第5話 果てしない妹への夢
あれ、妹って言ったよな。妹がいるってことは、一緒に家に帰って兄弟で仲良く過ごすっていう認識で間違ってないはず。
「――もういいですか? 帰りますけど」
「お待ちになってくれるかな?」
「……は? キモいのはスルーしてあげますけど、まだ何かあるんですか?」
「リピートアフター! もう一度親切丁寧に聞くけど、まいかはオレの妹になったんだよね?」
「ここではそうですね。でも、だからってどうして自宅に行く必要があるんですか? 妹に何か特別な夢でも?」
「ゆ、夢だなんてそんなバカな……」
むぅ、これはアレか。ツンデレというやつなのか。
呼び方は確かにデレデレしてしまうが、教室を出たら途端に他人のフリ……元から他人だけど。
それにしたって、塩対応すぎやしないか。
「しゅん兄くんは、わがままな男の人なんですね。よく分かりました! 私が一人目でもあることだし、許可を貰って校門までなら同行しますね!」
「……えっ、本当!? じゃ、じゃあ一緒に帰ろう!」
「は~い! それじゃあ、先に廊下に出て貰えますか?」
「喜んで!!」
何だ、押し切ればイケるんじゃないか。
そもそも添い寝までしていたくせに、恥ずかしがって一緒に帰らないなんてそんな言い訳が通るわけ無いだろうに。
妹が添い寝、それも教室でカーテン仕切りでってのもおかしな話ではあるけど。
まぁ、いいや。何にしても妹が出来たんだ。深く考えないようにしよう。
◇◇
廊下に出てまいかを待っていると、何やら通知の振動があった。
だがそこは気にしないで、妹が現れるのを黙って待つことにする。
『お待たせですっ! それじゃ、行こ?』
むぅ、可愛いじゃないか! これが妹! オレの妹か!!
「お、おう! 行こうぜ!!」
「……うん!」
教室の中には誰もいなかったし、廊下にも人っ子一人いない。
これって、オレの独壇場なんじゃなかろうか。
だからといって変な行為をするわけじゃないが。
「ねぇ、どうかしたの? 私の顔に何かついてる?」
「あぁいやいや、感動をかみしめていただけで、決して
「ふぅん? でも、もう添い寝したからその程度のことなら別にいいよ?」
「えぇぇっ!?」
「驚くことでもないし?」
おぉ、これは!
妹万歳! そうだよな、添い寝をクリアしてるんだし、その程度くらいのスキンシップをしても何も問題は起きないよな。
そんなこんなで、校門に着いた。
そこから先に門外に出たのは、時川まいかでオレの全身はまだ校内に残っている。
それ自体に何も疑問を浮かべることが無かったのだが、ここでオレは兄としてスキンシップを実行!
しかし、
『こぉの、変態野郎!! 何で勝手に肩に触れるわけ!?』
な、なにっ!? ば、ばかな……。
「ふぁっ!? え、いや、まいかはオレの妹だし、ほこりがついてたから取ってあげただけで……そんな怒ることは――」
「違いますけど? 私、八潮の妹なんかじゃありませんけど!! まだ気づいてないんですか? 私のいる所は門の外、八潮は学校の中。どんな間抜けでも、アプリに書かれている注意書きくらい読めますよね? ねぇ?」
アプリの注意書き……そういや、さっきの通知ってまさか。
「これってナゾナゾ? 妹になったって言ってたのに、外と中で人が変わるとか……それはあまりに酷いよ? 夢も希望も……」
「クスッ……、妹にどれだけの夢を求めているか知りませんけど、そこを理解して割り切らないと、八潮の高校生活は闇色ですよ? それじゃ、お先に帰りますね。また明日も教室の中だけよろしくお願いしま~す! バイバイっ」
「バ、バイバイ……」
妹とは果てしない夢なのか、それとも……。
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