くと数センチほどの穴を掘った。その穴の底に持っていた狩羽のルーペを置き、上に砂を被せて埋める。そして腕時計に視線を落とす。彼の腕時計はまさに正午を示すところだった。

「さて、間もなく『チャイム』が鳴る。これまではその大音量に部屋を出たり、あるいは近づかなかったりしていた訳だが、今回は全員でここに留まって貰う」

「……!」

 誰かの息を飲む気配がしたが、それは室内に鳴り響いた『チャイム』の音にかき消された。本能的に耳を塞いでしまうほどの音が空気を激しく揺らし、皆が自然と身を屈める。彼らの足下では砂粒が小刻みに振動し、それは小さく、時には跳躍するように大きく移動している。そこに規則性を見出すことは出来ないが、無数の砂粒の挙動はやがて、砂面に菱形のタイルを貼り合わせたような幾何学的な文様を作り出していく。

 数分間に渡り鳴り響いた音が消えると、エティアはおそるおそる耳から手を離し、屈めていた身を起こした。そして、一変した周囲の光景に目を見開いた。

「あ、足跡が、消えましたわ」

「なんなんだこれは。どういう事だ?」

 これまで殺気立っていたエティアと秤は、毒気が抜かれたような様子でつぶやいている。夕夜だけは落ち着き払っており、何事もなかったかのように解説をはじめた。

「狩羽氏の見立てに間違いは無かったのだろう。確かに砂に残された足跡が、室内に吹く風の影響で消えるには十時間ほど要するはずだ。しかし、それ以外にも今起こったように『チャイム』による音の振動により砂が動かされ、僅か数分で足跡は消える」

 彼らが立っている周囲には、入り口から歩いてきた彼ら自身の足跡すれ消え、平らにならされ、幾何学的な文様が埋め尽くしていた。

「この現象の直後では、砂面に描かれる風紋はこのように二直線が交差した文様となる。これは風によって次第に変化していき、さざ波のような文様へと変化していく。宗善氏と葵氏の死体発見時には、砂面の風紋はさざ波の文様であり、狩羽氏の発見時には今と同じく菱形の文様が描かれていたのはこのためだ」

「夕夜さん、そんなところまで覚えてるんですか。私、砂漠の模様なんて見てませんでした」

 小夜の言葉に、秤とエティアも首肯し、同意を示している。

「これでご主人様と葵さんの足跡については分かりました。『チャイム』は正午と深夜十二時に鳴りますから、ご主人様は夜の『チャイム』の前に犯人と部屋に入って、鳴り終わってから犯人だけ出て行ったと。葵さんも遊戯室で全員が集まっている間じゃなくて、夜の『チャイム』の前までに殺害されて、犯人は音が鳴り始める前に部屋を出て行ったから足跡が無くなったという事だったんですね。けど、狩羽さんの件については?」

 夕夜は全員の視線が集まったことを確認しつつ、自らの足下を示した。

「『チャイム』の振動では、こういった現象が起こる」

 彼の足下には、先ほど埋めたルーペが砂の上に現れていた。

「それは、さっき夕夜さんが埋めてたやつですか? チャイムが鳴ってる間に掘り起こした、訳じゃないですよね?」

「違う。物理現象の結果だ。砂粒の中にそれよりも密度の高い物体が埋まっている時、そこに振動を加えるとその物体が表面に浮かび上がる。水中ではより密度の重い物体は沈むという現象は、日常的な感覚だろう。しかし砂粒の場合は、重いものが上へと浮かび上がるという、常識と間逆の現象が起きる」

 聞いている者達は、彼の説明に首をひねっている。夕夜は噛んで含めるように、ゆっくりとした口調になった。

「狩羽氏の死体は正午前、全員で行動を始める前に既に埋められていた。その時は埋設の利便性から、地面に横たわる姿勢であったと思われる。土ではなく砂だからな、スコップ1本あれば数分で終わったことだろう。そして正午の『チャイム』が鳴ると、周囲の砂粒より密度が高い、人間の身体で最も重い部位である頭部だけ砂面上に浮き上がり、その他の部位は逆に沈んでいくことで直立の姿勢となった。宗善氏と葵氏の死体がこの部屋の中央、石像の足下にあったのに対し、狩羽氏の死体は入り口の近くにあったのは、砂を掘り返した跡を判別しにくくするためだろう。入り口付近は踏み荒らされているからな。死体を埋めた後に、その上を適当に歩き回れば一瞥では分からない。そして死体に近づく者たちの足跡で痕跡は完全に分からなくなる。刈羽氏がこのルーペを死の間際に握りしめたのは、砂の特性が事件解明の鍵であると知らせるためであったのかもしれない」

 狩羽の首に残された跡から、彼の死因は扼殺であったのであろう。通常、首を絞められればそれを解こうとして腕は喉に巻かれた物を排除しようとする。その時、被害者の手は握りしめている状態でなく、自らの首を掻き毟るような形になる。

 だが、刈羽の手は強く握り込まれており、犯人も短時間でそれをほどく事を諦めざるを得なかったのだろう。

「また、より密度の高い物が浮かび上がり分離するというメカニズムは、最後の奏氏の殺人にも通じている。では、その現場となった食堂に移動するとしよう」

 夕夜を先頭にして、祈祷室から出て行く。一切の乱れが無かった砂漠に5人の足跡が刻まれていった。彼の解説と実験の結果が衝撃的であったのか、黙って彼の後に従う。

 小夜は小走りに夕夜の背に近づき、話しかけた。

「夕夜さん、知ってたんですか?」

「何を?」

 夕夜は半歩後ろに付いた小夜をちらりと見ると、視線を前に戻す。その端正ではあるが冷め切った横顔を、小夜は熱心に見つめた。

「さっき話してた砂の性質ですよ。振動で足跡が消えるとか、重いものが浮かび上がってくるとか」

「知識として持ってはいなかった。だが、これまでの事象を俯瞰して眺めれば、砂にそういった性質があると仮定すれば簡潔に説明できる」

「それだけで、あんなに自信満々に話してたんですか?」

「その仮定が最も美しかったからな」

「美しい、ですか」

「この世界に起こる事象は決して無秩序ではなく、『鍵』となる単純な法則に従っている。だがそれは現実世界の多数の要素に覆われてしまっている。隠れた『鍵』を見つけるために頼れるのは感性、その仮説を美しいと感じるか否か、それだけだ。美しい仮説は往々にして正しい」

 小夜は、そういうものですか、と首をひねっている。

「寧ろ逆かもしれない。この時空間に生きているからこそ、そこにある『鍵』を美しいと感じるのだろう」

 小夜は益々首を斜めにしたが、夕夜は肩を竦めるだけだった。

 大砂時計の周囲を回る階段を一列になって降り、一行は食堂へと移動した。無人の食卓に残されたコーヒーカップは、床に横たわる奏の死体とその死に様を連想させるのか、夕夜に続いて入室した四人はそれに目を向けないようにしている。

 夕夜だけは無頓着に、自らの飲んでいたカップを手に取る。彼がそれを手に取る瞬間、小夜は小さく肩をびくつかせた。

「最後の殺人はここで、全員の目の前で行われた。葵氏の症状は身体の極度の痙攣。それは手足はもとより、胃の内容物を吐瀉していたことから内蔵にまで及んでいたと思われる。そこから用いられた毒物はテトラドトキシンではないかと推測している。テトラドトキシンの致死量は一から二ミリグラム、体内に接種されるとナトリウムチャンネルを阻害し、神経系および筋肉系が麻痺し死に至る」

 夕夜はシーツのかけられた葵の死体の傍らで立ち止まると、解説を始めた。他の者たちは遠巻きにしている。夕夜の言葉に、エティアが質問を発した。

「そんな危ないもの、犯人はどうやって手に入れたんですの?」

「テトラドトキシンはふぐ毒の主成分だ。入手するのは困難ではあるだろうが、不可能ではない。ここでの問題は、それをどうやって葵に飲ませたかだ。死亡時の状況から、彼女のコーヒーに混入されたと見られるが、全員の目がある中でどうやって混ぜたのか」

 夕夜はエティアに問いかける。エティアは首を横に振り、分かりませんわ、と答えた。夕夜は他の面々にも視線で問いかけるが、皆同じく首を振る。

「そう言えば夕夜さんがさっき、狩羽さんの死体が首だけ出ていたメカニズムがどうとか行ってましたけど」

「そうだ。ここでも砂の、粉粒体の性質が利用された。狩羽の死体は、砂の中に密度の高い物を入れて振動を与えると、それが浮かび上がるというメカニズムで説明できる。それは逆に言えば、砂よりも密度の低い物は振動によって沈むということだ。砂糖の主成分であるスクロースの密度は1.587であるが、テトラドトキシンの密度は詳細なデータが無いが、その分子式と構造からスクロースよりも低い」

「あっ! もしかして、さっきそこに散らばってる砂糖に近寄るなって言ったのは……」

「ああ。その砂糖壷の中には、砂糖と毒物が混合されていた。葵氏はそこから砂糖と思って毒を掬い、自らの手でコーヒーに入れた」

「でも、砂糖を入れたのは葵さんだけじゃないですよ?」

「その通りだ。彼女の前にも、エティアが砂糖を入れ、そして彼女の後にも俺が砂糖を掬っている。同じ砂糖壷からだ。しかし、決定的な違いは彼女以外は砂糖壷の表面を掬っていることだ。一般的な人間は、砂糖壷の表面を掬って入れる。だが、彼女は匙を深くまで差し入れるという癖があった」

 夕夜の言葉に、秤が感心したように何度も頷いている。

「そう言われれば、彼女はいつも砂糖を掬うときにジャリって音を立ててたな」

「でも、すごく微量で死んじゃうような毒なんですよね? 奏さんがそうやって掬った後って、かき混ぜられて次に使う人にも間違って入っちゃうんじゃないですか?」

「彼女が使った後、また直ぐに振るんだ。そうすればまた軽い毒の粉末は底に沈む。俺がここに来た日、お前自身が言っていたな。この砂糖は直ぐに固まってしまうから振っている、と」

「あっ! でもそれは」

「実際に固まるかどうかは関係ない。犯人はそれが日常に、誰も気に留めない状況にした、あるいはなっていることを利用した。さて、奏氏が砂糖を掬った後、俺が使用する前に砂糖壷を手にし、激しく振ったのは誰だったか」

 夕夜は言葉を切り、ゆっくりと野村へ顔を向けた。夕夜の視線につられ、全員が野村を見つめる。

 野村は蒼い顔を伏せ、何も語らず体を震えさせていた。

 沈黙が続き、秤が野村を問いつめようと身を乗り出すが、夕夜はそれを手で遮る。夕夜が再び口を開こうとした時、野村は重たい頭を上げた。

「……私、です。ですが、私は毒が入っているなんて知りませんでした。他の殺人についても、私は犯人ではありません」

「しらを切るつもりか! どうせ復讐のつもりだったんだろ? お前の女房は」

「違います! 私はやっていない」

 秤の言葉を遮り、野村は強く否定した。充血した瞳で睨みつける秤を、野村は肝の据わった目で見つめ返している。

 二人のにらみ合いを無視し、夕夜が口を挟む。

「そうか。そろそろ警察が到着するからな。後は彼らが捜査するだろう。だが、それを待つことはできない。ここから直ぐに出て行くから、玄関の鍵を開けてもらおうか。いや、玄関の鍵を貸してくれ」

「それは!」

 右手を差し出した夕夜から、野村は慌てて後ずさる。

 野村は、不振そうに見ている秤とエティアに視線を投げると、観念したように両手を脇に降ろした。

「貴方は全てお見通しなのですね。私が、四人を殺しました」

 彼を詰ろうと秤とエティアが何か言い出すより前に、野村は言葉を続けた。

「そして、秤さんとエティアさんの探し物は恐らく祈祷室にあるでしょう。普通の盗人は一見して何も無い部屋に、足跡を付けて回ってまで家捜ししないでしょうし、チャイムという騒音がある。あの部屋は何か大事な物を隠すのに最適な場所ですからね。さあ、迷っていると警察が到着しますよ。お二人の求めるものに出会えるのは、今しかないでしょう」

 野村の言葉に、秤とエティアは一瞬だけ視線を交わし、次の瞬間には身を翻して駆けだした。二人の足が床を強く打つ鈍い音が、食堂に慌ただしく響きわたる。

 走り出した彼らに対して夕夜は舌打ちし、制止の言葉をかけるが、どちらも聞く耳を持たずに食堂から出て行った。

「阿呆どもが! 死にたいのか!」

 夕夜は珍しく焦ったように毒づき、追いかけようとするが、その手を野村が掴んで止めた。

 夕夜が顔を向けると、野村は揺るぎ無い意思の込められた目で彼の瞳を見つめていた。その表情に何を感じたのか、夕夜は眉を寄せた。

「私が行きます!」

 動きを止めた夕夜に代わり、小夜が食堂を飛び出していく。

 夕夜は野村から視線を外し小夜を止めようとしたが、彼女はスカートの裾を摘みながら、机の脇を猫のようにすり抜け、部屋を出て行った。

「あれは利発な子です。きっと大丈夫、上手くやるでしょう」

 小夜を見送る野村の顔には、これでようやく肩の荷が降りるといった、安堵の表情が浮かんでいた。

「そうだな」

 夕夜は体から力を抜いた。それを見て、野村は彼の腕を掴んでいた手を離す。

「時間がありません。貴方は全部分かっていらっしゃるようですが、今から全てをお話します」

「それは警察にやってくれ。殺人の動機だろうが手順だろうが、俺は興味がない。まずは外に出るのが先決だ」

「私は出るわけには行きません。自らのエゴのために、関係のない人まで殺しました。その罪を償います」

「どうやって償うかは裁判官が決めることだ。まずは警察に全てを話すことが、貴方の償いの第一歩だろう」

「そうでしょうか? 人の命は地球よりも重いと言います。死を持って贖ってもまだ足りないでしょう」

「地球よりも重い、か。じゃあ、どれくらい重いんだ? 地球の質量の何倍なんだ? それは人によって違うのか?」

「そうですね。無限、ではないでしょうか。貴方の命は地球何個分の価値です、と言われてもピンと来ません。命の価値は無限と言われた方が、腑に落ちます。そして、それは誰しも平等なのでしょう。私にとっては殺したい、実際に殺してしまうほどに憎んでいた相手ですら、ね」

「その心は清いのかもしれないが、間違っている。無限は何倍しようと無限でしかない。それは『ヒルベルトの無限ホテル』のパラドックスで簡単に理解できる。つまり、命の価値とやらが無限ならば、四人だろうが全人類だろうが、一人の命と同じ価値でしかない。命は地球よりも重いという言葉は、命を大切にしろという意味でしかない。それは自らの命も含めて、だ」

 真剣な表情で語る夕夜に、野村は優しい微笑みを浮かべた。

「そう、なのでしょうか。私は無学なので分かりませんが、貴方のように頭の良い方が言うのであれば、私の考えは間違っているのでしょう。では、命の価値は無限ではないのですか?」

「有限であれば、誰かが値踏みする必要がある。それが合っているか誰にも分からないだろうが、とりあえず今の社会では、裁判にかけて貰えばいい」

「なるほど。貴方は本当に優しい方だ。分かりました。ここから出ましょう」

 野村は鍵を掲げ、夕夜を促した。二人は揃って食堂を後にし、ホールにある正面入り口の扉を出た。

 扉が閉まり、『洗浄』が始まる。風が激しく吹き付け、髪や服がはためく。

 密閉された室内には強風を生み出すファンの音が耳を覆いたくなるほどの音量で轟くが、夕夜も野村も微動だにせず、風も音も感じていないかのようであった。

 ファンの回転が緩やかになり、ゆっくりと停止した。それを待って、野村は外へと通じる扉に向かい、鍵を差し込んだ。ガシャリと音を立てて、施錠が解除される。

 野村は扉に手をかけたが、開き始めた途中で手を降ろし、後ろに立っている夕夜に向き直った。

「申し訳ありませんが、ここで少し私の話を聞いていただけませんでしょうか。どうしても、この館で懺悔しておきたいのです」

「好きにすれば良い。だが時間が来たら、続きは外に出てからにして貰うぞ」

「ありがとうございます」

 野村はその場に膝をつき、頭を垂れた。夕夜の顔には哀れみも侮蔑も無く、ただ黙して彼の言葉を待つ。それはまるで、教会で懺悔する信者と、その言葉を包み込む神父の姿であった。

「私の犯行を告白いたします。最初は宗善です。三日前になりますが、今でもついさっきの事のようにこの手の感触を思い出せます」

 野村の罪は三日前の夜、深夜十二時時を回る前から始まった。

 深夜の祈祷室。そこで宗善は日課である礼拝を行っていた。彼はクロノスの石像に膝まずき、一心不乱に何かを祈っていた。

 彼が祈祷を終え、石像に隠されたスイッチに手を伸ばした時、野村はその背後から覆い被さるように抱きついた。野村の手には、入念に研がれた黒い刃物。宗善の腹部に滑り込んでいくナイフの刃先は、あっけないほどに抵抗が無く、するりと根元まで埋まった。

「宗善は何が起きたのか分からなかったようでした。驚いたような顔で、自分の腹に刺さったナイフを見ていた。そこで『チャイム』が鳴り出しましたが、その音ももはや聞こえていない様子でした。そして、私を振り向くことなく死にました。私はしばらくの間、彼の死体を前に呆然としていたように思います。これまでずっと計画を練り、彼への憎悪を募らせ、決心を固めたつもりでしたが、遂に始めてしまったことを後悔しました。涙すら流していたかもしれません。その時も、そして今も、彼を殺したことで達成感やすっきりとした気持ちは全くありません。これは神に誓います。気がつくといつのまにか『チャイム』は鳴り止んでおり、私はどうにか体を動かせるだけの思考が戻りました。自殺として見えるように、彼を石像の足下に横たえました」

「宗善氏は、クロノス像に何を祈っていたんだ?」

「それは分かりません。ですが、希に周囲に漏らす話から、原始の砂時計の再来を祈っていたのではないかと思います」

「エティア氏が欲している砂時計か。秤氏は、ただの古い砂時計だと言っていたが」

「私は見たことはありません。その砂時計は、世界の分岐点に現れると言われているとか。私にはどういう意味かも分かりませんが、原始の砂時計は、一時期彼の前に現れて莫大な富をもたらし、そして消えたようです。宗善は再びその古い砂時計を目にすることを願っていたのかもしれません。いずれにしても、祈りとは別に彼にはクロノス像の下に行かねばならない理由がありました」

 宗善を殺めた次の夜、野村は葵を礼拝堂に呼び出した。彼は葵に、宗善の習慣を継ぐように要請した。クロノス像に隠されたスイッチについて説明するため一人で来て欲しいと言うと、葵は疑いもせずに野村に従った。そのスイッチは石像の下に埋め込まれている砂の昇降機を動かし、流れ落ちた砂を引き上げるものであった。

 野村は『チャイム』が鳴る前にクロノス像に葵を案内し、石像の足下にあるスイッチを示した。そこを押すように指示を出し、彼女が身を屈めたところで、背後からその首にナイフを突き立てた。彼女が動きを止めた後、自らが血を浴びないように注意しながらナイフを引き抜き、更にナイフを振るって石像の足下を血の海とすることで、明らかに他殺と分かる状況を作り上げた。そして『チャイム』が鳴る前に礼拝堂を出た。

「彼女に恨みはありませんでした。しかし、私は計画を完了させなければならない。そのために、何度もナイフを振り下ろし、死体を傷つけた。始めはナイフが肉を切り裂く感触に吐き気を覚えるほどでしたが、何度も繰り返すうち、ただ肉を下処理しているだけのように、何も感じなくなっていきました。作業を終えて立ち去る前に彼女の死に顔を見た時、私は自分が恐ろしくなった。執拗に切りつけられた死体は、狂気の沙汰でした。私は狂っているのだという証拠でした。それでも、私は計画を止める訳にはいかない。どうしてもやり遂げる必要がありました」

 次は昨日の昼。葵の死体が発見され、館内の捜索が空振りに終わった後、狩羽を礼拝堂に呼び出した。

 野村が狩羽の部屋を訪れ、『チャイム』の前後で風紋が違う気がすると告げると、彼は『チャイム』前の風紋を確認するために直ぐに部屋を飛び出していった。共に礼拝堂に入り、入り口から風紋の違いを説明すると、狩羽はその場で砂の表面を子細に観察するように身を屈めた。野村の存在を忘れたように熱心に顔を砂に近づけているその首を、背後から細いひもで絞殺した。

「狩羽さんが身を屈めていなければ、もっと苦労したかもしれません。私は彼の首にひもを巻わし、その背にのしかかるようにして彼の動きを抑えました。彼は少しの間抵抗しましたが直ぐに動かなくなり、私は砂を堀って死体を埋めました。彼の手が何かを握っていることは埋めている途中で気づきましたが、それをどうにかする気力はありませんでした。後は奏様だけでしたから、狩羽さんの死体が発見されてすぐその場で犯人だと指摘されても、何とかできると自分を納得させました」

「テトロドトキシンはどうやって集めた?」

「私も料理人の端くれとして、フグの調理師免許を持っています。これまでも何度かフグを食卓に載せましたので、その度にはらわたを煮込み、上澄みを取っては乾燥させて粉末を集めておいたのです。そして貴方が食堂で話された通り、コーヒーを持ってくる前に砂糖壷にその粉末を入れました」

 野村は告白を終えたが、まだ立ち上がる様子はない。夕夜はじれたように野村を促す。

「話は終わりか。早く外に出るぞ」

「いえ、まだ終わっていません。これからさらに二人の人間が私の言葉で死ぬこととなるのですから。私は秤とエティアに、彼らの求めるものが礼拝堂にあると嘘をつきました。貴方は既に分かっているようですが、間もなくこの館は崩れます。礼拝堂に居ればまず助からないでしょう。少し、昔話をさせて下さい」

 野村は伏せていた顔を上げた。遙か彼方を仰ぎ見るように、焦点の合わない視線を投げている。

「私は昔から、料理人になって自分の店を構えるのが夢でした。儲からなくてもいい、とにかく美味しい料理を多くの人に食べて貰いたいと思い、若い頃は寝る間も惜しんで修行しました。そしてようやく、自分の店を持ち、素晴らしい女性を妻とすることができた」

 野村の店は多くの客足があったが、儲けを求めない彼の性格故、生活は常に厳しかった。それでも、夫婦はその生活に満足していた。

 だが、行列ができるほどであった客足が次第に減り、ついに全くなくなってしまう。味が落ちた訳ではない。彼は常に全力で、料理を食べて貰える喜びを噛みしめて調理していた。

 では、何が原因であったのか。

「後で分かったことですが、私の店を潰したのは秤でした。悪評を流したり、時にはチンピラを雇って並ぶ人たちを脅したりしていたようです。売り上げが無くなると、それまで大して貯金もできずに来ていた家計はあっという間に火の車になりました。女房は自分に何か責任があるのかと自己嫌悪に陥ってしまった。そこに取り入った者がいた。それが、エティアです。彼女は言葉巧みに女房の弱った心に取り入り、最初は少しずつ貢がせ、その金額に合うように客が来ました。今思えば、エティアと繋がっていた秤がサクラでも使ったのでしょう。気がつけば、女房は借金をしてまでエティアに貢ぐようになりました。そして首が回らなくなり、もはや心中かと諦めかけた時、これまで疎遠だった義実家である時津方から、援助の申し出があったのです」

 傾き掛けた店にふらりと現れた宗善は、野村の料理を味わい、大げさにほめちぎった。そして、夫婦で自分の館に住まないかと野村を誘った。この味を毎日食せるのであれば、借金を全て肩代わりすると。

 その申し出に、野村は地獄に垂れた蜘蛛の糸のように飛びつく。返すあての無い借金は雪だるま式に膨らみ、利子の返済すら困難になっていた。野村はその義兄に縋りつき、泣いて感謝したという。だが。

「宗善の目的は、私の女房でした。私の店が傾き出す少し前に、彼は妻を亡くしていました。彼の妻と私の女房は双子の姉妹で、とてもよく似ていました。宗善は元からそのつもりで、秤とエティアを使って私たちを追いつめていたんです」

 野村はゆっくりと立ち上り、まっすぐに夕夜の顔を見つめる。それは相手の心の奥底を見極めようとしているような、自らの大切なものを託すにたる人物であるか値踏みしている眼差しであった。

「神沼さん、あの子を、小夜をお願いします。あの子はきっと、貴方のお役に立つでしょう」

「何を言っているか分からないが、俺は誰の面倒も見る気はない。自分の娘の面倒は、自分で見るんだな」

「やはり、分かっていましたか。あれは、宗善が私の女房を無理矢理手込めにしてできた子です。妻はそれで心を病み、小夜を産んでその日に自殺しました。私は、小夜だけは渡さないと自分の子として届けました。そこに、私の子でないという思いは無かった。妻の忘れ形見であり、自分の子として精一杯に育ててきたつもりです。しかし、小夜の顔立ちには幼い頃から女房の面影が色濃かった」

 野村はこのまま館に居ればいつか、宗善は小夜にまで手を出しかねないと危惧し、彼女を館から遠ざけた。小学生の頃から寮暮らしをさせ、一度も館に戻らせなかった。

 それでも、宗善はどこから情報を得たのか、成長した小夜が亡き妻に似通っている事を知り、彼女を館に連れ戻した。そこで野村は、小夜を守るには宗善を殺す以外にないと決意し、家事の合間や宗善の言葉の端々から偶然知った館の秘密を用い、秤とエティア、更に宗善の娘も殺害する計画を立てたと語った。

「私はもう、どうなっても良い。唯一の心配は、小夜です。あの子は親の私にすら、普段から仮面を被っている所があるが、貴方にはどこか本音を出しているようです。私が側に居れない間だけでも、あの子を気にかけてやってくれませんか。どうが、お願いします」

 野村は夕夜に向かい、深々と頭を下げた。夕夜はそれを苦々しく見つめ、覚えてはおく、と答えた。

 野村は彼の答えに顔を上げ、何度も礼を述べた。そして鍵を取り出すと、外に続く扉に差し入れた。扉を開き、外に出るように夕夜を促す。

 扉の外は光に溢れていた。夕夜はまぶしさに目を細めつつ、足を踏み出す。

 玄関の一角を除き、周囲にはまだ雪が高く積もっている。高く登った日に照らされ、解けだした雪が足下のタイルを濡らしていた。

「ありがとうございます。小夜を頼みます」

 夕夜が明るさに慣れない目を細めていると、背後から野村の声がした。 その声に夕夜が振り向くより早く、野村は館に残ったまま扉を閉じる。

「何のつもりだ!」

 夕夜が扉に駆け寄り取ってを掴むと同時に、内側から鍵をかける音がした。扉越しに、『洗浄』のファンが回転する音と野村のくぐもった声が聞こえる。

「私は、やはりここで死にます。誰かに罪を懺悔できて良かった。本当にありがとうございました。娘を託すこともできて、心残りはありません。貴方には我が儘ばかりお願いしてしまって、申し訳ありません。どうか、お体にお気をつけください。良い研究成果がでますように、心からお祈りしております」

「ここを開けろ! おい!」

 夕夜が扉を激しく叩くが、中から野村の応えはない。やがてファンの音が止み、扉は沈黙した。

 彼が両手を扉に押し付けたまま歯ぎしりしていると、その腕に振動が伝わってきた。その振動は次第に大きくなり、やがて館の窓ガラスが割れる音が重なると、一階の窓から砂が吹き出す。

 夕夜は扉を離れて雪の中へ身体を投げ出すと、腰まで雪に埋まりながら、館から距離を取ろうと必死に雪をかき分けて進んでいく。背後では二階の窓からも金色の滝のごとく大量の砂が流れ落ちていた。

 遅々として進まないながらも、彼が何とか安全な距離まで離れた頃、館は三階部分から崩れ落ち、押し潰れるように崩壊した。周囲に地響きが轟き渡る。

 夕夜が歩みを止めて振り返ると、窓から雪の上に積もった砂が巻き上げられて視界を遮っており、館を確認することはできなかった。

 彼は無言のまま、かじかんで震える手でポケットを漁る。そこに煙草とライターがある事を確認し、安堵の息をついた。

 所々水に濡れている煙草を口にくわえ、ライターを点けようとするが火がつかない。夕夜がイライラと何度も火打ち石を回していると、横から火のついたライターが差し出された。くわえた煙草を近づけ、深く息を吸い込む。

 満足そうに紫煙を吹いている夕夜の隣で、小夜がライターを持ったまま口を押さえていた。

「夕夜さん、煙がこっちに来てますよ。あっち向いて吸ってください」

 夕夜は何も言わずに身体の向きを変えた。雪の中に並んだ二人の耳に、遠くから警察車両のサイレンが届く。先導している除雪車が雪を脇に吹き上げる様子が彼方に見えた。

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