第2話 ぼっち救済アプリ、許可が下りる?

「ついて来んな、ぼけっ!!」


 ――などと言われても、オリエンに参加しないと始まらないわけで。

 女子にやられて無様だなと思いつつ、急いで起き上がって体育館に向かうことにした。


 体育館に着いた。

 しかしどういうわけか、その場の全女子から一斉に視線を浴びまくっているけど、何かしただろうか。

 その視線に含まれている感情を探るスキルなんて、オレには備えられていない、惜しい。


『そこの八潮やしおしゅん!! 全会一致で承認したから、そのつもりでいるように!』


 ……はい? 何でオレがいない間に一致して、承認しちゃってるんでしょう。

 何の承認なんだよと突っ込みたいけど、味方になりそうな男がいなくて泣ける。


 しかもフルネームで呼ぶとか、誰得だよ。

 せっかく共学になったのに、見渡す限り女子だらけでどうしてくれよう。


 それはともかく、オレのクラスの列に並ぼうとすると、蹴り飛ばしの長身女子が最後列に立っていた。

 もちろん振り向いてもくれないので、ここは積極的に行くべきだろう。


「あ~、そこのじょ――」

「ギロッ!!」

「いえ、何でも無いんですよ? 本当ですよ?」


 とりつくしまもないとはこのことか。

 全く、なんて日だ。


 そもそもバランスを勝手に崩して転びそうになっていたのを、親切丁寧に助けようとしただけなのに!

 ほんの少しだけ体が触れただけで、蹴り飛ばしとかお高い系なのか!

 ――などなど、全て心の中で強気な愚痴を言うだけだったりする。


 結局オリエンという名の、全女子からの痛い視線祭りは時間通りに終了。

 教室に帰るのは各自の自由だったので、後から来たオレは真っ先に体育館を出て行く。


 そんな時だった! 後ろから誰かが猛スピードで追いかけて来たのは。


『八潮くん、待って!』


 なぬ? 自己紹介もしてないのに、『くん』呼びなんて突発的モテイベントか?

 しかも小柄で出るところは出て何から何まで可愛いとか、どういうことかな。


「え、オレ……?」

「八潮はお前だろ……コホン!! そう、そうなの! キミに用があるんです!」


 何か一瞬、闇の声がダダ洩れていたが気のせいか。

 それにしても間近で見たら、もっと可愛い。つぶらな瞳とか、顔が小っちゃいとか好みすぎる。


「な、何かな?」

「あのっ! わたし、同じクラスの時川ときがわまいかって言います! 八潮くん、これからよろしくお願いします!」

「おぉっ! い、いやぁ~こちらこそよろしく~!」

「よろしくしてくれるんですね?」

「それはもぅ!」

「それじゃぁ、許可しておきますねっ! じゃあ、わたし行くんで」

「……はっ? え、何が何を? というか、どこへお行きに?」


 初めて好意的な女子が近づいて来て、自己紹介までしてくれたのに。

 許可がどうとか、しかもあっけなく目の前からいなくなってしまった。


 あっけに取られたオレの真横を、オリエン終わりの女子たちが凄い勢いで通り過ぎて行く。

 まるで見えていないみたいにとか、ぼっちの始まりかな?


 そんなことを思っていたら、スマホの通知音が鳴り出した。

 滅多になることが無いから、音を切り忘れていたようだ。


 画面を見ると、絶対怪しいとされるアプリからアクセス許可が求められている。

 いつの間にダウンロードしていたのやら。思い出すと、確か入学初日に入れた記憶があるような。 


 怪しいかと思っていたけど、よくよく見ると監修がここの高校な件。

 それならばと、許可をしてそのまま放置にしといた。


 中身は帰ってから確かめることにして、教室に戻ったらさっそく時川さんに声かけだ。

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