第32話 準決勝、そして決勝

準決勝


オニオンはグラスを倒し、気が緩んでいた。


「えーっと、相手は…。ナチュリスさんか」

その相手は何回か闘っていたが特に脅威には感じていなかった。

しかしそれが災いした。



オニオン対ナチュリス


「ちょっ!何だこれ!!」

ナチュリスはオニオンと同じ弓矢で攻撃するスタイルだがその移動スピード、攻撃スピードがオニオンよりも速かった。

とことんまで装備品重量を軽くし、電光石火と呼ぶに相応しいスタイルに変わっていた。



「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、か…。なら!」

オニオンは自分を追い詰めるフージンの動きを真似した。

直進からジグザグ、停止からのジグザグと近づいていった。


「やられ慣れてるんだからやり方は知ってる。…あれ?なんか悲しいなこれ」

そう言いながらギリギリまで近付きスキルを放つ。


『剛弓』


守備力の低いナチュリスはこの一撃で瀕死になった。

当然その場から離れていく。


「無駄だよ」

オニオンは勝利を確信した。


『ファイアボール』

勝負は決した、オニオン勝利。


「よし、これで決勝進出!!」

オニオンは今までフージンに敗けた経験も糧とし勝利した。




フージン対ライズ


試合開始直後フージンは思わぬ攻撃を受け、状態異常である毒状態にされた。


「は?効くとでも思ってんの?」

だが構わず近付き攻撃を仕掛ける。



攻撃をしてる途中で気が付いた、体力が異様に減っている。

「え?ちょっと待って何これ…」


フージンは一旦離れる、その間も体力は減っていた。

「ちっ!いやらしいわね、これ」

しかしどうもおかしい、減る体力の量が違う上に定期的に減るわけでもない。


実際に立ち止まってる今は体力は減っていない。


「…もしかして」

数歩歩いてみる、その都度体力が減った。


「こっちが行動すると体力が減るのか。今までこんな攻撃受けたことなかったから知らなかった……」

フージンは動けなくなった。


「ちっ、今出来ることは…」

『集気法』


毒ダメージはくらうが少しだけ回復の方が勝っていた。


ライズは動かない。


「魔法詠唱してるわね?なら…」

クールタイムが終わると同時に集気法を再度繰り出す。


ライズの計算違いはここだった。

考えていた攻め方は毒で体力を削り、強力な魔法で勝とうとしていた。

しかし今フージンは回復をしている、これでは今詠唱している魔法を唱えても倒せない。


もう詠唱が完了しているが迷い、魔法を使えないでいた。

他に倒し方はないか。


そう考えているのが仇となった。



「……あれ?毒からのダメージ無くなった」

時間経過によりフージンの毒の状態異常は解除された。

「もう一回回復しとこ」

フージンが集気法を使うモーションから魔法を放つライズ。

「なぁーんてね!!!」

それはフージンの罠だった。

すぐにスキルキャンセルをし前方に駆ける。


ライズの魔法は指定した場所に放つ雷撃スキル、それは不発に終わり、すでにフージンの射程圏内だ。



「相手を痛めつけるという事で私に勝てると思うなよ?」

右側の口角だけを上げ、通常攻撃とスキルを繋げコンボをくらわせる。



ライズはコンボが止んだ瞬間に後退する。


「うふふ、そうよ逃げなさい。……逃さないけどね!!」

フージンは直進ではなくあえて回り込むように近付いた。

あくまで頭は冷えている、再度状態異常攻撃をくらうことは避けたかった。


またもや攻撃を繰り返しライズを戦闘不能にした。


フージン、勝利。


「これで決勝ね。次あいつに勝ったら…。ふふ、うふふふ」

フージンはニヤけ顔が抑えられなかった。



綾は貴俊のスマホにメッセージを送った。



着信音が鳴るスマホを確認する貴俊は綾からのメッセージを読んだ。


『ふふ、うふふふ』


「………」

静かにアプリをタスクキルし、何も見なかったことにした。


決勝


オニオン対フージン


二人はボイスチャットをしながら闘っていた。


「フージンさん、結構苦戦したみたいだね」

オニオンは珍しく先制攻撃を仕掛ける。


「あ?さっちゃんにあれだけいいようにやられた奴に言われたくないけど?」

それを避けつつ近距離戦に持ち込むフージン。


「…見たの?」

危険を察知し後退しながら通常攻撃を繰り返す。


「見たよ、あんたもそうでしょうが」

構わず距離を詰めるため前進する。


「まぁ…」

「はい、とりあえずあんた攻撃して吸い取るわ」

『烈風拳』


フージンは中距離攻撃スキルを使い、オニオンにダメージを与えつつ体力を回復した。


「あの時に獲得したスキル…、厄介だな」

「私達が付き合うキッカケを厄介呼ばわりするのね…。私、なんか悲しい」

そう言いながら2発通常攻撃を与えた。


「……攻撃しながら言うこと?」

『ファイアボール』

『ファイアボール』


「あんたも2発撃ちながら言ってんじゃない!」

「いぇーい、当たった」


「ちっ!腹立つ!」

『波動弾』

溜めれば溜めるほど威力が上がるスキルを使う。


「待った、落ち着こう?」

オニオンはその場から離れる。


「許さない」

「綾、愛してるよ」

「え?ちょ!…私も」

「でも溜め続けるんだね…」

「ちょっと逃げないでこっち来なさいよ!」

「嫌だよ!」

オニオンも詠唱を始めた。


二人の戦いを多くのプレイヤーが観戦していた、だがその人達は知らない。


二人が結婚後の主従関係を争いながら、そしてイチャつきながら闘っていることを。


「そんじゃそろそろ行くよー」

『波動弾』


「こっちも完了!」

『エクスプロージョン』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る