第6話:偽装工作と同盟工作

「セバス、ダイヤモンドと真珠だけでは誰かが疑念を抱くかもしれません。

 このような宝石も売り払ってください。

 そうですね、私が新しい宝石鉱山を開発したという噂を流してください」


 私は深夜に城砦を抜けだして創り出した、水晶、メノウ、シトリン、トルコ石等の、比較的価値の低い宝石二万個を机の上に広げた。

 材料となる鉱石がある場所を空間魔術で閉鎖して、高圧高熱を発生する魔術を叩きつけで粗製乱造した宝石だ。

 だから価値が金貨十枚程度のモノから金貨百枚程度のモノまで、原石の状態でゴロゴロとしているから、宝石職人が見ても私が創り出したものだとは思わない。


「承りました」


 セバスは何一つ余計な事を聞かずに指示通り動いてくれます。

 何か知っていた場合、魔術で支配下に置かれてしまったら、大切な情報を奪われてしまう事を理解しているのです。

 知らない事は自白しようがありませんから、自分が危険だと感じ諫言しなければいけない思った事以外は、何も聞こうとはしません。

 こんなセバスがいてくれるからこそ、私は自由に動けるのです。

 まあ、城砦を抜けだすのは気を使いますが……


「それはそうと、そろそろ舞踏会を主宰されてはいかがですか?」


 セバスは私が想像もしていなかった提案をしてきました。

 確かに貴族派を纏めるためには、貴族派が集まって親睦を深める必要があります。

 でもそれは私ではなく別人にやってもらう事にしたはずです。

 スカーバラ伯爵家がなかなか知恵者だったので、長男オズバートに探りを入れてやる気も確認しました。

 才子とは言えませんが、それなりにやれる男だと思ったのですが。


「私がやらなければいけない理由があるのですか?」


 セバスが献策する以上、やる必要があるか、大きな効果があるのでしょう。

 問題はそれに私が気がついていない事です。

 自分が先天的な天才だと思っているわけではありませんが、前世と前々世の記憶を手に入れたから、それなりの知恵者になったつもりだったのです。

 学んだ知識がたくさんあっても、凡才はそれをうまく活用できません。

 私はそういう状態なのかもしれません。


「マリーナ閣下、宝石鉱山が発見され無尽蔵の資金力が手に入ったのなら、それは秘匿せずに見せつけた方がいいです。

 王家も王家派の貴族も、今の状態で攻め込む事はできません。

 それよりは、時間をかけて貴族派の切り離しを画策するでしょう。

 ですが、マリーナ閣下が莫大な資金を手に入れられ、貴族派から多くの特産物を購入されたら、だれも王家に味方しなくなるでしょう」


 なるほど、そういう事でしたか、それならば分からないでもありません。

 ですが、そのような事をすれば、私をモノにしようとする貴族が嫌というほど集まって来てしまうでしょうね。

 ですがそれは我慢しなければいけない事なのでしょうね……

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