第2話 冒険者ギルド!?何それ?
へい、らっしゃい!何にする?
え?ギルド
ギルドって何の?
いやほら、ギルドってったって色々あるだろ?
ここらでギルドだと鍛冶屋とか石工とか皮革とか網元とかかねぇ。けど、ギルドのための会館なんか構えてるようなとこなんて無いよ。
他所ならあるの?
そりゃ、大きい会合がある時はだいたい集会所とか教会使わせてもらうからね。そうでないときは持ち回りでそのギルドの会員の家使ったりするし・・・。予算なんて当番の会計係が預かるだろ?
ギルドのためだけの建物なんて必要ないもん。ありゃしないよ。
ひょっとしてどこかの商会の会館とか探してんの?違う?あ、そう・・・。
いや、あれならホラ、行商の人らが泊まったりするからさ。
で、アンタ何の職人?
は?
冒険者って何?
探検家かなんか?
え?魔物と戦う?
あの、それって傭兵かなんかかい?
戦争はしない?
戦争はしないけど魔物を退治するって・・・猟師か何かかね?
どのみちそんなギルドなんか無いよ、聞いたこともない。
いや、何か出たとしてそれが盗賊とか人間相手なら兵隊さんの仕事だし、獣なら猟師の仕事だしねえ。猟師で手におえなきゃどのみち兵隊の出番だろ?
猟師は領主様のお抱えだからギルドなんか作るわけ無いしねぇ。
いや、領主様お抱えの猟師以外の人が狩りなんかやっちゃ駄目だよ。森は領主様の物だし、狩りはホントは領主様しかやっちゃダメなんだ。猟師は領主様の仕事を代行してる家来だからね。
ウサギ、キツネ、イノシシ、シカ、オオカミ、クマ・・・あの辺の害獣で人や畑に被害が出たら領主様に頼んで猟師を派遣してもらうか狩りをして貰うんだ。
薬草とかキノコとかだって、多分厳密には勝手に取っちゃダメなんじゃないの?森は領主様の物だから、そこにある物も全部領主様の物ってことだからね。
アンタ、猟師になりたいのかい?
だったら領主様に・・・違うの?
どうもアンタの言ってる冒険者っていう仕事は分かんないねぇ。
じゃあ傭兵でいいったってアンタ、戦争もないのに傭兵の仕事なんてあるわけ無いじゃないの。戦争がなけりゃ領主様だって貴族だって徴兵するわけないし・・・いざ戦争だ、徴兵だって兵隊になったって戦争が終わればその場で解散よ?
解散した後の傭兵?
まあ、そんなもの雇い主にとっちゃ知ったこっちゃないわな。
領主様や貴族様からすりゃ、もう戦争は無いから兵隊になる前の仕事に戻りなさいってなもんよ。
いつまでも武装した元傭兵がうろちょろしてたりした日にゃ、それだけでひっ捕らえられちまうさ。
傭兵なんて雇われてる間でさえ厄介者だからね。街の住民たちは早く出て行ってもらいたいだろうさ。それが解雇後で誰も手綱を握んなくなったってえんなら、そら只のヤクザ者だもの。街ん中に居場所なんかないさ。
まあ、かといって一度兵隊稼業に手を染めりゃあ、堅気には中々戻れねえわな。
だいたい兵隊になる奴ぁどこぞの百姓か貧乏商人の次男坊三男坊だ。実家に帰ったところで仕事どころか居場所さえありゃしねえ。
大抵はそのまま野盗に身をやつすか、他の国で傭兵でも募集してりゃそこに流れていくしかねえわな。
え?
そういう連中が集まってギルドを?
アンタ、何言ってんだい?
そんな傭兵集団なんて領主様が認めるわけないだろ?
ギルドって言うのは、領主様が自分の領内の産業を保護するために認める同業者組合のことだぞ?
領主様が自分のコントロール下に無い武装集団の存在なんて、そんな領地治めるのに不都合なもの認めるわけ無いじゃないか。そういう傭兵の需要があるってことは、領主様の統治に至らぬところがあるって宣伝するようなもんだ。
貴族連中ってのは自分の世間体ってのが大事だからな、そんな自分の恥になるようなものを認めるわけ無いのさ。
盗賊ギルド?暗殺ギルド??
はっはっは、アンタそんなもの世界のどこを探したってあるもんかね。
世の中のどこの領主様が盗賊なんてものを産業として認めて、あまつさえ保護しようなんてするもんか。それに暗殺?・・・ハッ、おそろしい。
仮に暗殺ギルドなんてあってさ、まかり間違って繁盛してごらんよ。他所の領主様がたから間違いなく非難されるし、教会からも破門されちまうだろうよ。
おお、くわばらくわばら。
まあ、そういう連中同士の領主様の認めてない互助会みたいなもんならあるかもしれんがね。そういうのはギルドとは言わないし、そういう堅気じゃない仕事の互助会なんて表の世界にゃ知られないようにするもんじゃないかね?
いやいや、よしとくれよ。私ゃあ堅気なんだ。ヤクザものにでも見えるのかい?
そんなもの知らないし、知ってたとして見ず知らずのアンタなんかに話すもんかね。
まあ、アンタが何の仕事をしてるのか知らないが、アンタが言うような仕事はこの街にゃあないと思うよ。
ホラ、そこの番所にでも言って兵隊さんに訊いてごらんよ。
で、他に用は無いのかい?
じゃあ商売の邪魔だよ。何も買わないならどっか行っとくれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます