第8話 秋のおとずれ

 その翌日から、良いお天気が続き、毎日少しずつひんやりするかと思うとそれまでのように暖かい日がやってきては、また少しずつひんやりする日が続きました。やがて、暖かい日は来なくなりました。日ざしはやわらぎ日に日に弱まっていきました。

 どんぐりちゃんのまわりの木も、おかあさん木も少しずつ赤や黄色に色づいてきました。

「すぐそばの、赤い木は、もみじ。きれいね。わたしの葉っぱは黄色くなるから、うらやましいわ。」

と、おかあさん木が言ったので、どんぐりちゃんは

「ううん。おかあさんが一番だよ。」

と力を込めて言いました。

 するとそれを近くで聞いていたもみじの木は、

「まあ、うらやましいこと。お子さんにそう言ってもらえて、…それに、わたしは黄色になりたいわ。」

「あら、お互いに、ないものねだりなのね。」

おかあさん木ともみじの木は顔を見合わせて笑いました。どんぐりちゃんが

「ねえ、『ないものねだり』って、なあに?」

と聞くと、おかあさんたちはまた笑って、森の中にははらはらと落ち葉の舞う音がしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る