第4話 ゴブリンだからって攻撃するな!
【ゴブリンA】
「何なんだコイツ?」
【ゴブリンB】
「はぁはぁ、わからん、いきなり襲って来た。
すまなかったな、ありがとう。助かったよ。」
【ゴブリンA】
「いや、いいって。
いきなり悲鳴が聞こえてびっくりしたよ。」
【ゴブリンB】
「いや、オレもびっくりした。
キノコ採ってたら突然現れてよ、『ゴブリン?』って言うから『おう』って答えたら、いきなり雄叫び上げて斬りつけてきやがったんだ。」
【ゴブリンA】
「こっちはおかげで獲物に逃げられたけどな。
久しぶりのイノシシだったのに。」
【ゴブリンB】
「そりゃ悪かった、すまん。」
【ゴブリンA】
「いや、悪いのはコイツだ。
何なんだ、盗賊かなんかか?」
【ゴブリンB】
「さあ、でも盗賊にしちゃ一人っぽいし・・・」
【ゴブリンA】
「とりあえず、武器取り上げて縛っとこうぜ。
何か紐みたいなものあるか?」
【ゴブリンB】
「いや、そんなモン都合よく持ち歩いちゃいないよ。
そっちは?」
【ゴブリンA】
「朝、罠用に紐を持って出たんだが、昼前に仕掛け終わったところでな。
もう残ってないんだ。」
【ゴブリンB】
「どうする?
目、覚ましてまた暴れられちゃかなわんけど、だからってさすがに殺しちゃうわけにはいかねえし。」
【ゴブリンA】
「ちょっと待ってろ、ツタか何か探してくる。
お前は武器取り上げとけよ。」
【ゴブリンB】
「わかった、あんまり遠くに行かねえでくれよ?」
【ゴブリンA】
「大丈夫だ、すぐ戻る。
気が付いて暴れたり逃げたりしないように用心しとけよ?」
【ゴブリンB】
「もちろんだ、もうあんな怖い目になんかあいたかねえや。」
【ゴブリンA】
「よいしょっと・・・」
【ゴブリンB】
「それで大丈夫かい?」
【ゴブリンA】
「多分な、これで暴れ出しても簡単には解けねえだろ。」
【ゴブリンB】
「さて、コイツをどうする?」
【ゴブリンA】
「人間だからなぁ、人間の役所に突き出すしかないだろ。」
【ゴブリンB】
「まったく、遠いのに。」
【ゴブリンA】
「仕方ねえさ、こういう奴はたまにいるんだ。
ゴブリンなら襲って構わねえって思ってる奴が・・・。」
【ゴブリンB】
「まったく、人間ときたら・・・
自分より弱い相手なら何してもいいと思ってやがる。」
【ゴブリンA】
「まったくだ、トロルやサイクロプスが相手だと尻尾巻いて逃げる癖にな。」
【ゴブリンB】
「ちったぁ襲われる側の身にもなってみろってんだ。」
【ゴブリンA】
「おい、起きろ!
まさか俺らに運ばせる気か?」
【ゴブリンB】
「もう、ここに置いて行きたいなぁ」
【ゴブリンA】
「そうもいかねえよ。
ほらっ、起きろって!」
【ゴブリンB】
「ひょっとして死んでんじゃねえのかい?」
【ゴブリンA】
「んなわけねえよ。縛ってる時に息してたもん。」
【ゴブリンB】
「でも何か目を覚ましそうにないぜ?
死んだふりでもしてんのかね?」
【ゴブリンA】
「おい、起きろって!」
【ゴブリンB】
「おいおい、そこまでやっちゃ・・・」
【ゴブリンA】
「くそっ、どうしろってんだ。」
【ゴブリンB】
「誰か呼んできて運ぶの手伝ってもらうか?」
【ゴブリンA】
「めんどくせぇなあ、もう。」
【ゴブリンB】
「どうする?こっからだと俺らの村も人間の村も距離は同じくらいだぜ?」
【ゴブリンA】
「直接、人間の役人に取りに来てもらうか、わざわざ一度俺らの村に運び込んでもどうせあっちに送り返すんだし。」
【ゴブリンB】
「だなぁ、今からだと日が暮れちまいそうだがしょうがねえ。」
【ゴブリンA】
「俺が行くわ。どうせ今日はもう用事無いし、お前は帰っていいよ。」
【ゴブリンB】
「ええ、それは悪いよ!
俺も一緒に行くよ。」
【ゴブリンA】
「いや、二人で言ってもしょうがねえし、二人とも日が暮れても帰らなかったら騒ぎになるぞ。
どっちか片方だけでも帰って村に連絡しといたほうがいいって。」
【ゴブリンB】
「それなら俺が行くよ!
ただでさえ助けてもらったのに後始末まで押し付けちゃあ悪いよ。」
【ゴブリンA】
「平気だって、俺は一人者だけどお前は女房も子供もいるんだし、お前の方が帰れ。
その方が心配するヤツが少なくていい。」
【ゴブリンB】
「・・・そうか、じゃあ悪いけど頼むよ。
今度、キノコやるな」
【ゴブリンA】
「ああ、そうしてくれ、俺の両親にだけ心配するなって伝えといてくれ。じゃあな。」
【ゴブリンB】
「わかった、気をつけてな。」
【ゴブリンA】
「ああ、お前もな」
【ゴブリンA】
「・・・ってな事がありましてね。」
【役人A】
「ふーん、分かった。多分アイツだ。最近、どこからともなく現れた頭のおかしい奴がいたんだ。」
【ゴブリンA】
「頭のおかしい奴?」
【役人A】
「ああ、何か自分を冒険者だとか言ってた。」
【ゴブリンA】
「なんです、それ?」
【役人A】
「さあ、何がしたいんだかよく分からんが、魔物を退治する仕事だとか言ってたな。
傭兵かって聞くと違うっていうし、猟師でもないって言うし。」
【ゴブリンA】
「で、俺らが魔物ですか?」
【役人A】
「さあな、どうしてそうなんだか・・・
何か、魔物に見えるような変な恰好でもしてたんじゃないのか?」
【ゴブリンA】
「まさか!
冗談言っちゃいけねえや。
襲われた奴はただ普通の恰好でキノコ採ってただけですぜ?
しかも襲ったヤツぁ、ゴブリンかって訊いてから襲い掛かったらしいし?」
【役人A】
「じゃあ、相手がゴブリンだってわかった上で襲い掛かったのか?
・・・変な奴だな。」
【ゴブリンA】
「頼んますよぉ、そういうおかしいの取り締まるのがアンタらの仕事でしょお?」
【役人A】
「そうは言ってもなぁ、変な奴片っ端から捕まえるわけにもいかんし・・・
とりあえず案内してくれるか?」
【ゴブリンA】
「もちろんですよ、そのために来たんだ。
とっとと引き取ってくださいよ。」
【役人A】
「誰か三、四人連れてった方が良いな・・・
おい!今から西の森に怪我人収容に行くぞ!
四人ばかり担架持ってついて来てくれ!
ああ、領外だが
お、そうだ、この間貰った
あれどうやんだ?」
【ゴブリンA】
「ああ、あれね。あれはチップをサクラに替えたんすよ。
いつもはクルミの木を使ってんですがね。」
【役人A】
「へえ、それだけであんな風味が変わるのか・・・」
【ゴブリンA】
「あれ、売れますかね?」
【役人A】
「この街でか?
ああ、売れるんじゃないか?
お、来たな、じゃあ行くぞ!」
その後、冒険者を名乗る身元不明の男は強盗殺人未遂で逮捕された。
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