第9話

いずれのルートでもベアトリスの流刑イベント後に国王が急死してしまう。そこから結構泥沼な展開になるのが当時話題になって、私も手に取ることになったんだけど。


ユリシーズルートの場合は国王が死ぬとアルフレッドとユリシーズの間で後継者争いが勃発する。ローザリアが付いているユリシーズが勝利して、負けたアルフレッドは戦死する。


ベルンハルトルートだと、王位を取るための道具としてのローザリアをかけて争う2人からローザリアを救い出し、討伐軍に追われながら愛を育む話になる。最後はアルフレッドが折れて2人はちゃんと結ばれる。


ちょっとご都合主義だけど当時は私はベルンハルトがかっこいいと思ってたかな。今は乱暴に組み倒されたから嫌いだけどね。


ただし、ユリシーズとベルンハルトのルートだとエンディングの最後にローザリアが大聖女の力を失い、王国が魔族に滅ぼされてしまう。


魔族は人数は少ないけど魔法を使えるチートな存在で、ローザリアの力が無いと絶対勝てない。


それがアルフレッドルートだと、国王死亡後すぐにローザリアが大聖女の力を失ってしまい王国に魔族が攻めてくる。

ローザリアは自分を守るために傷ついたアルフレッドと真実の愛を誓い合って力を取り戻し、ローザリアの結界で魔法を使えなくなった魔族をみんなで撃退してトゥルーエンドを迎える。


ネタバレ乙です。


ここからが大事なんだけど、あのゲームには隠しルートが存在していた。


真ルートを攻略したあとニューゲームで誰ともフラグを立てないで進めると、その時もローザリアが力を失う。その後ベアトリスに嵌められて逆にローザリアが流刑に処されるイベントが発生する。


流されたローザリアは島で行き倒れるんだけど、瀕死のローザリアが大聖女の力を取り戻し、その魔力を感知した魔族の王に連れられて魔界に行くってとんでもないルートになっている。


そこから先は超イケメンの魔族の王に愛されてめでたしめでたしって感じ。まあ実際のローザリアは超絶美少女だったし魔族の王もたらしこめそうだ。


鏡で見た私もかなりの美少女だけどね。胸とかローザリアより大きいし。もちろんベアトリスのことね。生まれ変わる前は地味でした。サブカル命で生きてたから24年間彼氏いなかったし。


この隠しルートの情報は私がこれから生き残るために必要不可欠。魔の島で魔族の王に見つけてもらうには魔力が必要なんだよね。


この世界では魔力持ちはレアだけど、ゲーム中でローザリアと魔族だけでなく、実は隠しルートでベアトリスも魔法を使える。


王国を守護する結界を張れるローザリアを追い出すにはローザリアの代替品が必要で、ベアトリスがその力を発揮してローザリアを追い出せるようになるのだ。


でもベアトリスの今までの人生で魔法を使った記憶は一度もない。


本当にできるかちょっと試しておこう。

ローザリアの癒しの魔法は『キュア』だったかな。


『キュア』


腫れているであろう頬に向けて唱えてみた。

……何も起きない。


全然駄目じゃん。


魔力が無いと行き倒れるだけで魔族に探してもらえず、そのまま獣の餌になるかもしれない。流石にそれは嫌だ。


おかしいなあ。ベアトリスも瀕死にならないと使えるようにならないのかな?


思考が行き詰まりベッドの上でごろんごろんする。


「何をしているのですか。大人しくなさってください」


兵士に怒られてしまった。


私は今、船の牢屋の中にいて兵士に見張られている。

見張りの兵士はもちろん女性。一応そのくらいは気を使ってくれるらしい。


護送の兵士達は総じて機嫌が悪い。そりゃ誰も好き好んで危険な島なんかに行きたくないでしょうね。


少しすると甲板から別の兵士が降りてきた。


「そろそろ大聖女様の結界を通過するぞ」


随分と緊張しているみたい。結界の外なんて誰も出たこともないのだから無理もないけど。


兵士は再びバタバタと甲板に上がって行った。

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王太子妃なのに冤罪で流刑にされました 〜わたくしは流刑地で幸せを掴みますが、あなた方のことは許しません〜 超高校級の小説家 @Izuru_Kamukura

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