フラれるたびに妹がコンプリート出来てしまった件
遥 かずら
第1話 フラれ耐性の始まり
「失せな! このスケベ野郎!!」
「わざとじゃなくて、偶然が偶然を呼んだだけのアクシデントで~」
「言い訳野郎!! 離れろ、ボケ!」
「話し合いを持ちたいなぁと」
「てめぇみたいな野郎なんか、絶対に好きになるわけない!!」
「――あぃたぁっ!?」
名も知らぬ女子からの一撃が見事に命中。一瞬くらくらするような衝撃が、オレの脳みそを揺らした。
黒髪ロングでいかにも清楚なお嬢様に見える子なのに、口は悪いは手は早すぎるわ。
告白もしてないのに、ものの数秒でフラれてしまった。
教室を出て行く時に彼女がつまずきそうになったから、助けてあげただけなのに。
何故こうなった……。
◇◇
高校生活がスタートして数日。
いよいよクラスが決まって教室に着いてしまったオレ、八潮しゅん。
クラスに入って、カバンから荷物を取り出す。
こういう時、初めが肝心だと中学のダチから教わって来た。そしてまさに今! 自分から「おはよう」と言えば「おはよう」と返してくれることを期待して、いざ!
元女子高、そして共学成りたてな高校でアウェー感半端無いけど、ここは自分から行くべきだ。何も言わずに黙っていると挨拶を返してくれるなんて、そんなのは男でも女でもいるわけがない。
残念なことにオレはパッとしない男だ。
それは認めている。それでも中学の頃に培ったいい人体質を貫けば、きっといいことが起きるに決まっているのだ。
さぁ、いざ勇気を振り絞って――。
しかし……圧倒的多数な女子が固まって楽しそうに話している空気。こんなのに耐えられるほどの耐性はまだ備わっていない。
思わず心の中で、「あぁ、早く授業が始まって欲しい」などと願ってしまったじゃないか。
そんな願いも空しく、希少な男子として自己紹介が終わっていた。
『――というわけで、皆さん。アプリのダウンロードを済ませるように!』
はっ? アプリだって? 何のアプリなのか全然聞こえて来なかったぞ。
しかし悲しいことに、女性担任に声すらかけられないぼっち男子。
何のアプリか分からないまま、オリエンテーションの時間がやって来た。
オリエンは体育館でやるらしく、ぞろぞろと教室から出て行く。
いやいや、置いてかないで。
女子たちの素早さに負けじと、オレは急いで教室から出ようとした。
その時だった。
長身な女子が、何かに引っかかってつまずきそうになっている。
これはお近づきになるチャンス……ではなくて、助けるチャンス。
オレは勢い任せに、長身女子の側面に待ち伏せて受け止める姿勢を取った。
それなのに、
『――きゃぅっ!?』
おや、可愛い声が。そう思っていたら、次の瞬間には蹴り飛ばされていた。
「んはっ!? な、何事が……」
「てめぇ、ふざけんなよ! このスケベ野郎が!!」
何故、こうなった……。
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