第107話 内緒

翌朝、奏介と凌君は父さんの車に乗り込み、テスト会場へ向かい、それを見送っていた。


タブレットで商品開発について調べていると、カズ兄が「じいさんち帰るなら送るぞ」と切り出し、カズ兄の運転する車に乗っておじいちゃんの家へ。


夕方、かなり早い時間に夕食を食べた後、シャワーを浴び、タブレットを使って調べ物をしていると、スマホが震え、奏介からメッセージが来ていた。


【今終わった! 明日か明後日、ジムに結果くるって】


『全力出し切れた?』


【完璧。 週末、トレーニングも部活もないし、またシューズ買いに行くの付き合ってよ】


『いいよ。 週末ね』


メッセージを送った後、ベッドで横になり、奏介のことを考えながら目をつむっていた。



翌日の夜。


奏介からラインで【受かった! 今日からプロ! 今後、ガンガン試合入れてくれるって!】とのメッセージが。


『おめでとう。 お祝い何がいいか考えておいて』


そうメッセージを送った後、奏介に会いたくて仕方ない気持ちを抑えながら、眠りについていた。



週末。


奏介と二人で電車を乗り継ぎ、シューズを見に行ったんだけど、奏介は「このメーカーは横幅が狭いんだよなぁ」とか「このメーカーはソールが厚くて重いんだよなぁ」とか、独り言を言いながら選んでいた。


『こう言う意見を取り入れて開発するのかな?』


そう思いながら、奏介がブツブツ言う横で、シューズを触りながら歩いていた。


奏介が好みのカラーがなかったようで、奏介は仕方なく、黒のシューズを購入しようとしていた。


「白と赤もかわいくない?」


「白って汚れが目立つじゃん。 智也君、白のシューズ履いて、英雄さんから『手入れを怠るな!』って怒られてたし。 黒なら手入れを手抜きしてもバレなくね?」


「それチクって良い?」


「絶対死ねる」


その後も冗談を交えながら買い物をし、買い物を終えた後、ファーストフード店へ。


少し早いお昼を食べた後、手をつないで奏介の家へ向かっていた。


奏介の家に入り、話しながら飲み物を飲んでいると、奏介の腕が肩に乗り、優しく抱き寄せられ、どちらからともなく唇を重ねる。


奏介はゆっくり唇を離した後、愛おしそうな目をしながら切り出してきた。


「本当にしたら別れるって言わない?」


「言わないよ。 また未遂で終わるんじゃないの?」


「準備してあるよ。 ロードワークついでに買っておいた」


「サボり魔だ」


「英雄さんに言うなよ? 世界チャンプが遠くなるから」


「わかった。 内緒にしておく」


そう言いながら唇を重ね、奏介の腕に顔をうずめていた。



自分が女であることを


奏介のことを愛おしく思っていることを


あらためて実感し


大好きな奏介に包まれていた。



裸のまま、奏介の肩に頭をのせ、奏介の鼓動を感じていると、奏介は私の髪を撫でながら切り出してきた。


「…なぁ、愛してるの上って何だと思う?」


「愛してるはMAXじゃないの?」


「それより上があってもよくない?」


「それ以上になると、プロポーズとかそういう事になるんじゃないの?」


「そっか… じゃあさ、今度、指輪買いに行こう」


「そういう事は自分で稼いでから言いなよ」


「そういう意味じゃねぇよ。 愛してるの上」


「わかりにくいって」


そう言いながら奏介の胸に顔をうずめ、一人嬉しさを噛み締めていた。

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