第31話 オニオン対グラス
「ふーっ……」
オニオンは珍しく緊張していた。
これに勝たなければ先に進めない、もちろん人生として。
オニオンからしてみればフージンとグラス以外は特に驚異では無かった。
「とにかくやるしかないよな、以前より特に変わっていなければ遠距離からの連続攻撃で倒せるはずだ。……変わっていなければなんだよなぁ」
「オニオンだよ…」
グラスもある程度はわかっていたがオニオンとのマッチングは正直やめてほしかった。
「とりあえずやるしかないよね。守りを固めて動かない、うん!これで行こう!」
グラスは闘い方を決めた。
夜九時
決勝リーグが始まる、各試合同時進行であった。
決勝リーグに進めなかったプレイヤー達も観戦することが出来、やはりフージンとオニオンの試合観戦者が多かった。
フージン対ガーデン
「この人、前からいたかしら…」
フージンはそもそもオニオン以外が眼中に無かった。
ガーデンは回復魔法を使うプレイヤーで少しのダメージならすぐに回復し、槍による間合いを取った攻撃に転ずるスタイルだった。
しかしフージンにその戦法は通じない。
「おら!おらおらおらおら!おらぁ!」
猪突猛進、その言葉が観戦者達の頭に浮かんだ。
回復させる間も与えず連続攻撃を繰り出すフージンにガーデンは為す術も無く倒れた。
フージン、勝利。
「よし!…あいつはどうなったかしら?」
オニオン対グラス
グラスはオニオンから教わった魔法ダメージ軽減スキルを手に入れており、持ち前の守備力もありオニオンからの攻撃に耐えていた。
「……耐える、耐える。よし!全然ダメージ食らってない!」
グラスは自分の作戦が成功していると確信し、このまま行くことにした。
「…魔法も効かない、弓矢も効かない。どうすれば」
オニオンは焦っていた。
このままではダメージが与えられない。
「近づいてみるか?」
至近距離で剛弓を使ってみようと近付くことにした。
「多分守ってるだけだろう」
しかしそれがいけなかった。
「来た!!」
グラスは攻撃スキルを放つ。
『シールドバッシュ』
「なっ!!ヤバい!!」
思いがけないダメージを受けたオニオンはすぐに後退した。
「しまった、これが狙いか。このままだったら時間切れで判定負けだ」
決勝リーグは試合時間が五分と決められており、それまでに決着がつかなかった場合は残り体力による判定方式。
今のままではダメージを受けたオニオンは敗けが決定している。
「どうする…?どうする!?」
焦るオニオン、その焦りが操作ミスを起こす。
放とうとしていたファイアボールがグラスではなく、その後ろに着弾する。
しかし着弾時に起こる少しの爆風に不思議な現象が起きた。
今まで表示されなかったダメージ表示が軽微だがグラスに現れた。
「ん?…今のは?」
オニオンはもう一度、今度は狙ってグラスの背後にファイアボールを放つ。
するとまたダメージ表示が現れた。
「なるほど……」
オニオンは大きく距離を取り、魔法詠唱を始めた。
「…ヤバい、バレた?」
グラスの守備力は盾を構えた前方だけが高く、背後からはダメージを受けてしまう。
そのため必ず敵に向かって正面を向くことが第一条件となっていた。
「あれ絶対、強力な魔法を詠唱してるよね!!」
グラスに芽生えた危機感が初めに決めた作戦とは真逆の行動を取らせた。
構えを解きオニオンに向かうグラス。
「やらせないっつーの!!」
前進を続けるグラス。
「よし、そのままそのまま。その為に大きく距離を取ったんだから」
オニオンは焦ることなく詠唱状態のまま待つ。
グラスはその強固な守備力を誇る装備品の重量で動きが遅かった。
「ヤバい、間に合わない!?」
先程と同じ距離感でグラスは盾を構える。
しかしそれはオニオンの狙い通りだった。
「立ち止まってくれた!!よし!!」
オニオンは詠唱が完了した。
『エクスプロージョン』
グラスより背後で広範囲に大爆発が起こる。
当然それは背後からのダメージ判定としてグラスには起こった。
グラスは完全にバレたとこれ以上のダメージは受けまいと焦る。
「ちぃ、このぉ!!」
もう守ることはやめた。
オニオンに攻めるために前進する。
しかし、そうなったらオニオンの独壇場。
距離を保ちながら弓矢で物理攻撃を繰り返す。
盾を構えていなければ少しずつながらダメージを与えられていた。
終ぞグラスがオニオンに攻撃することは叶わなかった。
タイムオーバー
オニオンの判定勝ちに終わった。
「うぅぅ…、バカ!私のバカ!!」
グラスは途中途中で初めに決めたことを守らなかった事を後悔した。
「危なかった。偶然ダメージを与える方法を見つけられて良かった……。危なかったぁ」
オニオンはイスの背もたれに全力で寄っかかった。
決勝リーグ準決勝のカードが決まった。
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