第7話

 その男、レジナルドは充実していた。

 妻の両親から織り工の仕事を継ぎながら新しい家族を迎え、毎日が幸福の絶頂期。彼自身にはなおも不足などない。

 ただ、気になるところはある。

 とっくに財宝を探し当てたろうに、未だにダレンがメイの前に姿を見せてこないのだ。

(一人前の織り工になって、いつか必ずぎゃふんと言わせてやる)

 きたるべき天敵との対決に備え、父となった男は今日もまた漁師用フィッシャーマンズセーターの制作にしんけつを注いでいく。

 ――時を同じくして、浦里から海をへだてたぼうこくの酒場で飲んだくれる海賊はこう叫んでいた。

よろこべ野郎ども! 我らが同業の船が、どこぞで奪った財宝を積んだまま嵐にやられたってよ!」

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至宝 水白 建人 @misirowo

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