第3話

 翌朝。さんばしの上で泣きながら手を振るメイに見送られ、レジナルドはおおうなばらへと漕ぎだした。

 その直後にを張らせただいはんせんのダレンから「財宝は私のものだ」と言わんばかりに追い抜かされたものの、しがない漁師のせいをそぐには至らない。

 宝探しはほんのじょの口。見つけるまでが勝負なのである。

 船出を終えたレジナルドは、それから昼夜を問わず、疲れきるまでオールを漕いではどろのようにねむるといったきびしい航海を続けた。

 あるときは海鳥の声を聞きながら頭上の太陽に照らされ。

 あるときは波の音を聞きながら海面の月をらし。

 丸三日かけて、ようやく彼は目的地のしまかげを視界に収めることができた。

(ぼんやり見えるもうひとつの影はダレンの船か)

 大帆船と小舟では比べるまでもなく速力に開きがある。レジナルドよりずっと早く南島付近まで到着していても不思議はない。

(こうしちゃいられない。俺も海に沈んだ財宝を探さなきゃ)

 そう思った矢先、レジナルドは背中にしぶきを上げるような音を感じ取った。

 たいぎょが泳いでいるにしてはやけに響いている。かといって海がしけているわけでもない。

 漁に際しては意にも介さないであろう雑音だが、一刻も早く財宝を見つけたいとあせっていたレジナルドには気になって仕方がない。だから彼はさっと確かめるつもりで後方へといちべつを投げた。

 海の男とて――いや、海の男であればこそ仰天せずにはいられまい。

「……どうして、こんなときに」

 レジナルドがもくげきしたのは、髑髏どくろじるしはたかかげた恐ろしきかいぞくせんだった。

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