第11話 雪

 ある寒い日、灰色の空から白く冷たいものがふわふわと舞い落ちてきました。それはみるみるうちに地面に降り積もり、どんぐりちゃんの姿をおおいかくしていきます。するとさっきまで寒かったのに、暖かくなってきました。

「なぜだろう、これは。不思議だなあ。」

そう思っていると、白いものがつもったどんぐりちゃんの頭の上から、声が聞こえます。

「ああ、今年も雪が降ったなあ。」

「そうね。今年は少し早いかしら。」

 聞き覚えのあるめじろの夫婦でした。それを聞いたどんぐりちゃんが

「そうか、これはゆきっていうんだ。」

とつぶやくと、

「あれ、なんか今、聞いたような声がしたなあ。」

とめじろのだんなさんの声がしました。めじろの奥さんが、

「どこかで聞いた様な声だけど…あっ」

と声をあげました。

「どんぐりがうまっているんじゃないかしら。ほら、あの時の。私、よく覚えてるわ。」

「ああ、あの時の!どんぐりぼうず、そこにいるのかい?」

 どんぐりちゃんはおどろいて、

「はい、ぼくです!覚えていてくれたんですね!うれしいなあ。あの、お二人に会いたいから、この雪っていうのから、ぼくを出してもらえませんか?」

とお願いしました。

 するとめじろのだんなさんは、

「いやいやそこから出たらお前さんは死んでしまうよ。そこはあったかいんだろう?前にりすに聞いたことがあるんだよ。冬はぽかぽかの土の中で眠る、雪がつもるともっとあったかいんだ、って。」

「たしかに、ここはあったかいです。」

「そうだろう、そのままがいいよ。それにしても、ははは、ずいぶん大きくなったもんだ。一人前の話し方ができるようになったもんなあ。」

どんぐりちゃんは、-いいえ、もう、どんぐりくんですね、―はずかしくて少し赤くなりながら答えました。

「あ、ありがとうございます。」

「春にはしっかりした芽を出してね!」

「がんばるんだぞ、じゃあな!」

どんぐりくんはうれしくなって大きな声で答えました。

「はい!」

めじろたちは飛び立っていきました。

 どんぐりくんは、周りがだんだん暖かくなってきてぽかぽかしてきたので、うとうとと眠くなりました。


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