生き物が住めない極寒の地、キュラス。その範囲は拡大し、ついに村と街を飲み込んだ。原因を探るべく派遣されたのは、想い人がいることでトラブルを起こした天才二人。雪の中を進む二人は、やがてキュラスが生まれた理由を知る。そこには悲しい「愛」があった――。
キュラスの謎に立ち向かう魔術の天才ルベリオンと、剣術の天才オーギュストが、なぜキュラスに派遣されるに至ったかは作中で徐々に明らかになっていくのですが、その明かしていく過程が良かったです。エピソードの頭に時々出てくる詩のような表現が綺麗で好き。
メインの登場人物たちにはそれぞれに愛する人がいて、だからこそ立ち向かえるし、途方もない現象も起こしてしまうし、悲劇にも繋がってしまいます。最後、自分の愛した人が愛し返してくれるのは簡単な事ではないのだな、と思わされる作品でした。
(「白銀の異世界」4選/文=藤浪保)