第10話 旅立ち

 あくる朝、どんぐりちゃんが目を覚ますと


―もう目の前におかあさん木はいませんでした。どんぐりちゃんのまわりは、赤や黄色や茶色の落ち葉でいっぱいです。ゆうべのうちに、気まぐれな風が吹いて、どんぐりちゃんは遠くへ来たらしいのです。

「ああ、ぼくは『旅立った』んだ!」

どんぐりちゃんはこの上なく驚きました。近くにおかあさん木は見当たりません。

 けれども、どんぐりちゃんは淋しくありませんでした。

「ぼくは、もう、ここで生きていけるんだ!おかあさん木がたくさんのことを教えてくれたから、いろいろな葉っぱや、周りの枝だけになった木を眺めて、そのかたちを楽しむことができる!どうしてだろう!不思議だなあ、こんなに…」

どんぐりちゃんは叫びながらふと気づきました。

 そう、どんぐりちゃんはわくわくしていたのです。地面から見上げる森の中は、木の上から見た様子とは全く違っていました。土の上はふかふかで暖かく、風か吹いても、周りの葉っぱが防いでくれます。

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