第8話
私も兵士に連れられて部屋を出た。
もう死刑囚みたいなものだけど、地下牢とかじゃなくてさっきの西の離れがいいなーと思っていると、幸いなことに西の離れに到着した。
兵士がいなくなると、私は暑苦しいドレスを脱いでベッドにダイブした。疲れた。非常に疲れた。
殴られた頬はまだ痛い。骨には異常は無さそうだけど腫れてると思うし、口の中が切れてる。この世界の衛生環境だと痛~い口内炎になってしまう。
冤罪で島流しとか随分と酷いことをするなあ。でもこうなってしまった以上ここでの巻き返しは不可能なので、これから生き延びる術を考えなくては。
でもこの日はちょっと身体がガタガタで私は深い眠りに落ちてしまった。
4日後、私は船の上にいた。
あれからすぐに王都から港町に馬車で数日かけて移送され、騎士団と共に船に乗せられた。
今からレッド・ベリル島に連れて行かれるけど、道中は騎士団が護衛してくれるので無事に到着できるはず。
島には言い伝え通り魔界への入り口があるんだけど、そこにたどり着けるのはローザリアの隠しルートの場合なんだよね。
そんなことがわかるのも、私はこの世界の住人じゃないから。とはいっても16年間ベアトリスとして過ごしてきたのも私で、さっき絶望して意識が途切れた時に思い出したんだけど。
だからベアトリスとしての記憶もあるんだけど、感覚的にはさっき生まれ変わったばかりで記憶がややこしい。
生まれ変わる直前は病院のベッドで寝ていました。末期の悪性腫瘍が見つかって闘病3ヶ月で力つきました。享年24歳。
あの時は私もベアトリスみたいに、死にたくない助けてって神に祈ったっけ。
……なんだが沈んでくるからもういいや。
この世界は私が10年くらい前にやりこんだ「大聖女×大戦争~100カラットの恋~」という乙女ゲームとほぼ同一だったりする。
主人公のローザリアは平民だけど大聖女に抜擢されて王都トルマリンにやってくる。修行ののち王城に住み込んで王子達と親交を深めていく。
ローザリアの攻略対象は3人+隠しルートとなっている。
読ませる系のゲームだったので、一人ずつ順にフラグが解放されるタイプのゲームだった。
まずは第二王子のユリシーズ・デニス・トルマリン王子。散々ベアトリスに敵意を向けていたけど、あれはローザリアへの想いの裏返しなのだと思う。彼を攻略すると2人目のフラグが解放される。
2人目はベルンハルト・ブレイブ・セラフィナイトで、トルマリン王国騎士団長の息子だ。訓練中の怪我をローザリアに癒してもらってから意識し始める。彼を攻略すると、真ルートが解放される。
最後の真ルートはアルフレッド・ヨハネス・トルマリン王子。アルフレッド王子は国の財政難を救ったマリアライト公爵令嬢ベアトリス、つまり私と結婚している既婚者だ。
政略結婚に疑問を感じつつも国のために我慢するアルフレッド。そこに現れたローザリアと禁断の恋に落ちてゆく。いや、不倫は駄目でしょ。
全てのルートで中盤にベアトリスの流刑イベントが発生してしまう。ゲーム中ではベアトリスのその後の描写は無いので、これから私がどうなるのか全くわからない。
更にわからないのが、これはゲーム中盤に発生するイベントなのだ。でも、まだ私もローザリアも城に来て2週間しか経っていない。
ベアトリスはゲーム中で話が進むとアルフレッドとローザリアの仲を疑い、嫉妬して実際にローザリアに様々な嫌がらせをしてしまう。
ちょっとやり過ぎて怪我をさせてしまい、それで流刑に処されるんだけど、旦那に色目使われたら嫌だって気持ちは凄くわかるけどね。今回もちょっと気になる場面があったし。
でも、実際には私が何もしていないのに、使用人や侍女に仕込みをされて私は流刑に処されてしまった。解せぬ。
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