第5話 運命は受け入れなさいと?
「どう言うことなの!?」
私は幼馴染兼婚約破棄間近のレザントル王国の第一王子アルフォンス・ウルリヒ・ハッシャーを白くて丸いテーブルを挟んで睨んだ。
机の上には異国のクッキーが並び、アールグレイの紅茶が置かれている。
アルフォンスはいつもの癖の金髪をかき揚げて無駄に綺麗な整った顔でキョトンと蒼の瞳をこちらに向けた。
「はて?何のことかな?」
すっとぼけやがった!!
「そう、そういうおつもり?貴方…ラファエルの側に付いたのね?何てことかしら!この裏切り者っ!!」
「はい、不敬罪」
といつものように軽口を叩くこの野郎!!
「ぬぬぬ!!」
紅茶ぶっかけてやろうか!?まぁ流石に本当に不敬罪になるけどね!
「ええ?俺は別にさ?ちょっと媚薬でも盛ってみたら?使うのは君次第だよって唆しただけだよ」
「何てこと言うの!この悪魔がっ!!」
と怒る。
「ええ、まさか使われちゃった?処女喪失?おめでとう」
彼はにっこりと美しく笑う。マジ紅茶ぶっかけて更に顔面パンチしてやりたい。
「私との婚約破棄にラファエルを利用しようとしてるのでしょう?手っ取り早いから!お生憎様!まだ私処女ですわ!ラファエルは素直に媚薬入りのホットミルクは渡さなかったの!…………………キスは軽くされたけど…」
とそこは小さく言うと
「え?嘘…なあんだ…まだなの?早くして?いつやるの?今でしょ!?」
とか言ってくるし!
やらんわボケえええ!
「折角焚きつけたのに案外ラファエルくんも奥手だなぁ」
「貴方に言われたくないわよ?まだエレオノーラ嬢と結ばれたわけでもないんでしょう?奥手はどちらかしら?」
と勝ち誇ったようにもはや悪い顔で笑ってやったわ。
するとだだあっとだらしなく泣いた。
「そう!!やっと俺はエレオノーラ嬢と2人きりの時、彼女の肩を抱き寄せることに成功はしたんだけど、キスしようとしたら拒まれた。何で?俺の顔汚い??」
「エロいことしようとして顔に出たんじゃありませんこと?ほほほほ!」
と笑ってやると
「ふん!君はいいよな?毎週末キスされてるんだろう?」
「あっ!やっぱり知っている!この裏切り者!」
「何をう!?男同士友情を育んでいるのだよ?あれに逆らうと俺が殺されるかもしれんよ?そしたら弟くんは牢獄行きだぞ??その前に逃げ出して君を拐ってキス以上もされるんだろうな。いいなぁ。俺なんか拐いたくとも拐えないじゃん!王子だし!助ける側だし!」
「何を物語の王子みたいに言ってるんですか!」
「最近ロマンス小説にハマってる。君も読むか?」
読まんわボケ!
「ふん、君だって俺に恋してた時あったくせにー!!ふふ、この顔は君には効くのにな、エレオノーラ嬢には何故にっ!?」
「はっ!?ちょっと最近ナルシストが増したんじゃありませんこと?この顔だけ男がっ!エレオノーラ嬢は好きな方がいたのですからそんなヒョイヒョイと攻められても嫌がるわ!」
「君がキスの一つでもしろと言ったんではないか!」
あー…そういや言ったかもー?
でもそれはそれ、これはこれでこのボケ王子がラファエルに妙なことを吹き込まなければあんな告白やキスとかされなくても普通の日常だったのにいいい!!ぎーっ!
そんで私の小指の糸もラファエルが来るたびソワソワしだしだして消えたり現れたりするようになっただなんてええ!思っきし意識しちゃってる!まぁキスとかされてしない方がどっかおかしいわ。私普通ですもの!!
ラファエルはなんで私が好きなの?普通にそこそこ顔がいいだけの私に。それはラファエルも同じだけどさ。
「ともかくさっさと婚約破棄して俺はエレオノーラ嬢と結ばれたいのだ!お前もさっさとラファエルくんと良い仲にならんかい!!」
「身勝手な!!私は義弟と一線超えたら世間的にどう思われるかお考え!?」
「そうだ!その禁断的なものこそ話題になり人々を魅了させるのだ!そしてすんなり婚約破棄できよう!いいじゃないか?それとも君は他に好きな者がいるのか?まさか私はダメだぞ?」
「誰が貴方なんかと!気の迷いもいい所でしたわ!昔の私!!とにかく!これ以上私とラファエルのことに口出しなさらないことね!そちらがその気なら私だって今度はエレオノーラ嬢に味方しようかしら?実は彼女の側で見守ってるあるお方が彼女への密やかな想いの赤い糸を最近見つけましたのよ!おーほほほほほほ!!
王子!貴方よりそちらを応援しようかしら?」
「何いいい!?誰だそいつは!?殺すからちょっと教えろ!!それに俺と婚約破棄できなくなってもいいのか?そんなことしたら!」
「くっ!!」
お互い初めて喧嘩したかもね!!グググと睨み続けていると庭園にお茶を持ったメイドとラファエルが駆けて来た!
「姉様!!」
「ら…ラファエル!」
すると王子は立ち上がり
「やあ!ラファエル!!待ってたよ!私のお茶会は終わったし、私はさっさとエレオノーラ嬢の所に行くとするよ!姉弟水要らず話すといい!………あ、メイドの君も来なさい」
「はい、アルフォンス様」
メイドは王子の分の紅茶を素早く片付けてラファエルの分を新しく入れてポットも側に置いて王子の後を追った。
あの裏切り者のボケ王子がっ!!
くーっ!という顔をしているとラファエルが今度は向かいに座った。
途端にトクンとして私の赤い糸がソワソワし出してる!!ダメ!落ち着かないと!!
ラファエルは前髪を切ってから黒い瞳がパチリと見えるから以前よりなんか気恥ずかしい気持ちになる。だってそこそこ顔いいもん。
「お、王宮の暮らしにはなれた??」
「いつもそれですね姉様…そうだ手を出して?」
と言うから何かと思って差し出すと手にキスされた!!
「ぎゃっ!何するの!?」
しまったーーー!今週のしまった!だわ!またしてもしてやられた隙の多い私!
警戒しているとラファエルは少し笑い
「ごめんごめん、冗談だから手を出してよ」
とモゾモゾとしているから何かと思いまた手を出すと薬瓶を渡された。
「あ…これ…」
「そろそろでしょ?一月経つからね。姉様の月のものが来る頃…」
「ちょ!!こんな所で月のものとか言わないでよ!大体把握し過ぎです!!」
「でも姉様の体調管理は僕がしっかり見てないといけないから」
保護者かーー!お前は保護者なのかーー!!
すると黒い瞳を細めうっとりした顔で笑う。グハっ!色気!だから色気!!
流石に顔だけ王子とは種類が違うと言え、これはこれである意味女の子が見たら悶える程度の案件よ!ラファエル!
「まぁ薬は頂いておくわ!ありがとう!」
と目線は逸らした。
「うん…ちゃんと一週間分あるしちゃんと飲んでね…それと…何を話していたの王子と」
「ええ?い、いつものエレオノーラ嬢の惚気とか婚約破棄についてね…ラファエル、あの王子に何か良からぬことを吹き込まれても従っちゃダメなんだからね?」
「良からぬことって?姉様にキスしているのは僕の意思だよ?」
「いや、いつもいつも隙あらばとしてくるけど貴方ね、私達は姉弟よ!例え血の繋がりは無くとも!貴方も私も別々の結婚相手を見つけなくてはならないの!私はお嫁に行くの!」
「それはダメ。耐えられない。そんなことになるなら姉様を殺して僕も死ぬ」
「またそれ…!」
「姉様は僕が嫌い?」
黒い瞳が捨てられた犬みたいになった。キューンと悲しげに切なげに見られると…。
「い、いや…だから…家族として好き…。異性としてはちょっと問題ありじゃない?」
するとラファエルは立ち上がり
「姉様…異性として見てください!」
と自分の胸に手を当て主張する義弟。
そんな堂々と!!恋してくださいとか言わないでえええ!
私の赤い糸が反応して困る!
「あ…姉様…顔が赤くなりましたね?可愛いです」
とか言われた!!ひいいいい!!
私は扇子を取り出して顔を隠した。
「ゲホン!とにかくもう私にキスとかしてはダメ!」
と言い放つ。
しかしその時扇子の隙間からラファエルの赤い鋼が蠢き
【それは嫌だ】
とか文字を作った後にまた蠢いて鳥籠みたいな形になって仰天した!!
自分がラファエルの籠の中の鳥になった様に見えた。
ラファエルはこちらにゆっくり歩いてくる!ぎゃっ!またキスされるかも!何か言って油断させる気だわ!私は立ち上がり庭木の影に走って隠れた。
笑いながらラファエルが迫る。ひいい!
キスされてなるものか!!
「姉様鬼ごっこですか?子供ですねえ。なら僕も本気を出して捕まえますね?」
とか言ってくるよ!!赤い鋼も鬼の形になってるよ!超怖い!!
ラファエルが反対側の木の影から話す。
「姉様は僕じゃなくよく知りもしない相手と結婚させられていいの?」
「いいのって言うか…王子と婚約破棄したらそれなりに期間を置いたら見聞もあるし遠くの貴族様に嫁ぐでしょうね?顔も見ずに結婚なんてよくある話じゃない!」
「相手がハゲたデブでいやらしいおっさんとかでも?納得するの?」
「流石にそれはやだけど家の為に我慢と言うか犠牲になればいいだけで。貴族社会は大体そんなのよ!?」
するといつの間にかラファエルはこちらに周り込み私の手首を掴みもう片方の手をドンと行く手を塞ぐ様に木に手をついた。
これがロマンス小説でたまに見る壁ドンならぬ木ドン!!
私の赤い糸がドキッて文字書いてる!そんな場合じゃない!
「そんなの嫌だ。姉様がハゲたデブでイヤらしい男のものになるなんて」
と睨みつけ赤い鋼がまた私をがんじがらめにしていく!!
動ける筈なのに蛇に睨まれたカエルみたいになった。
「ラファエル、まだハゲたデブでイヤらしい男とは限らないわ!もしかしたら小説みたいに実は美形の方かも!!」
「誰が相手でも僕じゃないとダメ…」
と迫られ結局私はラファエルにキスされた。くっそー!!結局されたーー!!
でも今回長いっ!!
お屋敷じゃないし誰もいないし?
私はラファエルの胸を押して彼はやっと離したけど数秒もたたないうちにまた口付けた!!
ひっ!?
ちょっと!何連続かましてんの!?一回で終わってよ!!
ドンと強めに叩くとまた少し離して再開が繰り返され私は次第にドキドキして堪らない。
私の赤い糸が鋼の隙間から出て彼のラファエルの小指をツンツンし始めた!!
ヤバイヤバイヤバ…。
と思ってると口を離して囁く。
「姉様…好き…愛してるよ…僕を受け入れて…お願い」
とラファエルの漆黒の瞳がキラリと光り、その中には赤くなった私しかいない。
「ラファエル……」
心底困った。ツンツンしていた私の赤い糸がゆっくりとラファエルの小指に絡まった。
うう、どうしよ…。
再び迫るラファエル。
私はついに抑えられていない方の手で軽くラファエルの服を掴んだ。
一瞬見つめ合うととうとう受け入れて口付けた。これは運命なの?赤い糸がラファエルに絡まったままということは私も彼が好きだと言うことなのだ。
義弟だからダメなのに!!
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