第23話 イライラ
数日後、長い夏休みが終わり、新学期が始まった後も、人知れずイライラしていた。
その原因は『菊沢奏介』。
「ムカつく」だのなんだのと、人のことを嫌っていたくせに、いきなりハンデありの勝負を挑まれ、負かしたまではいいんだけど、次に出てきた言葉が「愛してる!」。
『アイツマジでふざけんな。 人のこと舐めすぎだろ…』
イライラしたまま学校に向かい、自分の席に着いた途端、早苗が「あれ? ご機嫌斜め?」と声をかけてきた。
黙ったまま外を眺めると、「イライラしたときは甘いもの食べるといいよ! 今日は部活無いし、おいしいケーキ屋さん知ってるから行かない?」と声をかけてきた。
『ケーキ屋かぁ… 父さんは日曜だけならバイトしてもいいって言ってたなぁ…』
そんな風に思いながら、ため息交じりに「自主トレしたいからいいや」と返事をすると、早苗は寂しそうな表情を浮かべていた。
放課後、部活を終え、早苗と二人で歩いていると、校門のところに他校の制服を着た女の子がうつむきながら立っていた。
『あれって菊沢の彼女じゃん』
そう思いながら早苗と歩いていると、その子は顔を上げ「すいません」と声をかけ、早苗が返事をすると、その子は「菊沢君って帰りました?」と切り出してきた。
「さぁ… 菊沢君ってD組だよね? 今日、部活あるっけ?」
早苗の言葉に「わかんない」と答えると、その子は申し訳なさそうに切り出してくる。
「あの、千尋ってどの子かわかりますか?」
『千尋』の言葉にイラっとしていると、早苗が「千尋なんて子、いないよね?」と聞いてきた。
「…いないね」と小声で言うと、春香が思い切ったように切り出した。
「もし菊沢君に会ったら、春香に連絡するよう伝えていただけますか?」
春香はそう言いながら、目に大きな涙を浮かべている。
小さくため息をついた後、早苗に「忘れ物したから先帰って」と伝え、ボクシング部の部室へ。
部室に行っても誰もおらず、ボクシング場に行っても誰もいない。
『つーか、なんで私が動かなきゃいけないの? 意味わかんなくね?』
そう思いながら踵を返すと、荷物を持った薫君が視界に飛び込んだ。
「あれ? 中田さん。 部活来てくれたの!?」
「いや、菊沢のアホたれは?」
「みんなとロードワーク行ったよ。 どうかした?」
「んじゃいいや。 じゃね」
そういった後、すぐにその場を後にし、裏口からおじいちゃんの家に向かっていた。
翌朝になっても、思い出してはイライラし、苛立ちを振り切るように走り続ける。
朝のロードワーク中にもイライラしていると、自然とスピードアップし、自宅の庭で息を整えていると、父さんが「43分!! すごいじゃないか!!」と歓喜の声を上げていた。
筋トレをした後、スポーツドリンクを飲み干し、おじいちゃんの家に向かう。
走っている途中で菊沢のことを思い出し、再度イライラし、自然とスピードアップをしていた。
『なんでこんなにイラついてんの? 意味わかんないし…』
そう思っても、苛立ちを抑えることができず、スピードを落とさないままにおじいちゃんの家に飛び込んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます