第7話:舞踏会と噂話

「ゼリウス王家のグフマン王太子とモランボ公爵家のビクトリア嬢の件、アリスナ辺境伯はもう聞かれましたか?」


 某伯爵夫人が先程から色々と話しかけてくれます。

 何かにつけてゼリウス王家とモランボ公爵家の悪口につながる事を話題にしているから、私の機嫌をとりたいのでしょう

 セバスがスキを見て教えてくれた話では、宝石好きで有名な方のようですから、珍し宝石を優先的に売って欲しいのでしょう。

 伯爵家の特産品は何でしたでしょうか?

 関係を深めるために交易を始めたいですが、でもまずは話を先に聞くべきですね。


「いえ、何も聞いていませんが、なにかあったのですか?」


「ええ、あったのですよ、アリスナ辺境伯。

 ジャクス国王は今回の件でかなり危機感を募らせているようで、厳しくグフマン王太子を叱責して、ビクトリア嬢と別れるように言ったそうですのよ」


 馬鹿の父親はやはり馬鹿なのでしょうか?

 今更グフマン王太子とビクトリア嬢を別れさせても、地に落ちた王家への貴族派の信用が改善されることはありません。

 それどころか、そんな事をすれば王家派貴族の信用まで失ってしまいます。

 ここまで来たてしまった以上、もう貴族派との融和は諦めて、王家派の結束を固めるべきです。


「愚かな事ですね、そんな事をするよりは、手放しで祝福して、モランボ公爵をはじめとする王家派との結束を固め、隣国で不遇に扱われている貴族を寝返らせる方が、少しは可能性があるでしょうに」


「まあ、アリスナ辺境伯は凄い策士なのですね、隣国の貴族を引き抜くなんて、考えもいませんでしたわ」


 伯爵夫人は驚いてみせていますが、完全な嘘ですね。

 馬鹿で欲深い女を演じていますが、なかなかのやり手とみました。

 私に色々と話しかけて、実力を測ろうとしているのです。

 誰かを旗頭にして同盟を組む方が家を保てるのか、それとも誘いを受けている隣国に忠誠を誓った方が家を保てるのか。

 王家が愚かだと貴族は苦労しなければいけません。


「アリスナ辺境伯、私とダンスを踊っていただけませんか?」


 この方は、某子爵家の次男だったですね。

 私の婿になりたいと顔に書いてありますが、露骨に避ける必要もありません。

 せっかくダンスに誘ってくれているのですから、踊って人柄を確かめましょう。

 ダンスの誘い方、誘う前に口臭などの身嗜みをちゃんと確かめる方なのか。

 ダンス自体がパートナーを思いやることができているモノなのか。

 性格や能力を確かめるポイントはいくらでもあります。

 ダンスの途中で意表を突く質問をする事で、知力と対応力も確かめられます。


「お誘いありがとうございます、喜んで踊らさせていただきます」

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