第15話:欲望の舞踏会

 毎日の舞踏会はとても面倒で、大切な時間が浪費されてしまいます。

 ですが私の城に残った貴族派の使者を邪険にするわけにはいけません。

 彼らは自家の護るために私との関係を強めようと必死なのです。

 私に嫌われたと思ったら、隣国の誘いに乗るかもしれません。

 今の微妙な力関係を壊してしまっったら、戦争が始まる可能性があります。

 多方面から同時侵攻されても撃退できるとは思いますが、少なくない数の家臣が死傷してしまうのは明らかです。


「やあ、何か心配事でもあるのかい、アリスナ女辺境伯」


 カーネギー王国のウィルズ第四王子が馴れ馴れしく言葉をかけてきます。

 我がアリスナ辺境伯家と領地を接する国の王族です。

 明らかなスパイですが、邪険にするわけにはいきません。

 下手な事をすれば開戦の口実にされてしまいます。

 カーネギー王国とすれば、戦争をするよりも乗っ取る方が経済的だと考えて、ウィルズ第四王子を送り込んできたのでしょうが、タイプではないのですよね。


「はい、色々と悩みが尽きません。

 必要なら戦争の辞さない覚悟ではあるのですが、民の事を思うと安易に開戦するわけにもいきませんから、暗殺で事を治めようかとも考えていたのです」


「暗殺とは思い切った事を考えているんだね、そんな腕利きの刺客がいるのかい」


 最初は驚いていたウィルズ第四王子ですが、直ぐに平静を取り戻しました。

 私のブラフ、ハッタリだと思ったようですね。

 ここは力を示しておく方が戦争を回避できると思います。

 力を隠しておいた方が実際の戦争では勝てる可能性が高くなるでしょう。

 ですがそれでは戦争が始まってしまい、国境近くの民が殺されてしまいます。

 確実に勝てる方法を隠しておくよりも、表に出して戦争を回避する方が、領民のためだと私は思うのです。


「いえ、いえ、刺客ではなく魔獣なのですよ。

 私は魔獣に好かれる体質のようで、私の頼みなら大抵の事は聞いてくれるのです。

 セバス、魔獣をここに入れるので、皆様に説明してください」


「はい、閣下」


 セバスが舞踏会に参加していた全ての方々に魔獣が来ると説明してくれています。

 それを聞いていたウィルズ第四王子の表情が少し真剣になっています。

 でもまだ完全に信用しているわけではありませんね。

 誰だって魔獣を使役できるとは思いませんから、それが普通の反応でしょう。

 ですが、私には魔獣を使役する事ができるのです。

 前世で呼んだラノベの手法や、鑑賞したアニメの手法を試して、強大な力を秘めた魔獣とも意思の疎通ができるようになっているのです。


「この子が魔虎王のタマです、この子が本気を出したら、国を滅ぼす事も簡単です」

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