第12話:謀略の始まり
「アリスナ辺境伯閣下、どうやら先の競売での購入は、国王や大臣に内緒で国庫の金を使い込んだようです。
ゼリウス王国ではグフマン王太子に対する糾弾が起きています。
それに乗じる形で、フレデル第二王子を担いで権力を狙う者たちが徒党を組みだしているようです」
本当に情けない話ですね、亡国の道を転がり落ちています。
国内の貴族派が完全に離反した状態で、王家派まで二分してどうするのです。
これで貴族派が好戦的だったら、二派に分かれて争っているうちに各個撃破されてしまう事でしょう。
そんな風に貴族派と王家派が争い戦力を消耗してしまったら、隣国が攻め込んで来るのは間違いありません。
どれほど好機に見えようとも、貴族派には自重を呼びかけるかしかありませんね。
「セバス、貴族派の方々に手紙を送りたいのだけれど、使者は大丈夫かしら」
「全ての貴族派の方々に使者を送るとなると、防衛戦が始まった時の指揮官が減ってしまいます。
ここはジュリアスの傭兵団に任せましょう。
ある程度重要な任務を与える事で、入り込んでいる刺客や密偵をあぶりだせます。
手紙を盗もうとしたりしてくれれば、むしろ儲けモノでございます」
確かにセバスの言う通りです、誘いをかけるのも重要な手法です。
貴族派への対処はこれでいいとして、これから王家と王家派はどう動くでしょうか、そちらの方が心配ですね。
私から買った宝石を転売して利を得られればいいですが、損をしてしまったら軍資金が減ることになります。
そもそも売れればいいですが、隣国が王家に狙いを定めているとしたら、国内の商人に王家との取引を禁止するでしょう。
「セバス、この状態では、予定通り次の競売まで宝石の放出を止めた方がいいですか、それともクズ宝石を放出して宝石価格を下げた方がいいですか」
「判断が難しい状態です、アリスナ辺境伯閣下。
事ここに至っても王家や王家派の中に愚か者がいて、食糧や武具を売って宝石を買おうする者がいれば、宝石だけでななく先の利益も投入すべきでございます。
そこまでの愚か者がいなくても、宝石を処分して軍資金に変えられないと分かれば、兵糧を売り払ってでも金銀に変えようとする者がいるかもしれません。
特に商人が武具の売買代金を金銀や食糧に限定すれば、宝石など無意味です」
セバスの言いたいのは、まずは宝石の価値を下げろという事ですね。
その上で、私が動かせる商人に王家と王家派との取引で、兵糧を買い取らせろという事でしょう。
王家と王家派の民は食糧が高騰して苦しむでしょうが、王家を追い詰めるにはそれが一番効果的かもしれませんね。
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