異世界より・・・

乙枯

第1話 オーク宣言・・・何故、私たちは人間と戦うのか・・・

 私たちは豚ではありません。

 豚顔でもありません。


 確かに人間の美的感覚に照らし合わせれば醜いのでしょう。それは否定しません。

 でも、それだけです。

 見てください!

 さあ、見てください私を!!

 私たちオークは決して豚ではありませんし、豚のような顔でもありません。


 人間の美的感覚からすると醜いという、ただそれだけを理由に、醜い、卑しいというイメージを関連させて豚と結び付けられたに過ぎないのです。

 でも実際は、皆さんが今見ている通り、オークは豚の顔ではありません。

 それに豚もまた、決して醜くも卑しくも無いのです。


 豚は本来、清潔好きで賢い動物です。

 体脂肪率も低く、筋肉質であり、決して太っているわけではありません。

 彼らが不潔で醜く卑しいというイメージを持たれているのは、ひとえに、豚を飼育する人間たちが彼らをそう生きざるを得ない環境に追いやっているからに他ならないのです。


 何という理不尽でしょう!


 豚たちは汚い場所に閉じ込められているから汚物にまみれて生活せざるを得ないのに、それゆえに汚い存在として見下されるのです。

 自分たちで望んでそういう環境に留まっているわけでもないのに、不本意な生き方を定められ、その環境を作り出した本人たちによってさげすまされているのです。

 むしろそうする人間の精神こそが卑しいと言わざるを得ません!


 私たちオークも同じです。


 私たちの身体は確かに人間より太いです。

 でもそれは決して脂肪によって肥え太っているわけではなく、筋肉が発達しているんです。肥満なのでは無く、体脂肪率の低い、いわば肉太ししぶとりなのです。

 この点は、豚と同じと言われても仕方ないかもしれません。


 とまれ、私たちはその外見ゆえに、豚と同一視され、豚人間とか豚人などとさげすまれ、不当な扱いを受けています。

 体格が太いからというだけで、実態を無視して怠惰な肥満者と決めつける。

 愚かと言うべきでしょう!


 今、ハッキリと私は明言する事が出来ます。


 それは『差別』であると!


 私たちはこの不当な差別に対し、今明確にと異議を唱え、そして敢然と抗わねばなりません。

 それは私たちオークと言う存在の正当な権利です。

 私たちはこの権利を、そして尊厳を、自分たち自身の手で掴み、そして守り抜くために、不当な差別によって私たちを否定する邪悪な人間たちと、最後まで戦い抜くことでしょう。


 それこそが、私たちオークが、オークとして生きるということなのだと私は信じます。





※※※※※※ 御報せ ※※※※※※


 本作品を機械音声VoiceVoxを使ってオーディオドラマ化し、YouTubeで公開しました。

 もし、よろしければご視聴いただければ幸甚に存じ上げます。


https://youtu.be/Ryw-CX6Tzug

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る