「センパイ、好きですよね?」
「セェェエエンパァァアアイ!!!」
ばぁんっ、と私は部室の扉を開けた。一瞬、びっくりした表情を浮かべた部員がチラホラいたが「またお前か」という表情に変えた。
やっとセンパイに会える。私の目はキラキラとそれはそれは宝石のように輝いているハズだ。
「結城さん、いい加減その登場の仕方はやめてください。」
「センパイ! センパイは私に会えなくて寂しくなかったんですか?!」
「はい」
清々しいまでの即答だ。ガクッ、と項垂れてしまいそうなところを持ちこたえる。今日はそれくらいじゃ項垂れない。
なぜか?それは今日のお昼に友人のえみから聞いた話があるからだ。
「センパイは私の事が好きなんですね!!」
「今までの態度からそう思えるとは……。オメでたい頭ですね」
センパイはそう言ってにこやかに笑った。素敵な笑顔だ。好き。尊い。
私はそんな事を思いながらセンパイにえみから聞いた話をする。
「えみから聞きました! 好きな人が冷たくするのは“自分の気持ちを悟らせたくないから”だって!」
「へぇ」
「センパイ! センパイもそうなんですよね?! いや〜、私たち両想いだったなんて!」
「あ。モブ子さん、この前のコンテストの絵は仕上がりましたか?」
「私と話してるのに無視決め込んで他の女と話さないでくださいよぉお!」
「失礼。あまりにもくだらなかったので」
センパイは全然申し訳ないと思っていないような清々しい笑顔でそう言って持っていたパレットを机の上に置いた。それから今までこちらに体を向けていなかったのに急にこちらに体を向けてきた。
え、何?告白される?
「いいですか、結城さん」
「は、はひ!」
しまった。私とした事が推しに話しかけられたオタクのような返事をしてしまった(100%偏見だがそこは許してほしい)。
「誰が、誰の事を、好きですって?」
「センパイが」
「はい」
「私の事を」
「はい」
「好きって」
「一回脳みその構造見せてくれませんか?」
「遠回しから私の思考回路、否定してる?!」
本当なら気分がいいものでないのだろうけど、センパイがあまりにもいい笑顔でそういうものだから気分が良くなってしまう。まぁ、私はきっとセンパイに何を言われても気分がよくなってしまうだろう。
そう考えるとセンパイって素晴らしい人物なのでは?
「とりあえず早く準備してください。あなたは絵だけは上手いんですから」
「………。…センパイ」
「まだ何か?」
「やっぱり私の事好きですよね?」
「やっぱり退部してくれませんか?」
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