07 ドリームロール

 数年が経って。


 相変わらず、街を守る仕事を続けていた。子供のことも。彼女のことも。早く忘れてしまいたかったけど。


 結局、忘れられずにいる。


 自分が、こんなに引きずる人間だとは、思わなかった。


 屋上に行くことは。もうない。思い出すと、また、心がちくちくしてしまいそうだから。


 仕事の残務処理を片付けて。


 帰りがけに、駅前のコンビニでスイーツを買って帰る。ここのスイーツは、無駄にうまい。心にみる味をしていた。スーパーに行かないようになって。コンビニに通うことが増えた。


「あら。いつもありがとうございます」


 コンビニの店長。どう見ても、未成年みたいな見た目。


「知ってますか、お客さん。今日、ここらのデパートに歌のおねえさんが来るらしいんですよ?」


「歌のおねえさん?」


「あらあ。知らないんですか。世のこどもたちとそのご両親をめろめろにする、三千年に一度の逸材と言われた究極の歌のおねえさんですよ」


「いやあ。子供がいないもので」


「ご冗談を。数年前までお子さん連れて歩いてらしたのに」


 お。


「そう。それよりもね。歌のおねえさん。なんか、どうしても会いたいひとがこの街にいるって言ってましたよ」


「そう、ですか」


「スイーツ。1個サービスしときますね?」


「あの。どういった感じで」


 この店長。何者なのだろうか。


「ああ、えっと。うち、ドリームロールって言うんですけど。夢の残骸をもう一度くっつけるのが、ええと、趣味。そう、趣味なんです」


 夢の、残骸。


「今からでも、間に合いますよ。デパートの屋上。行ってみては?」


「ありがとうございます」


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