第11話 カッコいいじゃない

決勝


闘技場でイベント最後の闘いが始まった。

出場チームは五チーム、そのうち二チームがオニオンとフージンを狙ってきた。


「…全員来ると思ってた。なんかつまんない」

「いやいや!結構強い人達ですって!見たことある名前の人ばかりですよ!」


オニオンは離れた場所から攻撃を始める。

『アローレイン』

『アローレイン』


序盤から出し惜しみ無しでスキルを使う。


迫ってくる二チームの中から一人だけ別行動を取る者がいた。


「…ん?なんだ?あいつ」

オニオンはそれに気付き、動きをマークする。



「おら!おらおらおらおら!!」

オニオンのスキルによって体力が削られている相手をフージンも出し惜しみ無しで倒し始める。

しかしそれは諸刃の剣、今までチーム戦を戦って来なかったツケが回ってきたかのように、モーションが大きく隙が生まれやすかった。


向かってきていた最後の敵を倒した時に使ったスキルの影響で案の定、隙が生まれてしまった。

先ほど別行動を取った敵がフージンに一直線に向かってくる。隙が生じるのを待っていたようだ。


「…あ!やばい!」

フージンは大ダメージを覚悟した。


「やらせるわけないでしょ」

すぐにオニオンがフージンの前に移動した。


『ウォールガード』


オニオンはフージンの盾となる、そして


『剛弓』


以前フージンを倒す為に組んでいたスキルを放った。


フージンを狙っていた敵はオニオンのスキルに倒れた。


「…あ、ありがとう」

「どういたしまして」

「カッコいいじゃない…」

「よく言われます」


「…私、あんたのそういうところ苦手かも」

「じゃあやめます……」

「うん、やめて」

「…はい」

「その代わり私がいっぱい言ってあげるから」

「…今の僕はどうですか?」

「うるさい、自分から聞くな」

「はい…」


明らかにトーンダウンしたオニオンにフージンは綾として気持ちを高めてあげようと思った。


「ったく、しょうがないな!カッコいいよ、好き、愛してる、結婚して」

「褒め言葉の連続はウソくさい…」


「文句あるなら別にいいけど?」

「無いです!嬉しいです!!」

「なら、これからも私の盾になりなさい」

「いや、プレイスタイルが…」


「ひどい!私が色んなプレイヤーからあんなことやこんなことをされてもいいって言うのね!?」

「あっ、そこは心配してないです。僕が好きな人は僕と同じかそれ以上に強いですから」

「…ぐっ、それを言われるとこれ以上何も言えないじゃない!」


「…とりあえず残りの二チームのうち、片方が負けそうなのでそっち行きますか?」

「え?逆でしょ。有利な方に仕掛けるのよ!」

「ええ!?」

「その方があとは弱ってる相手しかいなくなるじゃない!」

「…なるほど、さすがパワ…、ゴフン!!」

オニオンは咳き込んだ。


「今、パワハラ上司って言おうとしたな?」

「そんなこと言うわけないじゃないですか!」

「じゃあ私の事をなんだと思ってる?」

「美人で素敵な僕の上司」


「…はいはい、行くよ!!」

綾は耳を赤くしながら、にやけていた。


「あっ!ちょ!?」

お構い無しに敵に向かっていくフージンをオニオンは追いかけた。



「おらぁ!!おら!おらおら!」

フージンは本能のままに敵を攻撃している。


「……」

オニオンは黙っていた。



フージンは一つのチームを壊滅させたがすでにマジックポイントが無かった。

「あっ、回復しなきゃ。…って、え!?」

すでに弱っていると思っていたチームがフージンに攻めかかった。


「だからやらせるかっての!」

オニオンが前線に出る。


「フージンさん、回復を!!」

「え!?でもあんた!」

「大丈夫です!」


フージンと敵の間に移動したオニオンは強力な魔法を放つ。

『エクスプロージョン』


先程止まっていたのは魔法詠唱の為だった。


イベント前に使えるかもと組み込んだスキルをここぞとばかりにフージンが暴れる状況で使うことにした。


大きな爆発が敵を包み込む。

しかし、決勝まで残るチーム。誰一人倒せなかったが全員瀕死に追い込んだ。


「オニオン!ナイス!!」

回復を終えたフージンがオニオンの前に出る。


『波動弾』

『疾風突き』

『零距離烈風破』

この攻撃で全滅させるかのように怒涛の攻撃を繰り出した。



『踏み止まり』


グラスという名前の敵が致死ダメージを受けても倒れないパッシブスキルを持っていたが、もう意味は無かった。


「うぅぅぉぉおらぁ!!」

フージンの通常攻撃で勝負は決した。


二人の優勝が決まる。


「やったぁ!!」

「やりましたね!」


「オニオン!ありがとう!」

「いえ!お役に立てたなら光栄です。今の人っていつも見掛ける強い人でしたから」

「これで欲しかったスキルが手に入るわ」

「僕はよく読んでなかったんですけど、どういうスキルが身に付くんですか?」

「フッフーン、与えたダメージの半分こっちが回復するのさ」

「…あれ?もしかして僕は次の個人戦勝てないんじゃ?」

「フッフッフー、次は私が勝つからな」

画面上ではダメージは与えられないがフージンがオニオンをずっと攻撃していた。



「…ところで」

「ん?」

「フージンさん、ギルドどうします?」

「どうしますって?」

「残るか抜けるか」

「残るに決まってるでしょ、何その夫婦内別居みたいな選択肢」

「夫婦…」

「…嫌なの?」

「いや、そうなりたいですけど」

「…じゃあ今日告白で明日プロポーズね」



「……」

貴俊は何も言わなかった。


その事に自分が暴走しすぎたと気付いた綾。


「…ごめん、私が調子に乗ってたね」

「え?」

「今、困ってたでしょ?」

「いえ?」

「え?」

「困ってたというか悩んでたというか」

その言葉を聞いた綾はやってしまったと後悔した。


「本当に私でいいのかどうかでしょ?」

「いや、そこは悩みませんけど」

「…ん?じゃあ何を悩んでたの?」

「告白の仕方とプロポーズのサプライズを」


貴俊の言葉に綾は驚きと共に何とも言い難い感情が溢れだした。

「……ありがとう」

そしてその言葉に全てを託した。


「え?」

「…ん?んーん。私ね、乱暴的というか自分勝手というか支配欲というか、そういうのがあるみたいで」

「…はい」


「それでね、いつもそれで失敗してるの。だから今もそうなっちゃったかと思って」

「それは今までの男がその部分をわかってなかっただけです。僕はそんなこと充分にわかってますから、今まで僕に何をしてきたか覚えてますよね?」

「…は、はい」

綾はそれらを踏まえ、この恋はダメだと思った時もあった。


「でも僕は速水綾さんが好きです」

「う、うん、今言うのね…」

「すみません、今言うべきかと。あと一つお願いしてもいいですか?」

「な、なに…?」

「……」

「なによ?」


「僕は速水綾さんが好きでした。でもこれからは一生愛してもいいですか?」

「…はい、……はい!!」

綾は少し涙声になった。


「ではこれから僕は一生、速水綾さんを愛します!」

「……はい!よろしくお願いします」


「愛してるよ」

「…なんか今すぐに言われると信じられないな」

すでに涙は止まっていた。


「えぇ!?」

「直接会ってから言って、はい、あんたはすぐに出発!」


「…あれ?さっき反省したんじゃ?」

「そういう部分も愛してくれるんでしょ?」

「…ははっ、こいつぁ一本取られた」

「急に何!?当然そういうのやめてくれない?」

「すみません」

「…プッ、ハハハハハ」

「ハハッ、ハハハ」

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