第12話 春
ねむっているどんぐりくんの体の中で、ある変化が起き始めました。それはどんぐりくんが眠っていて、知らないうちにおきていたのです。
いったいどれくらい眠っていたのか、どんぐりくんは目を覚ましてもわかりませんでした。周りの土はしっとりし、今までは真っ暗だった世界に、どんぐりくんの頭の上からちょっとだけ光がさしています。
「ああ、お日さまだ、久しぶりだなあ!」
そこでふとどんぐりくんが自分の体を見ると、小さくともりっぱな足が生えているのに気がつきました。
「あ、足だ。足だ、ぼくはこれをのばして、あの光を見に行くぞ!」
どんぐりくんの体の中に、熱い力がわいてきました。どんぐりくんは自分の足をのばして殻をやぶりました。いまのどんぐりくんには簡単に殻をやぶることができました。それから足の裏でしっかり土をつかむと、ぐっと体を支えてまっすぐにしました。
「これがおかあさんの言っていた根っこなんだな。真っ白いや。」
どんぐりくんはぐんぐん水を飲みました。すると不思議なことに体からますます力が湧いてきます。どんぐりくんは水を飲むごとに、ぐん、ぐん、ぐん、ぐん、と背を伸ばしていきました。
「えい、えい、やっ。」
と土のかたまりを押しのけると、空がぱあとひらけました。地面に来た時と同じような、青い青い空でしたが、まわりの様子は違います。
ぬるやかな風に、他の芽が出てかぜにそよいでいました。
「ぼくもまけないぞ!」
どんぐりくんは、せまい殻の中で、ぐっと体をよじってますます伸びたその瞬間、どんぐりくんの体からぽろりと殻が落ちました!
そうして、どんぐりくんは二つの手を大きく空に向かって広げたのです!
ぐんぐん、ぐんぐん伸びていきます。どんぐりくんは、とうとう木になることができました。小さな小さな木です。まだ小さくて風が吹けば飛んでしまいそうですが、しっかり根をはっています。
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