第6話 好きなんです!などと言われた朝

 家に帰ってからアプリをよくよく見てみたら、拡大しないと見えないくらいの注意書きが、10ページほど書いてあった。


 それを読み進めた結果、どうやらオレ個人に対し学校側から危険人物扱いをされているらしい。

 詳細はこうだ。


 女子高から共学に変わりたてで入って来た男子。

 そんな男子が考えることは、モテまくって彼女出来まくりで風紀を乱す事になるのは間違いない。そんな恐れを女子に抱かせないためにも、学校をあげて阻止する!


 などと、極端な流れになったのだとか。

 イケメンなら分かるが、オレだよ? オレなんですよ?

 風紀を乱すことになるなんて、絶対あり得ないと断言出来るのに……。


 そんな心の空しさを知ってか知らずか、学校の玄関に着いたら、とんでもなく好みのタイプな女子がオレを待ち受けていたではないか。


『おはよっ! しゅんさん』


 何だ、誰なんだこの子。

 オレの名前を知っている……のはアプリのせいで知られているとして。


 同じクラスにこんな健気な子がいただろうか。

 落ち着け、オレ。落ち着いてここはじっくりとなめまわすように眺めまくろう。


「おぉぉぉぉ……! 何というオムネサイ――」

 

 おっとダダ洩れじゃないか。危ない危ない。

 オムネサイズも含め体のラインが理想的、聞こえて来る声も萌え萌え系。


 ショートな茶髪で目が可愛い。いや、顔全体が小さくて人形みたいだ。

 朝から妖精のような美少女に出会えるなんて、転生でも果たせたかな。


 それとも昨日までのことは夢で、実は今日からが本当の始まりなのでは。


「オムネサイ? え、日本語? ――というか、遅いじゃないですかぁ! わたし、ここでずっと待っていたんだよ?」

「え、待っていたって? 誰を?」

「――っとに、バ……じゃなくて、現実が見えてないんだ?」

「オ、オレ?」

「他にいないじゃないですかぁ! 八潮のしゅんさんしかいないよ?」

「そ、そうだね……。そ、それでオレに何か用が?」

「うん、あるよぉ」


 むぅぅ……可愛いぞ。

 アプリからは何の通知も来てないし、振動すらしていないが本物だったりするのか。


「何の用――」

「しゅんさんのこと、好きなんです!」

「ふぇっ!?」

「はい~、どうですかぁ?」

「え、え~とキミはどこの誰なのかな?」

「……あっ、そうでしたね、エヘヘ」


 おいおい、早くも萌え死なす気か。


「案外おっちょこちょいさんなのかな?」

「うぜ……じゃなくて、はい~。わたし、しゅんさんと同じクラスの大宮みつるって言いまぁす! これから毎朝、で待ってるね~」

「大宮みつるさん……だね? そ、そっかそっか! それは何だか嬉しいな」

「それじゃぁ、教室に行っちゃっていいですよぉ」

「え、と……大宮さんは行かないのかな?」

「うん、後で」

「じゃ、じゃあお先に行くね。またね、大宮さん!」

「はぁい。また~……」


 何だ、ちゃんと好かれるし告白もされるぞ。

 それも毎朝玄関で出迎えてくれるなんて、健気すぎる女子じゃないか。


 教室の中でも接近してくれたら、それこそ最高の日々が送れる予感。

 『好きなんです』なんて言われたら、超積極的に動いてしまいそうだ。


 さっさと教室に行って、彼女を出迎えてあげよう。

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