第17話 義弟の我儘と第二王子のお仕置き
僕はつい、ソファーにアマーリアさんを押し倒してしまった。
けしてあのボケ王子に煽られたからではない。そこまで理性が飛んでる訳でもない。
しかし、あのボケ王子が何か策を練り上手くいくのか判らない。もしも失敗したとなったらアマーリアさんは今夜あの第二王子に寝取られる。
それだけは絶対にダメだ!認められない!!
それならばもう今…アマーリアさんを!
僕は焦っている。そして僕の下からアメジストの綺麗な瞳が僕を映している。彼女の白い頰が赤く染まり2人の鼓動がドクドク聞こえるようだ。
まるで狼みたいだな…。と僕は自分で自分のことを思っていた。こんな風に襲わないといけないなんて!!でもアマーリアさんの初めてをシメオン王子なんかにあげない!
そんなことになれば例え僕が死罪になろうともシメオン王子を殺す。
「ラファエル…あのっ!貴方!ひょっとして私を襲おうとしてない?」
………。やはりアマーリアさんには視えるから隠せない。
僕は目を細めて彼女の好きな微笑みを浮かべながら
「……今の僕はどんな糸?」
と聞いてみる。
アマーリアさんは顔をますます赤くしながら
「ううっ、お、狼…」
と答えて
「鋼の耳や尻尾が視えるの…ラファエル…ちょっと可愛いわ」
「…そうなんだ…狼か。それなら姉様を少し食べてもいいですか?」
「えっ!?ま、待ってラファエル!!けけけ結婚まで我慢の誓いが…あの…だから!!」
アマーリアさんは慌てふためく。なんて可愛い。
「そそそ、それにラファエルは紳士だものぉ!!そんなそんな!ダメダメ…だ…」
と首を振るアマーリアさんの口を塞ぐ。後頭部に手を置いてまるで獣みたいに熱いキスをした。
すみません、アマーリアさん。男性の99%はエロいこと考えてます!!紳士装って生きてます!!好きな女性なら尚更なんです!!
そして僕の下半身がヤバイです。
「姉様…愛してるっ…いいでしょう?僕…もう…」
アマーリアさんは姉様と呼ばれてピクリと反応して
「ううう…ズルイわ…」
と真っ赤になり潤んだ瞳を向ける。編んでいた銀髪もサラリと解け髪の毛をいじりキスする。
「姉様…シメオン王子になんてあげれません!ごめんなさい!誓ったのに…もう…げ、げんか…」
とアマーリアさんのドレスのスカートに手を入れようとした時だった………。
ぐううううううううっ
とお腹の音が響いてアマーリアさんは
「ぎゃっ!いやああああ!!」
と恥ずかしさのあまり僕を思いっきり突き飛ばして僕はソファーから落ちて頭を打って正気に戻った。
「ひいいい!ラファエル!ごめんね!痛かった!?」
「………まぁ…ええと…僕…何か食べ物を厨房で貰ってきます…そう言えば僕たちパーティーで何も口にしてませんね。飲み物を少しでしたし…」
と頭を抑えつつ立ち上がる。結婚前の清らかな女性に手を出そうとして罰が当たったあああ!
「う…うん…。もうパーティーは終わる時間だから…」
お腹をさすり真っ赤なアマーリアさんの額にキスしてから
「では何か持ってくるから僕が戻るまで必ず内鍵を閉めておいてください!いいですね?どこの誰が入り込んでくるか判らないから!」
と言い含め、アマーリアさんはコクコクとうなづいて僕が部屋から出るとカチャンと内鍵を閉める音を聞き、僕は急いで厨房……の前にトイレに直行した。
厨房から食事を持ち、(毒味済み)部屋に戻ってアマーリアさんと食べることにした。サンドイッチに贅沢にローストビーフを挟み、サラダとスープと果物といつもの栄養スムージーだ。
テーブルに置いて僕が腰掛けるとアマーリアさんが
「ラファエル…さっきは突き飛ばしてごめんなさいね?コブになっていない?」
と頭を撫でる。
「大丈夫だよ。それより食べよう」
とアマーリアさんを引っ張り僕の膝に乗せた。彼女はとても軽い。
「ちょっと普通に食べれるわ?」
「僕の大切な姉様…お世話させて?」
と言うと姉様呼びに弱いアマーリアさんがちょっと照れて僕の胸に顔を預けた。
「わ、判ったわ…。も、もうラファエルったら…ずっと耳と尻尾ついてるから!!このスケベ!!」
と言われた。
はいスケベです。いつの間にかアマーリアさんの太腿撫でてた。
それからお互いに食べさせ合いっこして時々軽くキスしていると、ガチャリと扉が開いた。
「おーい、手配整ったぞー…………ってアツアツかよ!!」
とアルフォンス王子が入ってきた。ノックして欲しい。そして鍵かけとけば良かった。
アルフォンス王子に続き、お義父さまに知らない女性が入ってきた。背格好がアマーリアさんに似ている。まさか替え玉?手配ってそれ?それはその女性に失礼な気もする。いや、シメオン王子一応アルフォンス王子と似て綺麗系な顔だし女性からしたらいいのか??
でもそれじゃすぐバレるし、何の解決にもならないのではないだろうか?
しかしそこで女性が頭を下げて物凄い低音ボイスを発した。
「「ええー?こ、この人!!お、お、男!?」」
とアマーリアさんと2人驚く。どう見ても女の人にしか見えないのに!!
お義父さまはうなづいて
「男娼の暗殺者だそうだ」
とうなだれた。アマーリアさんは
「え?暗殺者って!王子を殺るの!?不味いじゃない!!」
と言うとアルフォンス王子が
「まぁ、そっちの殺るも時々はあるけど基本こいつの仕事は尻…」
「わーーーーーーーーー!!!!」
と僕はアマーリアさんの耳を塞いだ!!
このボケ王子女性の前で何てこと口にする気だ!そしてそっちの暗殺者さんもなんかねちっこい視線で僕の尻を見てくるから僕も恐怖を感じてぐったりした。
お義父さまもそうなんだろうな…。
ボケ王子はボケてるからほっとこう。
「何なの?ラファエル?その女装暗殺者が第二王子を暗殺するの?やだ!大丈夫なの?」
するとお義父さまはアマーリアさんの肩に手を置いて
「本当に暗殺はしない。安心なさい。アマーリア…。彼は…その道のプロフェッショナルだ!優れた開発者でね。穏便に事を運ぶだろう…。彼がいればこちらも第二王子の弱みを握れる」
「は?」
とアマーリアさんは意味が判らず首を傾げているが…
な!なるほどーーーー!!!
僕は意味を理解した!!
チラリとアルフォンス王子を見ると親指を立てて
「我儘な弟に仕置きが必要だって言ったろ?ふふ…流石のシメオンも尻……」
「わーーーー!わーーーーー!!!」
とまたアマーリアさんの耳を塞いだ。
だからやめろぉ!尻のことは言うなっ!!
アマーリアさんはキョトンとしていた。
そして女装暗殺者の人は礼をして
「私にお任せください。必ずやネックレスは明日の朝無事にお返し致しますし、ラファエル様の秘密が漏れるようなことはないですから!私…仕事できる男なので!!」
とこっちもビッと親指立てたよ!!
そして舌舐めずりして
「今まで私に堕ちなかった尻…」
「あーーーーーー!!!わーーー!」
「はありませんからご安心を!!必ずやシメオン王子の尻…」
「わぁーわーーー!」
「はいただきます!」
とそっちの暗殺者は誇らしげに言う。
アルフォンスボケ王子は
「うむ、任せたぞ?報酬はきっちり後で用意させよう」
「はい!アルフォンス王子!未開発の美少年で!」
そっちの報酬もそっちなんですかーーー!!
アマーリアさんは耳を塞がれたまま訳がわからないよ?という顔をしていた。
「よく判らないけどアルフォンス王子…本当に大丈夫なの?私の大切なネックレスちゃんと返ってくる?ラファエルは大丈夫?ほんとに??」
「アマーリアさん…大丈夫だよ…明日にはきっと何もかも元通り。きっとね?だから安心して眠りましょう。よく眠れる薬湯を飲んで眠ってくださいね」
と言うとお義父さまが
「すまない…ラファエル…何となく私にも薬湯が欲しいのだが…」
と言われた。
「ええ…お義父さま…判ります。もちろんですよ!後で持っていきますね」
「よろしく頼むよ。アマーリアも早く眠ってしまいなさい。ではお休み。何も心配いらないからぐっすり眠りなさい!」
と念押ししてお義父さまは王子と部屋を出る。
「何なの??本当に大丈夫なのかしら??」
大丈夫だろう…。シメオン王子も尻開発されてしまったらもうその秘密と引き換えに僕のことを無闇に喋ったりしないだろう。腐っても彼は王子と言う立場だからね。困るのはそちらも同じである。
「大丈夫だよ…。アマーリアさん。薬湯を作るね」
と僕は薬をゴリゴリと彼女とお義父さまのぶんを作る。そしてアマーリアさんをお部屋まで送り、お休みのキスをした後、侍女に任せてお義父さまに薬湯を渡しに廊下を歩いた。
そして窓から公爵邸の外の塀の裏に止まっている馬車がちらりと見えてしまった。もうシメオン王子が指定した時刻は過ぎていた。馬車が…揺れている。激しい!!怖っ!!
そして小さく
「あーーーっ!!」
とか叫び声が聞こえた。
お義父さまたちの寝室をノックして、お義父さまは薬湯を受け取り
「明日…あの裏手のとこ綺麗に掃除させような?なっ?」
と言う。
「ええ…判りました。手配しておきます。お休みなさいお義父さま…」
「ラファエルもお休み!」
と挨拶して僕も部屋に戻った。戻る途中も馬車が見えた。めちゃくちゃ揺れてた。少し離れた場所にいる護衛の人や御者さん達が気の毒だと思った。
部屋に戻り自分の薬湯を飲みさっさと忘れようと眠った。
*
清々しい朝と共に朝のスムージーやお義母さまのお薬を調合し渡しに行く。馬車は消えていた。
そして侍従のジョルジュが箱にネックレスを入れて持ってきた。
念の為鑑定人を呼び、本物と鑑定させ確かめてからアマーリアさんにネックレスを渡した。
「ああ!良かった!!本当に返ってきたわ!!上手くいったのね!?流石は暗殺者さんね!!」
と大喜びで付けて付けてとはしゃいだ。
なんて可愛くて愛しいんだろうか。
早く結婚して幸せになりたい。
アマーリアさんの首にネックレスをつけて僕はまたキスしたのだった。
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