第9話 旅立ちの予感

 それから何日かすると、おすましどんぐりが言いました。

「ぼく、今日で君たちとお別れなんだ。あしたには、いないからね。」

どんぐりちゃんが

「どうして?」

と聞くと、おすましどんぐりは

「ぼくは、『旅立つ』からだよ。」

とだけ言いました。

 翌朝、どんぐりちゃんが目を覚ますと、確かにおすましどんぐりはいなくなっていました。あたりを、見まわすとほかにもいなくなっているどんぐりがいます。

「おかあさん、みんな、どこへ行ったの?」

どんぐりちゃんが聞くと、おかあさん木は、

「わたしのところをはなれて、一人で暮らすために出かけたのよ。」

と答えました。

「ぼくも、いつか、おかあさんのところをはなれるの?」

「そうよ、そうしなければならないのよ。」

どんぐりちゃんはとても悲しくなりました。それを見て、おかあさん木は言いました。

「はなれていくことは、少しも悪いことでも、つらいことでもないのよ。あなたは新しい冒険に出るの。わくわくするようなことが、たくさんあるはずよ。その気持ちを、大事にしなさい。」

どんぐりちゃんは、

「うん…。」

と力なく答えました。

その晩、どんぐりちゃんは夜空の星を見つめながら考えました。

<ぼくも、『旅立つ』日が来るんだ。おすましどんぐりみたいにわかるんだろうか…>

どんぐりちゃんは、静かに目を閉じました。

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