第19話 合宿

自己ベストタイムを叩き出した日から、周囲に陸上部の女の子たちが集まるように。


みんなは口々に「陸上部に絞ろうよ」と言ってきたんだけど、特に早苗は「絶対引き込むから!」と鼻息を荒くするように。


それと同時に、スマホからラインの音が頻繁に鳴り、少しづつだけど発言をするようになっていた。



試験前の部活停止期間はすべての部活動が停止され、陸上部のみんなと勉強に励む日々。


『昔っから一人だったけど、こう言うのも悪くないかもな…』


そんな風に思いながら、勉強を教わっていた。



テストの合間にある休み時間、坂本さんから手紙を渡され「ボクシング部と日程が被ってるけど、こっちを優先してもらえるか?」と切り出された。


その手紙を見ると、陸上部の合宿案内だったんだけど、ボクシング部と全く同じ日程で、場所が違うだけ。


『ラッキー』と思いながら「うぃ~っす」と気のない返事をし、次のテストに備えていた。



夕食時、父さんにそのことを話すと「そうか。 まぁ仕方ないな。 大会、絶対に勝てよ」と言われ、少しだけホッとしていた。



テスト期間を終え、試験休みに入ると同時に、陸上部の練習に専念する日々。


この頃になると、ボクシング部のことはすっかり忘れ、陸上のことばかりを考えていた。



そのため、陸上部がない日も、ボクシング場には顔を出さず、トレーニングもロードワークが中心に。


陸上部の練習は、午前中がメインだったから、午後は毎日のようにジムへ行き、凌君や智也君のミット打ちを受けたり、桜ちゃんのスパーリングの相手をしていた。



そのまま数日が経ち、陸上部の合宿へ。


広い公園の中にある施設で寝泊まりし、トレーニングは公園内にあるグランドを走るばかり。


朝から晩まで走りまくり、部員たちと仲良くなったんだけど、みんな口々に「マネージャーやめて陸上1本にしようよ」と誘われまくっていた。



合宿最終夜。


布団の上でストレッチをしていると、早苗が突然「前から思ってたんだけど… 千歳ちゃんって、菊沢君と別れたの?」と聞いてきた。


「は? 付き合ってないよ?」


「え? そうなの? 一緒に登校してたし、てっきり付き合ってるのかと思ってた」


「あれは…」と言いかけ、しつこく追いかけられたことを思い出した。


「向こうがついてきただけ。 あいつ、違う学校に彼女いるじゃん」


言い放つように言うと、早苗は「え? そうなの? 彼女いるのに他の子についてくるって最低じゃない?」と、嫌悪感むき出しの口調で言ってくる。


「それ、本人に言ったよ。 なんの反論もしなかった」


ため息交じりに言うと、みんなは口々に「最低」とか「女の敵」とか言いまくり。


すると、同じクラスの奈美が「やっぱり陸上1本にしなよ! 野獣の中にいるとか危ないって!」と言い始め、みんなは口々にスカウトする言葉を並べていた。

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